2012 Fiscal Year Research-status Report
ミュオンスピン緩和から見る鉄系・銅系超伝導体におけるスピン相関と超伝導の関連
Project/Area Number |
23540399
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
足立 匡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40333843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 洋二 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70134038)
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Keywords | 強相関電子系 / 超伝導材料・素子 / 低温物性 / 放射線・X線・粒子線 / 磁性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、鉄系超伝導体におけるスピン相関について詳しく調べ、銅系超伝導体におけるスピン相関との比較から、高い転移温度を示す超伝導体のスピン相関の共通点を明らかにすることである。これを達成するために、鉄系超伝導体と銅系超伝導体の高品質単結晶を用いて、ミュオンスピン緩和法から低温でのスピン相関の発達の有無を明らかにし、また、超伝導の電子対の対称性を決定する。本年度実施した研究とその成果は以下の通りである。 1.試料作製・評価 改良ブリッジマン法を用いて、鉄系超伝導体Fe1-y(Co,Ni,Zn)ySe0.3Te0.7(Fe系)のy=0-0.05の単結晶の育成に成功した。また、銅系超伝導体La2-xSrxCu1-yFeyO4(La系)の多結晶試料の作製に成功した。次に、Fe系の単結晶の品質の向上を目指して真空アニールを施した。これらの試料の品質をx線回折、ICP分析、電気抵抗率から評価した結果、全ての試料が物性測定に用いるのに十分に高品質であることがわかった。 2.物性測定 Fe系の単結晶を用いて、英国理研RALミュオン施設にてミュオンスピン緩和実験を行った。その結果、Co、Ni、Znをそれぞれ2%置換した試料において、ミュオンスピン緩和が劇的に速くなることを見出した。これらの結果は、超伝導の電子対の形成に磁気相関が効いていない、すなわち軌道のゆらぎが効いている可能性が高い事を示すものである。 様々なSr濃度とFe濃度を有するLa系におけるミュオンスピン緩和実験の結果、オーバードープ領域において2つの磁気転移が存在することを見出した。この結果と磁化率の測定結果を合わせて考えると、高温側の磁気転移によってRKKY相互作用を媒介とするFeのスピングラス状態が実現し、低温側の磁気転移によってCuスピンの短距離秩序が実現している可能性が高い事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった、Fe系の超伝導体の単結晶の育成に成功したこと、また、真空アニールを施すことで、高品質な試料が得られたことから、試料の作製はおおむね順調に進んでいると言える。一方、Bi系において、当初の計画にあったx>0の単結晶の育成はまだ成功していないため、次年度の課題とする。 結晶の品質の評価に関しては、x線回折、ICP分析、EPMA分析、電気抵抗率の測定を行い、高品質であることを確認したため、おおむね順調に進んでいると言える。 物性測定に関しては、Fe系において、パルスビームを用いたミュオンスピン緩和実験を理研RAL施設で実施し、不純物が誘起した磁気相関の発達を観測したことなど、重要な成果を得たことから、おおむね順調に進んでいると言える。一方、磁化率の測定をLa系に対して実施したが、Fe系とBi系に関しては次年度の早急の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続きFe系とBi系の単結晶試料の育成に取り組む。その後、アニールを施して、これらの品質を評価する。 Fe系とBi系の単結晶を用いて磁化率の測定を行い、反強磁性相とスピン密度波相の有無、磁気転移温度などを調べる。また、超伝導転移温度と超伝導の体積分率を評価する。 Bi系の単結晶を用いて直流ビームを用いた横磁場ミュオンスピン緩和実験を行い、磁場侵入長の温度依存性を詳しく調べることから、超伝導の対称性に関する知見を得る。また、Fe系の超伝導の対称性に関するさらなる知見を得るために、磁場中での比熱の測定を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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Research Products
(38 results)
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[Journal Article] Resonant Inelastic X-Ray Scattering Study of Intraband Charge Excitations in Hole-Doped High-Tc Cuprates2013
Author(s)
S. Wakimoto, K. Ishii, H. Kimura, K. Ikeuchi, M. Yoshida, T. Adachi, D. Casa, M. Fujita, Y. Fukunaga, T. Gog, Y. Koike, J. Mizuki and K. Yamada
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 87
Pages: 104511 (1-7)
Peer Reviewed
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