2011 Fiscal Year Research-status Report
金属及び半導体上に形成する同一性酸化シリコン単分子層の構造とバンドギャップ
Project/Area Number |
23540372
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栃原 浩 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 学術研究員 (80080472)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 清義 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60229705)
白澤 徹郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80451889)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 酸化シリコン超薄膜 / 結晶性超薄膜 / エピタキシャル成長膜 / バンドギャップ / 金属/絶縁物接合 / 半導体/絶縁物接合 / 表面新物質 |
Research Abstract |
申請者らがこれまでに取り組んできた表面新物質に関する研究のうち、2つの研究対象、(1)SiC(0001)面上の結晶性酸化シリコン単分子層膜と(2)Mo(112)表面上の結晶性酸化シリコン単分子層膜において、2つの単分子層膜の構造が非常に類似していることに注目した。金属と半導体のように電子的性質が大きく異なる基板の上に構造同一的表面新物質がエピタキシャル成長すること自体が興味深いが、それらのバンドギャップの大きさに差があるかどうか、物質の接合の面から見て本研究は意義があり、さらにデバイス作製の指針を与える可能性があり応用面から見ても重要である。本研究ではこの2つの単分子層膜の詳細な原子構造と2次元バンド構造(特にバンドギャップ)について比較検討することを目的とした。 実施計画では、上記の目的にしたがって、バンドギャップの測定のために、SPring-8のBL27SU C branchでの軟X線吸収/発光分光(酸素の1s)の実験の申請書(23年度後期実施)を申請したが,不採択となった。軟X線吸収/発光分光法では、軟X線入射光のビームサイズはサブミリメーターであり、スペクトルはその領域での積分的なデータよなる。バンドギャップの測定としては、走査トンネル分光法もある。この方法では、走査トンネル顕微鏡装置でおこなわれるため、表面の原子像を確認してナノスケール領域のバンドギャップが測定できる。本年度は、走査トンネル分光法によるバンドギャップの測定を試みた。 東京大学物性研究所には、サンプルを低温に保持し、走査トンネル顕微鏡法/走査トンネル分光法をおこなえる装置があり、共同研究として上記の2つのサンプルについて実験を2回に分けておこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、2つのサンプルにおいて、軟X線吸収/発光分光法実験によりサブミリメータースケール(マクロ領域)の表面の伝導帯と価電子帯の状態密度の情報が得てそこからバンドギャップを求める予定であった。しかし上に述べたように、SPring-8での軟X線吸収/発光分光法実験の申請をしたものの不採択となった。一方、原子スケール(ナノ領域)の表面の伝導帯と価電子帯の状態密度の情報を得てそこからバンドギャップを求めることが、走査トンネル顕微鏡/走査トンネル分光法を用いてもできるので、本年度はこちらの方法を採用することにした。 東大物性研において、2つのサンプルについて2回に分けて、走査トンネル顕微鏡/走査トンネル分光法の実験を行った。2つのサンプルともに、前もって低速電子回折法によって結晶性酸化シリコン単分子膜が形成していることを確認した。それらのサンプルを持参して、超高真空装置にセットし低速電子回折法で確認後、走査トンネル顕微鏡法によって表面の原子配列を観察した。しかし、2つのサンプルともに結晶性酸化シリコン単分子膜の上にクラスター状のナノスケール物質が多数、無秩序に存在していた。ナノグラフェンか(及び)ナノ酸化シリコンかと推定される。クラスター状のナノスケール物質の下に、結晶性酸化シリコン単分子層膜が存在していたと思われるが、走査トンネル顕微鏡法では確認できなかった。走査トンネル分光法によりバンドギャップを測定してみたが、再現性が悪かった。クラスター状のナノスケール物質が最上層にあるため、それらの粒子について測定したためだと思われる。 以上のように、目的にかなう完璧なサンプルが得られていないことが判明した。したがって、本年度の目標を達するまでにいたっていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の結果、低速電子回折法により結晶性酸化シリコン単分子層膜の形成が確かめられていても、走査トンネル顕微鏡では均一な結晶膜のみの形成が保証されているわけではなく、今回のサンプルでは、未知のクラスターが表面最上層に多数存在していた。従って、今後の研究の推進方策としては、走査トンネル顕微鏡/走査トンネル分光法の超高真空装置内でサンプルのその場作製をおこなう。2つのサンプルのうち、次年度はおもに、Mo(112)表面上の結晶性酸化シリコン単分子層膜のその場作製と走査トンネル顕微鏡/走査トンネル分光法実験をおこなう。この研究のために、東京大学物性研究所の研究者に新たに分担者として参画していただく。もう一つのサンプル、SiC(0001)面上の結晶性酸化シリコン単分子層膜のその場作製とバンドギャップ測定については、福岡大学工学部の研究者に新たに分担者と協力していただく。まず福岡大学の走査トンネル顕微鏡/走査トンネル分光法装置の性能チェックをおこなう。次に、サンプルのその場作製の準備を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に繰り越した研究費が生じた主な理由は、上にも述べたようにSPring-8での実験ができなくなったためである。しかし、その繰り越した金額は、次年度に再びSPring-8での実験のために予定するものではなく、上に述べたように、2つのサンプルをその場製作し、走査トンネル顕微鏡/走査トンネル分光法で表面原子配列を観察しバンドギャップを測定するために必要な数回分の旅費に使用する予定である。具体的には、東京大学物性研究所に4回程度(各1週間程度)実験に行くためである。 次年度に予定した研究費については、次年度後半に開催される学会(横浜、広島など)などの旅費に使用する予定である。2つのサンプルをその場作製のための装置の部品の購入や自作部品の材料費・製作費などの物品費に使用の予定である。さらに今年度と同じであるが研究室の賃料、光熱代に使用する。
|
-
[Journal Article] Si 2p Core Level Shifts of the Epitaxial SiON Layer on a SiC(0001), Studied by Photoemissin Spectroscopy2011
Author(s)
T. Shirasawa, S. Tanaka, T. Muro, Y. Tamenori, Y. Harada, T. Tokushima, T. Kinoshita, S. Shin, T. Takahashi, H. Tochihara
-
Journal Title
Materials Science Forum
Volume: 675-677
Pages: 15-19
Peer Reviewed
-
-
-