2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540334
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
神田 浩樹 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40321971)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中間子光生成反応 / 光子標識化装置 / 光センサー |
Research Abstract |
平成23年度にはこれまでに収集してきたπ+π-生成データの整理、鉛ガラス検出器の性能評価、光子標識化装置の性能向上のための試作機の製作とその性能評価を行った。データ整理として、2006年および2007年にNKS2を用いて収集した重陽子標的におけるπ+π-光生成データのうち、ABC効果と同様の終状態(π+ + π- + d)をもつ反応を選択し、 π+π-不変質量にABC効果と同様の構造が見られるかどうかのテストを行った。方法は、ABC効果を含まない位相空間分布およびρ中間子生成より期待されるπ+π-不変質量分布をシミュレーションから導出して、実験データより導出した分布に重ね合わせるというもので、実験データとシミュレーションのずれを調べてABC効果の有無をテストできる。このテストによってシミュレーションの精度を上げて調べてゆくための基礎的で重要な手順が得られた。鉛ガラス検出器の評価としては、鉛ガラス検出器のπ中間子および電子に対する応答を実データから抽出し、これらの粒子に対する効率を調べた。この結果が、鉛ガラス検出器を配置した際にπ中間子を誤って除去する影響の見積もりのために必要となる。光子標識化装置が平成23年3月の地震によって損傷を受けたために復旧作業を行っているが、その一環として装置の時間分解能、エネルギー分解能の向上を目指した電子検出器のアップグレードを行っている。新型の光センサー、MPPCを用いた電子検出器を製作し、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所ニュースバル放射光施設においてガンマ線ビームを利用した性能評価実験を行った。その結果、時間分解能として 80 ps という光電子増倍管に匹敵する性能が得られ、今後の光子標識化装置での利用のために十分な性能が得られることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マンパワーの問題から鉛ガラス検出器の性能評価と磁場の影響の調査に時間を要してしまった。また、地震の影響を受けた光子標識化装置を復旧することとなり、当初の予定には無かったエフォートおよび開発研究のための物品の購入が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
光子標識化装置の復旧は最優先事項であり、こちらの開発研究を進める。具体的にはMPPCを用いた電子検出器を、省スペース化と高精度化を主眼にさらに洗練したデザインとし、実際の検出器の設計を行う。このためには、MPPCの信号増幅器の設計を見直し、またこれまで光電子増倍管とMPPCを併用する構造だったものを、すべてMPPCを用いる設計に変更することになる。さらに、モンテカルロシミュレーションを用いて電子検出器の全体の設計から得られると期待される光子のエネルギー分解能を評価する手法を確立し、性能を最適化する設計を見出す。鉛ガラス検出器の性能評価については、現在、研究代表者の所属する研究室の大学院生が検出器の応答をコンピュータシミュレーションを用いて計算し、実際のデータの再現を試みている。これをさらに進めることで、鉛ガラス検出器をNKS2に配置した際の効果の評価をより精密に行うことができると期待される。これと併せて磁場の評価を進め、磁気シールドの必要性を判定し、必要な場合には磁気シールドの設計を行うことで、鉛ガラス検出器の配置を決定する。これらの作業を進めて平成24年度末に予定されている東北大学電子光センターの加速器復旧後の実験立ち上げに備える。また、これまでに収集したデータの解析はさらに進め、精度の高いモンテカルロシミュレーションを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光子標識化装置の試作器の改良を進めるために、プラスチックシンチレータおよびMPPCの購入を行い、また増幅器回路の開発、製作のための電子素子等を購入する。平成23年度に東北大学大学院理学研究科における研究者支援の研究費を得て光子ビーム診断装置用のセンサー部を購入した。これは電子光センターの光子ビーム診断に用いるもので、光子ビームラインの再調整のために不可欠のものである。次年度にはこのセンサーをビームライン上に設置し位置を調整するための架台を製作し、性能評価実験を行う。改良版の光子標識化装置試作器と光子ビーム診断装置の性能評価実験を行うために研究旅費を使用する。鉛ガラス検出器の性能評価と配置による効果の評価をコンピュータシミュレーションによって行い、その結果を元に検出器の架台の設計を行う。またNKS2の電磁石からの漏れ磁場の計算と鉛ガラス検出器の光電子増倍管への磁場の影響を調査して、必要に応じて磁気シールドの設計を行い、購入する。
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Research Products
(2 results)