2011 Fiscal Year Research-status Report
強相関希土類ホウ化物の高圧下における新奇秩序相探究
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23540413
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
伊賀 文俊 茨城大学, 理学部, 教授 (60192473)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 近藤半導体 / 準周期 / 高圧力 / 磁性 |
Research Abstract |
本研究は以下の2種類の強相関電子系希土類ホウ化物に於いて,高圧下で出現すると予想される新規な秩序相を調べることを目的としている。(1)一つは近藤半導体YbB12が30GPa以上の超高圧下で期待される半導体金属転移後の秩序相の出現である。100GPaクラスの超高圧環境で,電気抵抗の温度依存性から,金属相出現の様子と,それに伴うと期待される磁気秩序相の有無の見極めと,エネルギーギャップの圧力依存性からギャップ形成に関わる混成の寄与を明らかにする。(2)2つ目は幾何学的磁気フラストレーション系TmB4で発見された準周期磁気秩序相の圧力による挙動解析である。準周期相は圧力下では安定化するとの予想から,準周期の世代数促進が期待される。高圧下での秩序相を調べることで、同様の準周期相を持つ物質探索の条件を決定することを目指す。 初年度はYbB12の高圧下抵抗測定が阪大極限センター超高圧グループとの共同研究により50GPaまでは進められ,予想通り半導体から金属に変化する様子を観測できた。簡便のため3端子法で測定を進めてきたが,絶対値の挙動をしっかり捉えるため,今後はより信頼性の高い4端子法での測定変更していく。 またTmB4の準周期相の高圧下相図を作成するため,広島大学NBARDグループと共同研究を行い、3GPaまでの高圧下磁化測定から高圧下の磁気相図を作成した。準周期相の転移点の上昇から,予想通りの準周期相の安定化傾向は効果は小さいものの確認できた。準周期相や他の磁気秩序相も含めての大きな圧力変化を捉えるため,10GPaまでの高圧磁場下電気抵抗測定を今後は試みていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
YbB12の高圧下電気抵抗測定が、2端子法、3端子法などの簡便ながら4.2Kまでの低温と室温の間の広い温度範囲で測定できた。圧力もこれまでは、固体圧力で20GPaまでというのが最大圧力であった。50GPaまでは問題なく測定ができており、100GPaにはまだ及ばないものの,今後は確実に正確な抵抗値の算出のため、4端子法でより高い圧力を目指すめどはついている。 またTmB4の高圧下磁化測定は,3GPaという磁化測定の装置としては測定できる限界値迄圧力を高めて測定した。磁気準周期相の成因とその相の安定性を調べるための測定であったが,転移点の上昇という安定化傾向は見出せた。 以上,まだ不十分ながら測定を始めることができたことで,2年目が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
YbB12は圧力以外にも、試料作成で様々な元素置換を行い、合金の磁性を調べ、パルス強磁場でゼーマン効果による半導体-金属転移を捉えることができた。圧力だけをパラメーターとするのではなく、特により高い磁場、100Tまでの強磁場実験から、エネルギーギャップ形成の情報を得るよう、研究を展開していく。 また、TmB4の準周期相の安定化、それに伴って、隣接する非周期秩序相の圧力変化も視野に入れ、なぜ準周期が出現するのかその機構を、圧力下の電気抵抗で、より高い圧力迄測定する。このため、東大物性研の共同利用施設を利用して、新たな高圧相の相図作りを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
近藤半導体YbB12の高圧下電気抵抗を更に推進する。4端子法,100GPa迄の電気抵抗測定により、近藤半導体SmB6やSmSで起きた半導体金属転移に伴う反強磁性秩序形成が,どこで起こりうるか(実験から外挿した予想値は最大でも180GPa)、見極める。そのための実験に必要な諸費用、打ち合わせなどの旅費、成果発表を計上する。また合金などの新たな試料作成を目指し,そのための原料代にも使用。TmB4では可能であれば、高圧下電気抵抗の測定の他、圧力下の中性子実験も視野に入れ、そのための旅費、試料作成の原料代等に使用する、成果は学会や論文発表に向け、そのための費用も計上する。
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Research Products
(18 results)