2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540517
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
久保田 雅久 東海大学, 海洋学部, 教授 (90147124)
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Keywords | 日内変動 |
Research Abstract |
本年度は再解析データを用いて海上気象パラメータの変動特性について解析を行った。具体的には2004年の全球Modern Era-Retrospective Analysis for Research Applications(MERRA)データを用いた。用いた物理量は海上風速、海面気温、海面大気比湿である。各海上気象パラメータに対して、1日周期と半日周期に関する調和解析を行い、1日周期と半日周期の変動の振幅と位相に関する全球分布図を作成した。気温に関しては、沿岸域や島の付近で日周期変動が大きく、その振幅は0.25-0.3°Cであった。また、各大陸の西側の海では一般的に0.2-0.3°Cの大きな振幅が見られた。一方、中緯度の海上では振幅は0.1°C以下で、有意では無い海域も広い範囲に見られた。また、位相の解析から、気温が最大となるのは、ほとんどの海域で14時から16時であったが。海域によっては20時から24時に最高気温を示すという興味深い結果が得られた。この理由については,今後、詳しく検討する必要があると考えられる。海上風に関して有意な日周期変動の存在を示したのは、30度から60度の中緯度海域で、他の海域では有意な日周期変動を示す場所はまばらであった。また、気温と異なり、海上風の大きさが最大となる時刻は一定ではなく、かなり地域依存性を示すことが明らかになった。海上大気比湿の日周期変動の振幅が大きい海域は低緯度域に集中していたが、全体的に有意な日周期変動が存在する海域は、他の2つのパラメータに較べて限られていた。また、大きな振幅の海域は南半球に集中していて、明らかな南北非対称性が見られたことも興味深い。現場観測データでであるブイデータによって、MERRAデータの検証を行ったが、大気比湿についての結果は、MERRA大気比湿データの信頼性には問題があることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、海上気象パラメータ(風速・海面水温・大気比湿・気温)データの解析によって、全球規模でのこれらのパラメータに関する変動特性、特に日内変動の特性を明らかにすることである。当初は太陽非同期衛星であるTMIデータを用いる事によって、日内変動に関する大きな情報が得られると期待して解析を行ったが、実際にはTMIの観測密度が低く、また、陸上とは異なり海上では日内変動がそれほど規則的ではないために、日内変動について有益な情報をTMIデータだけから得ることは難しいことがわかった。一方、ブイによる海上観測データの解析から、ブイの存在する場所での日内変動については、十分な情報を得ることができた。さらに、高時空間分解能の再解析データを用いて、日内変動についての解析を行った。その結果、当初の目的である海上気象パラメータの日内変動の全球での振幅や位相の分布を得ることが出来た。この点では、最低限の目標は達成できたと考えられる。また、再解析データの解析結果をブイデータの解析結果と比較することによって、その信頼性を検証した。その結果、再解析データの信頼性は、気温と風速については高いが、大気比湿についてはかなり低いことがわかった。一方、研究の目的を複数衛星データの利用によって達成することも当初の計画に含まれていたが、こちらについては、まだ最終的な段階まで至っていない。ただし、複数衛星データの複合化についての検討は既に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策については、幾つかのことが考えられる。1つは、昨年度に得られた海上気象パラメータの日内変動の全球での振幅と位相のデータにブイデータの解析結果も加味し、その変動特性に関する物理的な考察を進めることである。昨年度の解析は、日内変動だけではなく、もっと長い周期の変動についても解析を行っているので、それについての考察も余裕があれば実施することが考慮される。また、日内変動に関連する、物理的な意味が明確な現象として、海陸風があげられる。昨年度も海陸風についての解析を進めたが、過去の研究と一致している点だけではなく、矛盾するような結果も得られた。海陸風に関する研究は今までにも活発に行われているが、そのほとんどは沿岸域での海陸風に関する研究であり、全球規模での海陸風の研究は非常に少ない。その理由は、地球規模で海陸風の研究を実施できるような高時空間分解能のデータが存在しなかったためであり、この研究によって、全球規模での海陸風に関する情報が初めて得られると言っても良いかもしれない。そこで、最終年度は海陸風の研究に集中することが考えられる。2つ目には、昨年度も再解析プロダクトの1種であるMERRA データを利用したが、MERRAデータのような、最近急速に発展してきた種々の再解析プロダクトに関して、日内変動の再現性を検証することである。最後は、複数衛星データを複合した結果を利用した日内変動の解析である。これは使用するデータ量が膨大で、かなりの時間とエネルギーを必要とするが、日内変動を十分に再現する衛星データセットを将来的に構築することを想定すると、いつかはやらなくていけない研究である。以上の3つの研究内容のすべてを本年度に実施するのは難しいと思われるが、それぞれの研究テーマを可能な限り実行することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は最終年度なので、研究成果を積極的に発表することを予定している。国内に限らず、国外でも積極的に発表を行う予定なので、そのための旅費は十分に用意する必要がある。また、報告書の作成も最終年度の重要な部分なので、その印刷費などをその他の項目として確保する必要がある。一方、従来通り、研究の遂行に必要な部分として、研究データの保存などにはHDが必要なので、消耗品として計上するとともに、膨大なデータの解析には、データ解析の補助が必要なので、そのための謝金も計上する。
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