2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23540464
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
斎藤 弘樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60334497)
|
Keywords | ボース・アインシュタイン凝縮 / 超流動 / 量子渦 |
Research Abstract |
カルマン渦列とは、流れる流体中に障害物を置いたとき、その下流に生成される規則的な渦の連なりである。この現象は古くからよく知られており、流体の粘性が渦列の生成に重要な役割を果すことが分かっている。ところが最近、本研究代表者の研究グループによって、粘性を持たない超流動体である気体のボース・アインシュタイン凝縮体においても、カルマン渦列が生成されることが数値的に明らかにされた。しかしながら、その生成機構や詳しい生成条件は明らかになっていない。本研究では、粘性を持たない超流動体においてカルマン渦列が生成される物理的機構を解明し、量子流体における流体不安定性の理解を深めることを目的としている。 昨年度より原子気体のボース・アインシュタイン凝縮体だけでなく、近年特に注目されている半導体微小共振器中の励起子ポラリトン超流動体にも研究対象を広げている。今年度の研究では、励起子ポラリトン超流動体における量子渦の散逸構造を見出すことに成功した。散逸構造とはエネルギーや粒子が絶えず流入および流出している非平衡開放系において自発的に形成される構造である。従来、散逸構造の研究は化学溶液などの古典系が対象とされており、量子系における散逸構造はこれまで研究されていない。その理由は、一般に量子系は散逸に弱く、散逸によって量子性が失われてしまうことによる。これに対して、励起子ポラリトン超流動体は散逸が強いにも関わらず超流動性を示す系である。本研究では、励起子ポラリトン超流動体を適当な形状のレーザー光で励起すると、量子渦が自発的に安定な構造を形成することを見出した。この構造は散逸系に特有のものであり、量子散逸構造と呼べるものである。この研究によって、量子流体における流体不安定性の理解が深まり、量子カルマン渦列を含む量子渦構造に対する知見が深まった。
|
Research Products
(8 results)