2011 Fiscal Year Research-status Report
せき止め湖堆積物から探る有史以前の地震・豪雨災害と将来予測
Project/Area Number |
23540531
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小嶋 智 岐阜大学, 工学部, 教授 (20170243)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地すべり / せき止め湖 / 山体重力変形地形 / 地震 / 豪雨 / 紀伊半島 |
Research Abstract |
平成23年度には,三重県多気郡大台町池ノ谷,薗川流域および同県熊野市ツエノ峰地域にあるせき止め湖埋積堆積物をボーリング掘削する予定であったが, 9月上旬の台風12号および15号災害により,同上地域へのアクセス林道が大きな被害を受け掘削が不可能となった.このため,次のような研究を行った. 産業技術総合研究所により池ノ谷流域で掘削されたボーリング試料を用い,走査型X線分析顕微鏡による元素マッピングを行った.その結果,肉眼的に確認できる明暗および粗粒・細粒の縞に対応して,Al, Si, S, K, Caなどの元素が増減すること,その変動は構成粒子である砕屑粒子,有機物片,珪藻化石,粘土鉱物などの増減に支配されていることが明らかとなった. 台風被害のなかった岐阜・福井県境の冠山地域において,地すべりの前兆現象と考えられる山体重力変形地形の形成過程の検討を行った.二重稜線の間の凹地を埋める堆積物をハンドオーガーボーリングにより掘削した結果,(1)凹地埋積堆積物は地すべりの移動方向に向かい薄くなる非対称な層厚分布をもつこと,(2)下部に鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah, 7.3 ka)を挟むこと,(3)深度82 cm, 138 cm, 195 cmからは木片が得られ,そのAMS 14C年代は,それぞれ1210+-25 BP (1234-1060 cal BP), 5320+-30 BP (6191-5996 cal BP), 6990+-30 BP (7931-7731 cal BP)であることが明らかとなった.これらの年代値から,凹地埋積堆積物の平均堆積速度は約0.25 mm/年となる. 平成24年3月には,ツエノ峰地域で二重山稜の間の凹地を埋める堆積物のボーリング掘削を行った.平成24年度にはこの試料の解析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年9月上旬に紀伊半島を襲った台風12号の災害により,三重県・奈良県・和歌山県南部の山間地域の多くの林道が破壊され,本研究によりボーリング掘削を予定していた地域でも,ボーリング資材の搬入が困難となった.このためボーリング掘削が平成24年3月まで実施することができなくなり,本研究はやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で対象としている紀伊半島では,平成23年9月の豪雨災害により多くの地すべりが発生し天然ダムが形成された.これらの天然ダムの多くは決壊することなく湛水し,堆積物をためている.こういった現象がどの程度の頻度で発生しているのかを,過去に遡って検討する重要性が改めて認識されたので,今後も紀伊半島を中心にせき止め湖堆積物の掘削とその形成年代の推定を行っていく.その際,アクセスがよければ大規模なボーリング資材を搬入して掘削を行うが,それが難しければハンドオーガーボーリングなどの方策を検討する. せき止め湖堆積物の研究を推進する中で,天然ダムを形成した地すべり移動体の上部には二重山稜,山向き小崖などの山体重力変形地形が発達することがわかってきた.これらの変形地形の発達過程はほとんどわかっていないが,凹地埋積堆積物を検討することにより,発達史を明らかにすることができる場合がある.今後はこのような堆積物もターゲットとして研究を進めていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には,紀伊半島西部におけるボーリング掘削費用,これまでに掘削した堆積物中に挟まれる木片等のAMS-14C年代測定費用,紀伊半島を中心とした中部地方の地質・地形調査旅費,堆積物の室内解析に必要な消耗品費,研究成果発表旅費等に研究費を使用する予定である.
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