2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540119
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
塩谷 真弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30251028)
|
Keywords | 数理論理学 |
Research Abstract |
Kunenは,Chang予想と飽和イデアルのモデルを構成するための画期的な手法を開発した.Kunenの手法をさらに推し進めることにより,Foremanは以下の有名な結果を証明した: 定理1 (Foreman).2膨大基数の存在を仮定すると,3次Chang予想が成立するモデルが構成できる. 定理2 (Foreman).膨大基数の存在を仮定すると,すべての正則非可算基数が同時に飽和イデアルを持つモデルが構成できる. まず筆者は,定理1の証明を大幅に簡易化し,論文Chang's conjecture for triples revisitedにまとめて投稿した.Foremanの原証明は40頁弱を要したが,我々の新証明ではその約半分で済む.特に,モデルを与える順序集合の定義に原証明は8頁を費やしたが,新証明では2頁で済む.さらに論文の簡約版A model theoretic reflection principle revisitedを数理解析研究所講究録に発表予定である. 定理2に関して筆者は以前に,Easton崩壊順序を導入することにより,Laverの定理「膨大基数の存在を仮定すると,正則非可算基数が強い意味での飽和イデアルを持つモデルが構成できる」を非常に簡単に証明することができた.より具体的には,Easton崩壊順序を2回反復することにより求めるモデルを得ることができる.Easton崩壊順序を用いると,定理2の証明も大幅に簡易化できることがわかり,しかも強い意味での飽和イデアルも得られることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の実績として述べたように,Foremanの2つの結果をKunenの手法を発展させることで簡明に証明することに成功した.これは,Kunenの手法がいまだに大きな可能性を秘めていることを示している. これによって,本研究の最終目標であった,Woodinの定理「膨大基数の存在を仮定すると, 正則非可算基数が稠密イデアルを持つモデルが構成できる」を新たな手法によって証明し直すことにも希望が見えてきた. 一方で,Woodinの定理がKunenの手法の限界を示すものである可能性も依然として存在する.この問題意識を具体的な問題として定式化したものを25年度の計画として述べる. 本研究のもう1つの最終目標は,4次以上の高次Chang予想の解決であった.3次の場合の証明の大幅な簡易化がほぼ確定したことにより,解決の糸口が得られたものと思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
Woodinの定理がKunenの手法の改良では証明できないことを示すために,以下の様な問題を考える: Kunenの手法は基数上の飽和イデアルを持つモデルを与えるだけでなく,基数の羃集合上の飽和イデアルを持つモデルも与えることが知られている.そこで,Kunenの手法によってWoodinの定理が証明できるならば,基数の羃集合上の稠密イデアルを持つモデルも構成できることが予想される.そこで,次の予想を証明することでKunenの手法の限界を示すことを目指す: 予想1.羃集合上には稠密イデアルは存在しない. Chang予想に関しては次の予想を示すことを目指す: 予想2.Easton崩壊の2回反復によるモデルではChang予想が成立しない.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月に出張した分の旅費が4月に支払われるため,次年度使用額に含まれているが,計画通り実施している.これ以外の次年度の研究費の主な使用計画は以下の通りである: 年2回,国内の専門家を招いて集中的にセミナーを行うための費用として20万円. 国内外の研究集会で成果を発表するための旅費として40万円. また集合論の専門書の購入費として10万円.
|