2012 Fiscal Year Research-status Report
パンサラサ高緯度海域における中生代海洋プレート層序の構築とシリカオーシャンの解明
Project/Area Number |
23540528
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
相田 吉昭 宇都宮大学, 農学部, 教授 (90167768)
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Keywords | ニュージーランド / 三畳紀中期 / 層状チャート / 海綿骨針 / 放散虫 / モツタプ島 / 高精細SEM / 堆積環境 |
Research Abstract |
ニュージーランドのオークランド北東に位置するモツタプ島のアドミニストレーションベイでは,黒色チャート,黒色珪質頁岩,赤色層状チャートから赤紫色・緑色頁岩,炭酸マンガンノジュールを含む紫色頁岩,緑色・紫色頁岩に至る遠洋性ー半遠洋性岩の海洋プレート層序が露出している.初年度の調査により,ほぼ連続的な層序をもつ三畳紀前期~中期の層状チャート層について,全層準からチャート試料を採取している.本研究の2年目は,黒色チャート,黒色珪質頁岩および赤色層状チャートについて,岩石薄片やHF処理したスラブの高精細SEM観察により堆積構造および堆積相の解析を行い,チャートの堆積過程を明らかにした. これまで層状チャートは,一般に数cm厚の珪質生物遺骸の密集層と珪質粘土質層の繰り返しからなる有律互層で構成されており,そのチャート単層と互層の成因に関してはいくつかの仮説が提唱されてきた.モツタプ島の三畳紀中期の赤色チャート層の堆積岩石学的解析から,チャート単層の堆積過程が明らかになってきた. 1)HFでエッチング処理したチャートをSEMで堆積断面を連続して観察することで,その数㎝オーダーのチャート単層の中にも,単一の堆積過程で形成されたことでは説明しきれない,様々な堆積過程の履歴を示す堆積構造が複数存在していることが判明した.2)この堆積構造を明確に分類するため,堆積相区分を行い珪質生物遺骸の密集層をG1相,珪質化石含有量10~30%の高珪質粘土層をG2相,珪質化石含有量1~10%の低珪質粘土層をE-2相,シルトサイズの基質からなる部分をD相と区分した.これにより,チャートの堆積相の重なりからいくつかの異なる堆積プロセスを考察できる様になった.3)モツタプ島の三畳紀中期の赤色チャート層序断面は,基本的に定常的なG2相とE-2相の組み合わせからなり,エピソード的にG1相を挟むことで特徴づけられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.モツタプ島の連続した三畳紀中期(Anisian)の赤色チャート層から採取した15層準のチャート単層について,岩石スラブと岩石薄片を作成して,岩相および堆積学的記載を詳細に行なうことができた. 2.チャート単層の堆積断面について,高精細SEM観察を行いチャートを構成する生物源構成要素や様々な堆積構造の有無により堆積相として,珪質生物遺骸の密集層のG1相,珪質化石含有量10~30%の高珪質粘土層をG2相,珪質化石含有量1~10%の低珪質粘土層をE-2相,シルトサイズの基質からなる部分をD相として識別する事ができた. 3.G1相の生物遺骸は,大量の海綿骨針を主体として大型球状の放散虫殻を含み,上下の定常的なチャートG2相に比べて,その骨針の保存状態が非常に良好であることが特徴的である.特に保存状態の良いG1相は,海底表面の海綿や海中のプランクトンである放散虫が大量に発生して,その遺骸が短期間に大量に堆積することで形成される.一方,G2相は長い時間をかけ定常的に粘土や放散虫殻が少しずつ堆積するため,生物遺骸は溶解作用を受けてしまい,保存状態が悪くなったと考えられる.これらの知見は,同時代の日本のチャートではほとんど観察されていない結果である.
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Strategy for Future Research Activity |
1. モツタプ島の連続したチャート層の上半について,岩石スラブと岩石薄片を作成して岩相,色測定,堆積学的記載,高精細SEM観察を行い,チャートを構成する生物源構成要素G2相と定常的なチャートG2相を識別して堆積相の変遷過程を解明して,チャート層全体の堆積環境の変遷を明らかにする. 2. 三畳紀中期のSpathianからAnisian期について,コノドント化石層序に基づいて年代決定し,放散虫化石層序を構築する. 3. 三畳紀中期(late Anisian)の炭酸マンガンノジュールから産出する放散虫群集について,高精細SEMによる全種解析を行い電子画像データベースを作成する.それに基づいて高緯度海域にのみ産出する固有種と,テーチス海と共通するコスモポリタン種に区分する.このデータに基づいて中生代海洋環境における放散虫の緯度的多様性の変化を明らかにしていきたい. 4. モツタプ島の連続したチャート層下部に含まれる黒色葉理チャートについて,年代はコノドント化石によりSpathianを示す事が判明している.岩石スラブおよび岩石薄片を作成して高精細SEM観察と微生物の微化石の有無を解析して,その堆積環境を解明し,グローバルな海洋貧酸素事件(OAE)と関連するのかどうか明らかにする. 5. これらの研究成果を基に論文作成を推進していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.初年度と2年度に得られた研究成果を基に,最終年度に海外地質調査14日間程度を予定しており,地質調査と試料採取を行なう予定であり,レンタカー借り上げと岩石試料の運送代に使用する予定である. 2.チャートや珪質岩を切断する岩石カッターは消耗品であり,複数枚購入する予定である. 3.岩石試料の高精細SEM観察に必要なドータイトなどの消耗品を購入する. 4.研究成果は順次,国内の日本古生物学会や日本地質学会,また国際学会で公表する予定である.
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Sulphur isotope profiles in the pelagic Panthalassic deep sea during the Permian-Triassic transition2013
Author(s)
Takahashi, S., Kaiho, K., Hori, R. S., Gorjan, P., Watanabe, T., Yamakita, S., Aita, Y., Takemura, A., Spörli, K.B., Kakegawa, T., and Oba, M
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Journal Title
Global and Planetary Change
Volume: 105
Pages: 68-78
DOI
Peer Reviewed
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