2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540119
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
塩谷 真弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30251028)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 数理論理学 / 公理的集合論 / 無限組合せ論 / 強制法 / 巨大基数 / 反映原理 / 飽和イデアル |
Research Abstract |
Kunenは,Chang予想と飽和イデアルのモデルを構成するための非常に画期的な手法を開発した.筆者は平成23年度に,Kunenの手法に新しいアイデアを付け加えることによりForemanの以下の2つの有名な結果に対してより簡明な証明を与えることができた:その1.Foremanの定理「2膨大基数の存在を仮定すると,3次Chang予想が成立するモデルが構成できる」の証明を大幅に簡易化し,その証明を書き上げた(論文Chang's conjecture for triples revisitedは最終的なチェックの後,投稿する予定).Foremanの原証明は40頁弱を要したが,我々の新証明ではその約半分で済むことが分かった.特に,モデルを与える順序集合の定義に原証明は8頁を費やしたが,新証明では2頁で済んでいる.その2.以前に筆者は,Easton崩壊順序を導入することにより,Laverの定理「膨大基数の存在を仮定すると,正則非可算基数が強い意味での飽和イデアルを持つモデルが構成できる」を,非常に簡単に証明することができた.より具体的には,Easton崩壊順序を2回反復することにより,求めるモデルを得ることができた.23年度には,Easton崩壊順序を用いると,Foremanの定理「膨大基数の存在を仮定すると,すべての正則非可算基数が同時に飽和イデアルを持つモデルが構成できる」の証明も大幅に簡易化できることがわかった.24年度においてさらなる応用の可能性を見極めた上で,論文の改訂に取りかかる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の実績として述べたように,Foremanの第2の定理をKunenの手法を発展させることで簡明に証明することに成功した.これは正に,当該年度の研究計画を達成したことを意味しており,Kunenの手法がいまだに大きな可能性を秘めていることを実証できた.これによって,本研究の最終目標である,Woodinの定理「膨大基数の存在を仮定すると,正則非可算基数が稠密イデアルを持つモデルが構成できる」を新たな手法によって証明し直すことにも希望が見えてきた.一方で,Woodinの定理がKunenの手法の限界を示すものである可能性が,以前に想定していたよりも大きくなった.この新しい問題意識を具体的な問題として定式化したものを24年度の計画として述べる.本研究のもう1つの最終目標は,4次以上の高次Chang予想の解決であった.23年度の成果として,3次の場合の証明の大幅な簡易化がほぼ確定したことにより,解決の糸口が得られたものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,前述のForemanの定理をしのぐ,次の予想を証明することを目指す:予想1.膨大基数の存在を仮定すると,すべての正則非可算基数が同時に強い意味での飽和イデアルを持つモデルが構成できる.そのための準備として,予想「膨大基数の存在を仮定すると,Easton崩壊順序を3回反復することにより,2つの正則非可算基数が強い意味での飽和イデアルを持つモデルが構成できる」の証明を目指す.一方,Kunenの手法によって正則非可算基数上の飽和イデアルを持つモデルが構成されだけでなく,羃集合上の飽和イデアルを持つモデルも構成できることが知られている.そこで,Kunenの手法によってWoodinの定理が証明できるならば,羃集合上の稠密イデアルを持つモデルも構成できることが予想される.そこで,次の予想を証明することでKunenの手法の限界を示すことを目指す:予想2.羃集合上には稠密イデアルは存在しない.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月に出張した分の旅費が4月に支払われるため,次年度使用額に含まれているが,計画通り実施している.これ以外の次年度の研究費の主な使用計画は以下の通りである:年2回,国内の専門家を招いて集中的にセミナーを行うための費用として20万円.国内外の研究集会で成果を発表するための旅費として40万円.また集合論の専門書の購入費として10万円.
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