2013 Fiscal Year Research-status Report
正則分岐被覆構造のモジュライ・パラメーターに対する複素幾何学的研究
Project/Area Number |
23540202
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
谷口 雅彦 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (50108974)
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Keywords | 正則分岐被覆 / モジュライ空間 / コンパクト化 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の主目標であった「正則分岐被覆構造の種々の変形空間に対し幾何学的コンパクト化を構成し」さらに「正則分岐被覆構造の退化や分岐を複素幾何学的に定式化する」という課題については、有理関数の力学系的モジュライ空間のコンパクト化理論はほぼ完成し、その成果をとりまとめた論文を完成させた。現在、国際的専門誌に投稿中である。 次に種々の変形空間において有用な「モジュライ・パラメーター」を導入するという目標については、有理関数の力学系的モジュライ空間がリーマン球面上の配置空間と密接に関係していることが分かったが、このような配置空間の具体的コンパクト化の定式化として知られているマンフォルド・コンパクト化が非調和比関数族の関数解析的コンパクト化と一致することも発見した。そのような視点を用いて、等角力学系としてのショットキイ群に対する変形空間の大域座標としても非調和比座標を用いることができるとの予想を立てた。その実証研究の過程で、非調和比座標が有限生成メビウス群の表現空間においても有用であることを発見し、有限生成ショットキイ群の変形空間とそのコンパクト化とタイヒミュラー理論との関連を明らかにした。この成果は、米国数学会の専門誌 Conf. Geom. and Dynam.17 から Cross ratio coordinates for the deformation spaces of a marked Moebius group, 145 - 154 として公刊することができたことは特筆に値する。 さらに、藤村雅代氏らと共同で、反復関数系の変形空間に対しても同様に大域的非調和比座標の解析を開始し、いわゆるdust-likeness locus に対する大域座標としての性質の解明を行っている。これは、本課題研究終了までに解決できるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目標のひとつであった「正則分岐被覆構造の種々の変形空間に対し幾何学的コンパクト化を構成し」さらに「正則分岐被覆構造の退化や分岐を複素幾何学的に定式化する」という課題については、すでに満足すべき結果を得た。その成果をとりまとめた論文を、現在国際的専門誌に投稿中である。 次に種々の変形空間において有用な「モジュライ・パラメーター」を導入するという目標についても、リーマン球面上の配置空間に対しその具体的コンパクト化として知られているマンフォルドコンパクト化が非調和比関数族の関数解析的コンパクト化と一致することを証明し、すでにその結果を論文として公表したが、その応用として非調和比座標を等角力学系の変形空間における大域座標としてのより詳しい解析を行った。特に、米谷文男氏との共同研究では、無限生成ショットキイ群の場合に先行する共著論文における成果の一般化と興味深い応用を発見することができた。この結果は、国際集会の講義録である "Topics in Finite or Infinite Dimensional Complex Analysis" に査読付き共著論文として公表した。また、有限生成メビウス群の場合にも、奈良女子大学大学院生の山本君代氏と共同で非調和比座標の考察を行い、特にそのような座標と擬等角的タイヒミュラー空間論との関連性を明らかにした。このような結果を含む成果も、米国数学会の国際専門誌である Conf. Geom. and Dynam. から査読付き論文として公刊できた。 以上の成果獲得状況から、本研究は「当初の計画以上に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標であった有理関数の力学系的モジュライ空間のコンパクト化理論の完成と平行して、有用な「モジュライ・パラメーター」の導入と解析が今後の最大の研究課題であったが、前者についてはすでに一応の完成をみているので、最終年度では理論の応用を視野に入れつつ、さらに総括を行っていく。 一方後者については、非調和比関数族による大域座標系の構成法が、無限次元の場合には一定の成果を得たので、さらに有限次元の場合に精緻な解析を行うべく、最終年度では反復関数系の変形空間に対して非調和比関数族による大域座標としての解析を行うことを目標とする。すでに有限生成メビウス群の場合には、奈良女子大学大学院生の山本君代氏と共同研究により現在すでに一定の方向性を得ることができている。最終年度では、メビウス群と双璧をなす反復合成系に対し同様の成果へと発展させることが最終年度の研究の最終目標となる。 これらの目標の達成のためには、これまでと同様に、早稲田大学の松崎克彦氏、千葉大学の藤川英華氏、防衛大学の藤村雅代氏や、関係する研究者と定期的に直接研究打ち合わせを行う必要がある。さらに関連する内外の研究集会にも出席し、情報を収集し、成果を公開する必要もある。そこで、最終年度は、のべ10回分50万円の国内旅費を計上する。ただし必要になれば、招聘旅費や国外旅費に充てることにする。 また研究に必要な図書購入費やコンピューターおよびその周辺機器の更新や関連ソフト等の購入もふくめ、国内外の関連する研究情報の収集のために、来年度以降も50万円を設備備品費として計上する。
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Research Products
(4 results)