2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540517
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
久保田 雅久 東海大学, 海洋学部, 教授 (90147124)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 海面乱流フラックス / 潜熱 / 顕熱 / 海上気象データ / 日周期変動 / 海上風 / 海面気温 / 大気比湿 |
Research Abstract |
海面での乱流熱フラックスに関連する海上での気象パラメータ〔風速・海面水温・大気比湿・気温〕の変動特性を明らかにするのが、研究の目的である。本年度の実施計画内容は、順調に遂行された。具体的には、6種類の海上観測ブイによって観測された海上気象データの収集と解析を行った。解析期間は2004年と2007年である。調和解析の結果、海上風速の日周期変動の振幅が最大となる時刻は、季節や場所によって異なり、最大振幅の値は、0.1-0.5m/sであった。一般に沿岸域では外洋域に較べて大きな振幅を示した。気温や水温の1日周期の変動は、どの場所でも午後に最大となり、その値も0.1-0.3°Cで一様であった。大気比湿は最大となる時刻やその値に関して、時間変動が大きかった。また、それぞれのデータに対してスペクトル解析を行った。海上風速に関しては,多くの点で1日以外に、7日、14日、30日にピークが存在した。14日と30日の周期のピークは沿岸域よりも外洋域、特に太平洋と大西洋において顕著で、沿岸域での振幅が外洋域より大きかった1日周期とは対照的であった。気温データに対しては、1日以外に、4日、14日、20日、30日にピークが存在した。海面水温では30日周期の変動が太平洋や大西洋では顕著であったが、メキシコ湾ではそれほど顕著では無かった。海面大気比湿に関しては、4日周期と14日周期のピークが多くの場所で見られた。どのデータの関しても、1日周期の変動の振幅の地理的な分布は、調和解析の結果と整合的であった。また、人工衛星TMIによる観測データの収集と解析も行った。TMIは太陽非同期衛星なので観測時刻が一定では無いことから、各地点での日内変動を抽出出来るのではないかと考えていたが、観測データの密度が低いことや日周期変動が海上ではそれほど卓越していないことから、この試みについては成功しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している。ブイデータの収集はKEO, PIRATA, RAMA,NDBC,TAO,TRITONの6種類について実施し、調和解析やスペクトル解析などの統計解析を行った。少し、物足りなさを感じる点は、統計解析の結果に対する考察についてである。もう少し突っ込んだ議論が必要に感じるので、来年度にはこの点を改善することを計画している。また、最初の計画ではTMIデータの収集が予定されていたが、実際にはそれだけにとどまらず、次年度に予定されていた、収集したデータの解析も行うことが出来た。そこで、「当初の計画以上に進展している」と判断される。ただ、その結果として、TMIデータから日内変動の解析をすることは難しいことがわかったのは皮肉である。
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Strategy for Future Research Activity |
ブイデータによる解析から、ブイの存在する海域での変動特性を把握することは出来たが、ブイデータの空間的な密度は非常に低いので、全球的な変動を把握することは難しい。そこで、次年度には衛星データと再解析データを用いて、各海上気象パラメータの変動特性とその空間分布を明らかにすることを計画している。計画立案段階では、太陽非同期衛星TMIのデータならば日内変動の把握が可能では無いかと推測したが、海洋では陸上ほど安定した顕著な日周期の変動が存在しないため、TMIデータから日内変動を理解するのは難しいことが初年度の解析からわかった。そこで、今後はTMI単一のデータから日内変動について調べるだけではなく、複数の太陽同期衛星データ、あるいは高時間解像度の再解析データを用いて日内変動を推定することも試みる。そのために、多くの人工衛星データや再解析データの収集を行う必要がある。初めに、ブイデータを用いて太陽同期衛星観測時刻のデータを抽出し、そのデータを用いて日内変動の推定可能性を検討する。また、日内変動の推定可能性が確認できたら、その結果を利用して、日内変動の大きさの全球分布図を描くことによって、大気海洋相互作用の全球での実態を明らかにする。また、それと同時に海上気象パラメータ、主に大気比湿の高精度高時空間解像度のデータの作成を実施する。これにともなって海面での乱流熱フラックスの日平均値データの精度が向上することや、現在に比較してはるかに高精度高時空間解像度のデータセットの構築が期待できる
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
人工衛星データだけではなく、再解析データも解析に用いる必要があるので、再解析データの現在の状況についての情報を得ることは必要である。そこで、World Climate Research Program(WCRP)が主催する再解析データの国際カンファレンスに参加する予定である。また、本研究の内容は大気海洋相互作用に関する研究の一部であるので、国内外で開催される大気海洋相互作用に関連する研究集会には積極的に参加し情報収集、あるいは研究発表を行うことを予定している。さらには、衛星データは本研究の主要な部分なので、衛星データ、特にマイクロ波データに関連する会合には参加する必要がある。そこで、国内外についての出張旅費が必要である。また、次年度にはブイデータに加えて再解析データや衛星データの解析が重要になる。後者の2種類のデータは、ブイデータに較べてその容量が膨大なので、そのデータの保存などには大きな保存場所が必要になる。そこで、大容量のハードディスクが必要になるが、データの安全性を考慮すると、レイドが望ましいので、購入を予定している。また、生データに対しては、解析する前に準備を行う必要があるので、そのデータ整理にも多くの人的資源を必要とする。そこで、研究補助のための人件費が必要である。研究成果はできるだけ英文論文として積極的に発表することを考えているので英文校閲と論文掲載料が必要であるので計上した。
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