2012 Fiscal Year Research-status Report
強相関希土類ホウ化物の高圧下における新奇秩序相探究
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23540413
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
伊賀 文俊 茨城大学, 理学部, 教授 (60192473)
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Keywords | 強相関電子系 / 近藤半導体 / 準周期 / 高圧力 / 磁性 / ステップ磁化 |
Research Abstract |
本研究の目的は強相関電子系ホウ化物の高圧下の新規秩序もしくは新奇な状態を見いだすことにある。特に注目したのが近藤半導体YbB12と、TmB4の通常の結晶周期上に現れた準周期磁気相の高圧下応答である。(1)YbB12は最近はトポロジカル絶縁体としてのアプローチも進めているが、大阪大学極限研究センター清水研との共同研究により,徐々に付加圧力を加えて、今年度は170GPaまで加圧下の電気抵抗に成功した。ほぼエネルぎーギャップは消滅し、金属状態への転移寸前の量子臨界状態に達していると考えられる。いまの所,超伝導や磁気秩序の兆候は見られていないが、更なる加圧が可能か検討しつつ進める。(2)TmB4は前年度までは3GPaまでの高圧下磁化測定が終了し、予想通り高圧により,転移点が上昇し、準周期相も保持していることを確認した。さらに今年度は超伝導磁石とDACを組み合わせての高圧下電気抵抗測定を東大物性研上床研と進めていく予定だったが、前半は磁石故障によるトラブルと、後半はマシンタイム調整がうまくいかず、25年度に持ち越しとした。(3)TmB4と同じ結晶構造を持つTbB4は9段の磁化ステップを持ち、TmB4も方位により,3段-6段の多段磁化を示す。多段磁化はフラストレーション効果によるものと考えられ、準周期相の形成原因もそれと関連があると見られる。最近、TbB6でも5段の磁化を見つけたので、立方晶での多段磁化の原因をTbB4と比較することで、フラストレーションと結晶場効果の役割分離を明らかにしていく。これらについて、2回物理学会で発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
YbB12は高圧下での電気抵抗測定が大いに進展し、170 GPaという高圧下で非金属金属転移が生じる直前まで測定を行えた。ほぼ量子臨界点近傍に到達でき、今後磁気秩序を示すか、そのまま重い電子状態になるかなど今後の測定が期待される。しかも今回かなりの高圧が必要であることは予想外の展開であり、同種のSmB6との振る舞いの違いに大いに関心が高まった。またTmB4の準周期相の圧力下の振る舞いの探索は、超電導磁石のトラブルなどにより3GPaまでの磁化測定以上の進展はなかったが、一方ステップ磁化を示す同種の化合物TbB4に関連して、新たにTbB6で5段の多段磁化を強地場下で発見した。これの今後の展開をも最終年度に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
YbB12は直接圧力をかけて、いよいよ160GPa以上での非金属金属転移を起こすことを目指す一方、さまざまなイオン半径の非磁性イオンによる置換合金での化学圧力効果を調べていく。Ybよりイオン半径の大きいY, ほぼ同じ程度のLu, イオン半径の小さいSc3+と価数の異なるZr4+によるギャップの大きさ、磁性の変化を系統的にまとめ、国際会議や物理学会で発表、論文にまとめていく。また、パルス磁場による120Tまでのシングルターンによる強磁場磁化測定により、ゼーマンエネルギーによる2段目の相転移の兆候を確認し、新たな量子相の有無を調べる。TmB4の準周期相は圧力下の磁化測定で安定化する傾向があることが分かっているので、10GPaまでの圧力、3T]までの磁場中で、電気抵抗を測定し、この多重環境下で磁場―圧力―温度の相図を決定し、準周期の圧力応答を明らかにする。24年度に新たに見つかったTbB6の5段ステップ磁化の秩序相を、中性子やNMRなどで調べていく。TmB4やTbB4で見つかっている、ステップ磁化と準周期や超周期との関係を探っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)YbB12の高圧実験、強磁場実験の実施と打ち合わせの旅費、成果発表に用いる。またYbB12の置換合金の作成のための原料代、関連消耗品にも充てる。(2)TmB4の実験のための旅費、成果発表(3)TbB6関連の試料作成とその実験用の旅費、成果発表に充て、これらを総括する。
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Research Products
(16 results)