2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540234
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷲見 直哉 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50301411)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 解析学 / 力学系 / エルゴード理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は,軌道同士の振舞いに関する局所的な条件から,軌道の存在確率密度に関する次の大域的な性質(1)と(2)を導くことである:(1) すべての軌道の存在確率密度が決まるならば,この存在確率密度は一意的に決まる.(2) 有限時間での軌道の存在確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差は,エントロピーとポテンシャルという2つの値を用いて具体的に表示できる.特に本研究では,互いに異なる軌道の組に対して,一方の軌道の近くから他方の軌道の近くに移動する別の軌道がある,という局所的条件のみから上の性質(1)と(2)を導くことを目的とする.平成23年度は,pseudo Anosov 系やAlves-Bonatti-Viana の例など,いくつかの具体例の計算に取りかかった. (1)については,Alves-Bonatti-Viana の例に対して一意性を証明することができた.正確には,各々の軌道に対して,前方軌道が指数的な速さで近付く軌道全体の集合(安定多様体という)を考えた時に,これらの集合が初期点に依らず同じ次元をもつ多様体になるならば,上記の局所的条件のもとで存在確率密度は一意的に決まる.この結果は,研究協力者であるPesin氏を中心とした国際研究集会で発表し,その内容を論文として投稿準備中である. (2)については,pseudo Anosov 系に対して証明することができた.正確には,各々の軌道に対して,後方軌道が指数的な速さで近付く軌道全体の集合(不安定多様体という)を考えた時に,全ての安定多様体と不安定多様体の組が横断的に交差するならば,(2)で述べたような表示が与えられる.この結果をまとめた論文が掲載予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り,平成23年度での研究目標としていたpseudo Anosov 系とAlves-Bonatti-Viana の例について,本研究課題に関する結果が得られたため,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度研究予定の具体例の中で,年度内に研究を完了しきれなかったものがあったため,予算の繰り越しが生じた.しかし,全体としては研究がおおむね順調に進展しているため,上記の研究を完了させるとともに,エネルギー保存系などより一般的な力学系に対して,研究実績の概要で述べた局所的条件から大域的性質(1)と(2)を導くことを次年度の目標とする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
連携研究者・平山至大氏(九州工大),守安一峰氏(徳島大),並びに,存在確率密度の時間変化の速さに関する専門家である研究協力者・鄭容武氏(広島大)と,年に数回お互いに行き来し研究打ち合わせを行う.さらに,エネルギー保存系の専門家である研究協力者・F. Rodriguez Hertz 氏(Universidad de laRepública),Pesin 氏(The Pennsylvania State University)と研究連絡を行い,得られた結果は関連分野の研究集会で発表する.また,本研究に必要な多様体上のエルゴード理論に関する書籍等の文献,並びに,文房具等の必要な消耗品を購入する.
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Research Products
(4 results)