2011 Fiscal Year Research-status Report
大気大循環モデルと超多点磁場観測データによる大気圏電離圏協調現象の解明
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23540513
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮原 三郎 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70037282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯元 清文 九州大学, 宙空環境研究センター, センター長 (20125686)
廣岡 俊彦 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90253393)
河野 英昭 九州大学, 宙空環境研究センター, 准教授 (60304721)
吉川 顕正 九州大学, 宙空環境研究センター, 講師 (70284479)
渡辺 正和 九州大学, 宙空環境研究センター, 准教授 (70446607)
フイシン リュウ 九州大学, 宙空環境研究センター, 准教授 (70589639)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Sq電流 / 赤道エレクトロジェット / 成層圏突然昇温 / 高速ケルビン波 |
Research Abstract |
地磁気ネットワーク観測データと気象再解析データに基づいて、電離圏電流の解析および成層圏突然昇温時の電離圏電流解析を実行した。具体的には、210度磁気子午線域、磁気赤道域の40観測点とアフリカ96度磁気子午線沿いの10観測点で得られたデータの解析から、グローバルな電離層Sq電流の太陽活動度(F10.7)、季節、月齢、地方時依存性を定量的に解明した。気象再解析データにより突然昇温の時期を特定し、その前後での電離圏電流の変動を解析した。これらの成果はIUGG,ISWI等の国際会議等で発表し、JGR等の国際誌に掲載した。2009年の成層圏突然昇温時の電離圏の強い低温化について観測データに基づいて解析し、GRLに掲載した。準3次元ダイナモモデルを南北非対称成分まで記述できる全球モデルに改造した。中性風の季節変動による電流系の変動を調べるため、Kyushu-GCMの3月、6月、9月、12月の1日1回5UTの中性風データをこの準3次元全球ダイナモモデルに与え、電離圏のグローバルな電流系をシミュレートした。3月と9月では南北半球の電流系は同程度の強さを示すが、6月と12月では夏側半球が冬側半球より強くなり、観測によって得られた傾向と定性的に一致した。電磁気的条件が同一である同一の月内でも、Sq電流系および赤道エレクトロジェット(EEJ)ともに、中性風のみの変動により大きく変動することが示された。EEJの日々変動の標準偏差は月平均値の15%程度であった。これらの結果を国内の学会で2度にわたり発表した。電離圏電流の変動の一因と考えられている高速ケルビン波が、Kyushu-GCM中でどのように現れているかを定量的に解析し、高速ケルビン波が年間を通じて10日程度のスケールで変動しながら下部熱圏に存在していることを示した。この結果をJASTPなどの国際誌に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測データを用いて、グローバルなSq電流の分布、季節変動、太陽活動依存性、地方時依存性などを解析することができ、国際誌に発表できた。観測データおよび気象再解析データを用いた成層圏突然昇温時の電離圏電流変動や温度変動に付いて解析を行い、論文を国際誌に投稿発表することができた。赤道非対称成分まで表現できる準3次元ダイナモモデルを開発できた。このモデルとKyushu-GCMの中性風を用いて電離圏電流の変動をシミュレートした。しかし、3月、6月、9月、12月の春分秋分,夏至冬至の月に付いてのみの計算に止まっている。また、モデル中の突然昇温時のEEJの変動について解析に取りかかったが、まだ詳細な解析には至っていない。Kyushu-GCM中の高速ケルビン波の振る舞いについて解析を実行し、国際誌に発表した。しかし、高速ケルビン波と電離圏電流変動の関係についての解析は、今後の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度には、成層圏突然昇温時の電離圏電流系や温度の変動を観測データに基づいて解析し、また準3次元ダイナモモデルを用いた成層圏突然昇温時の電離圏電流の研究を遂行した。しかしながら解析事例が少数であり、観測結果およびモデルによる結果の定性的ならびに定量的比較には不十分であった。Kyushu-GCMと準3次元モデルを用いた成層圏突然昇温時の電離圏電流変動の対象事例を多数計算し、詳細に解析する。観測・モデル両者で成層圏突然昇温時の解析事例を増やし定量的比較検討を行う。成層圏突然昇温がどのような機構で電離圏に影響を及ぼしているかを、両者の物理的結合を大気力学的な面で担っていると考えられる成層圏突然昇温時の中間圏の力学現象について、気象再解析データおよびKyushu-GCMデータを用いて解析する。Kyushu-GCM中の高速ケルビン波の振る舞いについての解析はこれまでに実行したが、この高速ケルビン波の変動に伴う電離圏電流の変動解析を準3次元モデルで詳細に行うには至らなかった。平成24年度はモデル計算結果を解析し、高速ケルビン波の変動に伴う電離圏電流の変動を主に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モデル計算のために、数値計算用の計算機、fortranコンパイラー、結果を保存するハードディスクを購入する。研究成果を国内外の学会で発表するための旅費や国際誌に発表するための投稿料に使用する。次年度使用額が生じた原因は以下の通りである。今年度人件費謝金を必要としなかったため、その分を研究発表旅費に使用した。しかし、代表者分担者計7名と比較的多数で研究グループを構成しているため、それぞれの研究者で旅費の残金が生じた。これを各研究者の消耗品などに使用せず、次年度の研究発表旅費、国際誌発表論文投稿料等に有効に活用することとした。
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