2012 Fiscal Year Research-status Report
価数転移・価数秩序に注目したユーロピウム化合物の新奇物性探索と機構解明
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23540415
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
光田 暁弘 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20334708)
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Keywords | 価数転移 / 価数秩序 / ユーロピウム / 高圧 / 磁場 |
Research Abstract |
Eu化合物が示す価数転移、価数秩序現象に着目して研究を行い、新たな相転移を発見した。またこの研究を更に強力に推進するために改良ブリッジマン型圧力セルを新たに導入することを目指している。 昨年度、温度-圧力相図を完成させたEuRh2Si2系については、磁場効果と原子置換効果の研究に進展があった。EuRh2Si2については価数転移の出現直後の圧力(1GPa)において7Tまでの磁場効果を調べたところ、価数転移温度直下(20K付近)で磁場誘起価数転移を観測した。更に高温から7Tで磁場中冷却をしたところ、高温相を最低温度(2K)まで安定化させることに成功し、価数転移の消失を見いだした。すなわちこの系では超伝導磁石で発生可能な比較的弱い磁場で価数転移を制御できることがわかった。また、EuRh2Si2のRhサイトをCoで一部置換した試料において温度による価数転移を見いだし、Ir置換系とともにパルス強磁場下の磁化測定を行なったところ、磁場誘起価数転移を観測することができた。 2段の価数転移を示し、同時に価数秩序構造が形成されるEuPtPについては、8GPaまでの圧力下で電気抵抗を測定し、新たな相転移を発見した。EuPtPにおいては従来、Euは(2+n/6)価(n=2,3)の平均価数を持つことが知られており、c軸方向に2価層と3価層が周期的に積層する価数秩序構造が関連していた。今回、高圧下の電気抵抗によってさらに平均価数が3価方向へシフトし、n=4,5,6に対応するものと思われる相を示唆する結果が得られた。特にn=5までは磁気的な2価層が存在して磁気秩序が観測されるが、n=6で全てが3価になるとともに磁気秩序が消失する。価数転移、価数秩序、磁気転移の競合を調べる最良の物質であることがわかってきた。 改良型ブリッジマンアンビルセルを立ち上げて、室温で8GPaまで圧力発生することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EuRh2Si2の圧力誘起価数転移について、磁場効果や原子置換効果において新しい相転移が見つかっており、価数転移に関する新しい側面を見いだすことができている。磁場効果については国際磁性会議2012(ICM2012,釜山)で口頭発表を行ない、プロシーディングにまとめた。今後、この相転移について様々な物性測定手段を用いて調べていく方向で研究が発展しつつある。 EuPtP系については今までの2段価数転移に加えて、さらに多段の相転移が高圧下で実現している結果が見いだされ、これを確認する実験を計画し早期に実施する方向で進んでいる。また、これまで試料育成が難しかったEuPdP試料の作製に成功したので、この物性研究を進めることでEuTX系の多段価数転移、価数秩序転移をより俯瞰的な視点で捉える方向に研究が進みつつある。 改良ブリッジマン高圧セルの立ち上げは、室温において8GPaまでの加圧および電気抵抗測定に成功している。このセッティングを確実なものにすれば、低温・高圧下での電気抵抗測定も十分に行える一歩手前まで来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
EuRh2Si2系に関しては、これまで主に磁化測定から価数転移の振舞を観測してきたが、電気抵抗、熱膨張測定の振舞から調べて行きたい。特に昨年度に超伝導磁石の磁場範囲内で価数転移を観測できたことから、この振舞をより詳細に調べることを目指す。 昨年度に見いだした、高圧下のEuPtPの新しい相転移の起源を探るために高圧下価数測定を行う。SPring-8 BL39XUにおいてダイヤモンドアンビルセルとヘリウム循環型冷凍機を用いて、最高圧力10GPa,最低温度4Kの範囲内でEu-L3端のX線吸収実験を行ない、Euの平均価数の温度、圧力変化を調べる。 EuPdPについてはEuPtPの高圧相と同じ価数状態が常圧下で実現している可能性がある。従って、より低い圧力下で3価への価数転移が誘起される可能性がある。このような期待をもって高圧下の実験に取り組みたい。 本研究課題で立ち上げ始めた改良型ブリッジマンアンビル高圧セルについて、高圧セルを低温に冷やして物性測定を可能にし、Eu系化合物の新たな価数転移の発見に繋げたい。 また、関連するテーマである価数揺動Yb化合物の研究も含めて総括的に考察を行ないたい。 本年度は以上の研究を遂行するために、SPring-8への出張実験費用(旅費、マシンタイム利用料)、及び、九州大学での寒剤使用料、磁化測定装置利用料金、原料金属購入料金、などに充てる。また、9月と3月に徳島大学で行なわれる日本物理学会、8月に東京大学で行なわれる強相関電子系国際会議2013(SCES2013)、12月に久留米工業大学で行なわれる日本物理学会九州支部において研究発表を予定しており、これらの出張旅費に充てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Soft-X-ray Magnetic Circular Dichroism under Pulsed High Magnetic Fields at Eu M4,5 Edges of Mixed Valence Compound EuNi2(Si0.18Ge0.82)22012
Author(s)
T. Nakamura, T. Hirono, T. Kinoshita, Y. Narumi, M. Hayashi, H. Nojiri, A. Mitsuda, H. Wada, K. Kodama, K. Kindo, and A. Kotani
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Journal Title
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 81
Pages: 103705-1-4
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Hard X-ray Photoemission Study of the Two Valence Transitions in EuPtP.2012
Author(s)
K. Mimura, S. Kawada, T. Uozumi, H. Sato, Y. Utsumi, S. Ueda, M. Sugishima, A. Mitsuda, H. Wada, K. Shimada, Y. Taguchi, K. Kobayashi, H. Namatame, and M. Taniguchi
Organizer
12th International Conference on Electron Spectroscopy and Structure (ICESS-12)
Place of Presentation
Saint-Malo, France
Year and Date
20120916-20120921
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