2011 Fiscal Year Research-status Report
周期的応力変化がアスペリティ破壊に及ぼす影響に関する研究
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23540492
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 尚之 東京大学, 地震研究所, 准教授 (60224523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴岡 弘 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10280562)
五十嵐 俊博 東京大学, 地震研究所, 助教 (10334286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地震活動 / アスペリティ / 潮汐 / 数値シミュレーション / 摩擦特性 |
Research Abstract |
地球潮汐による応力変化が,低周波地震・微動および相似地震に対してどのような影響を与えるかについて,地球潮汐の位相選択性に基づく解析を行った.データセットは,気象庁一元化震源において低周波地震・微動と識別された地震32243個(期間:1997年10月から2012年3月31日まで,暫定震源を含む)とIgarashi (2010, GRL)の手法により相似地震と同定された10421個(期間:2002年1月1日から2012年1月31日まで)の二つを用い,日本領域に発生した地震を対象とした.地球潮汐による応力変化は,データセットの個々のメカニズムが決定されていないため,応力の対角和成分(J1成分)に対する位相選択性をシュスターの検定を用いて相関性の有無の調査を行った.解析の結果,低周波地震・微動の発生に対しては,時間的に安定した地球潮汐との相関性が得られ,かつ,位相として圧縮の位相の時に発生することがわかった.相似地震に対しては,データセット全体に対する検定においては,相関性が得られなかったが,太平洋プレートにおける相似地震に対しては,東北地方太平洋沖地震の前後でその位相選択性が変化していることがわかった.断層面にはたらく摩擦が速度・状態依存則に従うと仮定し,断層面上にアスペリティ領域を設定した上で,周期的な応力変化をあたえてアスペリティ破壊の数値シミュレーションを行った.アスペリティ破壊の位相選択性をシュスターの検定により調べた.周期的応力の振幅が大きくなるほど,また,アスペリティにはたらく有効法線応力が小さくなるほど,位相選択性は顕著になった.また,摩擦パラメターの特徴的すべり量が位相選択性に影響を及ぼすことが明らかになった.外部から与えられる周期的応力変化のため断層でのすべり速度も周期的に変化するが,アスペリティ破壊が近づくにつれ,すべり速度変化の振幅が増大することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震活動解析については,解析に用いる相似地震カタログの整備,および,これを用いた潮汐位相選択性の調査は,ほぼ研究計画通りに進んだ.計画にはなかった,2011年東北地方太平洋沖地震との関連についても調査した.3次元弾性体中の平面断層でのアスペリティ破壊の周期的応力依存性を調べるためのモデルも計画通りに構築できた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りに進める予定である.地震活動解析については,解析対象とする地震を領域や時期でわけて,より詳細な解析を行うとともに,LURR解析を行う.シミュレーション研究に関しては,様々なパラメターへの依存性を詳しく調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度におこなったカタログ整備,および,地震発生の潮汐位相選択性の調査を継続する.2011年東北地方太平洋沖地震の前後のデータについては,この地震の先行現象や,この地震の影響に関連して,注意深く調べる.プレート境界面上の小繰り返し地震の潮汐位相選択性の時空間分布を調べる.小繰り返し地震からはプレート境界面上のすべり速度の時空間変化も推定できるが,すべり速度の変化はアスペリティへのせん断荷重速度に対応することになるので,すべり速度の変化と潮汐位相選択性の変化の関係を調べる.プレート境界面上の小繰り返し地震についてLURR解析を行う.つまり,応力が増大する期間と低下する期間での規模の重み付けをした地震発生頻度の比(LURR)を調べる.シミュレーション研究では,周期的応力変化と地震の相関の,摩擦パラメタ-,応力振幅,周期依存性を調べる.研究経過は学会等で発表する.
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