2012 Fiscal Year Research-status Report
正則分岐被覆構造のモジュライ・パラメーターに対する複素幾何学的研究
Project/Area Number |
23540202
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
谷口 雅彦 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (50108974)
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Keywords | 正則分岐被覆 / モジュライ空間 / コンパクト化 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の主目標のひとつであった「正則分岐被覆構造の種々の変形空間に対し幾何学的コンパクト化を構成して正則分岐被覆構造の退化や分岐を複素幾何学的に定式化する」という課題については、有理関数の力学系的モジュライ空間のコンパクト化理論はほぼ完成し、そのとりまとめを行っている。なお、その成果の速報はすでに査読付論文集 Topics in Finite or Infinite Dimensional Complex Analysisに掲載された。 その研究過程で、有理関数の力学系的モジュライ空間がリーマン球面上の配置空間と密接に関係していることが分かったが、このような配置空間の具体的コンパクト化の定式化として知られているマンフォルド・コンパクト化が非調和比関数族の関数解析的コンパクト化と一致することが証明できた。これは、奈良女子大大学院生の船橋里沙子氏との共同研究であるが、その成果は共著論文として Acta Mathematica Sinica, English Series 28 から公刊された。 さらに、等角力学系としてのSchottky群に対する変形空間の大域座標としても非調和比座標を用いることができるとの予想から、米谷氏との共同研究も継続して行った。その結果、昨年公刊した共著論文における成果の一般化と興味深い応用が得られた。さらにその過程で、非調和比座標がSchottky群の変形空間とそのコンパクト化の具体的構成においてもきわめて有効であることも明らかになった。 最後に、藤村雅代氏らとの共同研究課題である「正則分岐被覆構造に関する Goldberg の問題」に関しては、低次数の場合にほぼ完全な解決を得た。さらに主要結果が共著論文としてComm. JSSAC, 1 から公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目標のひとつであった「正則分岐被覆構造の種々の変形空間に対し幾何学的コンパクト化を構成して正則分岐被覆構造の退化や分岐を複素幾何学的に定式化する」という課題については、有理関数の力学系的モジュライ空間のコンパクト化理論の速報を査読付論文集Topics in Finite or Infinite Dimensional Complex Analysisに掲載することができた。 またリーマン球面上の配置空間に対し、その具体的コンパクト化として知られているマンフォルドコンパクト化が非調和比関数族の関数解析的コンパクト化と一致することが証明できた。その成果もすでに、奈良女子大学大学院生の船橋里沙子氏との共著論文として 国際専門誌 Acta Mathematica Sinica, English Series, 28 から公刊できた。 さらにその過程で、非調和比座標を等角力学系としてのSchottky群に対する変形空間の大域座標として導入すべく、米谷文男氏との共同研究を継続して行った結果、昨年公刊した共著論文における成果の一般化と興味深い応用を発見することができた。 最後に、藤村雅代氏および Mohaby Karima 氏との共同研究過課題である「正則分岐被覆構造に関する Goldberg の問題」に関して、低次数の場合にほぼ完全な解決を得ることができ、その成果の主要部分は共著論文として国際的専門誌 Comm. JSSAC の創刊号から公刊できた。 以上の成果獲得状況から、本研究は「当初の計画以上に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標の一つでであった有理関数の力学系的モジュライ空間のコンパクト化理論の完成と平行して、非調和比関数族による大域座標系の構成が今後の最大の研究課題であることが明らかになってきた。 前者については、すでに大筋では完成しており、次年度以降に理論の有用性や汎用性を視野に入れつつ細部を検証していくことになる。 一方後者については、有限次元の場合の配置空間の大域座標の構成とコンパクト化の大域的可視化に関する成果を踏まえつつ、次年度以降には無限次元の場合の大域座標の構成とコンパクト化の大域的可視化理論の展開を目標とする。その前提としての無限次元の配置空間の理論は前人未踏と言え、そのような基礎理論の構築も視野に入れざるを得ない。ただし米谷氏とのこれまでの共同研究により、等角力学系としてのSchottky群に対する変形空間を介した解釈を用いた無限次元モジュライ空間の可視化に対して、現在すでに一定の方向性を得ることができている。来年度以降に、その方向性を具体的に成果へと発展させることが今後の研究の目標となる。 これらの目標の達成のためには、これまでと同様に、関係する研究者と定期的に直接研究打ち合わせを行う必要がある。そこで、来年度以降は、のべ8回分40万円の国内旅費を計上する。また来年度には、たとえば正則分岐被覆構造の計量的研究の世界的権威であるアメリカのドレージン氏が来日するが、そのような機会に研究打合せを行なう予定である。そのために必要な図書購入費やコンピューターおよびその周辺機器の更新や関連ソフト等の購入もふくめ、国内外の関連する研究情報の収集のために、来年度以降も50万円を設備備品費として計上する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(3 results)