2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノキャビティにおけるプラズモン増強光局所電子励起に関する研究
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23540373
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
西谷 龍介 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50167566)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | トンネル発光 / プラズモン増強 / ナノキャビティ / プラズモン / 分子発光 / 光電子励起 / STM / トンネル顕微鏡 |
Research Abstract |
トンネル顕微鏡(STM)の基板金属とSTM探針の間のトンネルギャップをナノキャビティとして用い、ここにおける貴金属表面上での有機分子と種々の電磁場(プラズモン近接場、紫外レーザー光、真空紫外光)との相互作用による、STMトンネル発光(STML)、フォトルミネッセンス(PL)、光励起電子電流(PE)(内部光電子、外部光電子)の測定を行うことを目的とした。本年度は、超高真空STM装置内で、STMLとPLの同時測定を行い、STML、PLの相対的相互作用強度の比較を行った。試料としては有機分子(ポルフィリン)を用いた。超高真空装置を用いたSTMのトンネル発光の測定光学系とフォトルミネッセンスのための励起光入射系を組み合わせたシステムにより、STM発光とPLのその場同時測定を行い、STM発光とPLの量子効率の比較を行った。その結果、トンネル電子1個に対するトンネル発光とレーザーフォトン1個に対するPLの量子効率の比は約10の10乗であることを初めて評価できた。この結果はAppllied Phys. Lettersに発表された。また実験結果の現象論的理論の評価を行い、理論的見積もりは実験で得られた量子効率と約400倍の不一致があることが示され、今後詳細な理論的評価が必要であることが示された。 また、今後プラズモン近接場による発光増強と外部入射フォトンによる誘導放出効果について、ナノキャビティに入射するフォトン数を変えて測定する実験、および内部光電子励起あるいは光電子励起が可能な光源(紫外レーザ、真空紫外光源)に変えることにより、STM発光測定と光励起電流(内部および外部光電子)測定を組み合わせた測定を行うために、パルス紫外レーザーを購入した。平成23年度は、これを、今後真空装置内でのSTM探針でのナノキャビティでの実験に用いるための光学系の設計を行い現在製作中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トンネル顕微鏡(STM)の基板金属とSTM探針の間のトンネルギャップをナノキャビティとして用い、このナノキャビティにおけるトンネル電子ー電子相互作用、光ー電子相互作用、プラズモン場ー電子相互作用を研究することを目的としている。これらの目的のうち、今年度は、超高真空装置を用いたSTMのトンネル発光の測定光学系とフォトルミネッセンスのための励起光入射系を組み合わせたシステムにより、STM発光とPLのその場同時測定に成功し、これらの量子効率の比較を行うことができた。今後行う予定である、パルス励起光源を用いた研究においても同様な測定系を対象とするので、次年度の研究を遂行する上での不可欠の基礎的成果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ナノスケール電磁場キャビティの制御従来研究実績のある探針試料間ギャップを制御した電流測定、STM探針先端のキャパシタンス測定の実績、方法(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.45, No.3B, 1962-1965 (2006))を用いて、ナノキャビティのサイズの制御と分光測定の同時測定を行い、ナノキャビティにおける光学応答およびSTMトンネル発光におけるキャビティサイズ効果を測定する。(2)STM発光と光励起電流の同時測定平成23年度に行った超高真空STM装置と光学測定の組み合わせにおいて、内部光電子励起あるいは光電子励起が可能な励起光源として紫外パルスレーザーを用いて、STM発光測定と光励起電流(内部および外部光電子)測定を組み合わせた測定を行う。トンネル電流と区別して光励起電流を測定するためには、トンネル電流を排除できるトンネルギャップ制御を行い実現する。また光励起確率の増強には、STMの1nmスケールナノキャビティサイズ効果による電場増強と基板プラズモン場増強を利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度分の経費旅費分20万円およびその他経費10万円は、参加する学会の変更のため平成24年度に使用することにした。旅費分を含む次年度使用額計約31万円は国際会議参加旅費等に使用する。次年度の研究費計画としては、本研究課題の主目的に必要な備品は平成23年度に購入したので、次年度の研究経費70万円は、実験に必要とする消耗品、(1)消耗品:真空部品、(2)消耗品:光学部品およびその他研究発表のための旅費に支出する。主要な実験は、超高真空STMと光励起測定組み合わせて、STMナノキャビティにおけるプラズモ増強光励起電子の検出を目的としており、(1)の真空装置関係は、STM装置用真空チャンバ及び試料準備真空チャンバの接続、整備、改良および、トンネル顕微鏡の真空関係の部品の交換等に必要である。また光学部品は、光学系のレンズ、偏光板、プリズム、光学ステージなどに必要である。
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