2013 Fiscal Year Annual Research Report
種分化過程における浮遊珪藻形態変遷の高時間分解能復元
Project/Area Number |
23540543
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山崎 智恵子 (嶋田 智恵子) 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60597186)
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Keywords | 珪藻化石 / 形態 / 第四紀 / 北太平洋 / 海底コア |
Research Abstract |
海生浮遊珪藻のNeodenticula属は,出現順にN. kamtschatica(絶滅), N. koizumii(絶滅),N. seminae(現生)の3種から構成される.そして,北太平洋域における有用な化石層序基準面を提供するが,この海域が苛烈な環境変動を経て現在のような気候システムに移行し始める時期(265万年前)に,この属の種構成が遷移することは興味深い. 本研究では,北太平洋東西海域で得られた海底コア試料を用い,Neodenticula形態の時間分布を精度良く明らかにすることを目的とした.なお化石2種に関し,Akiba and Yanagisawa (1986)は北海道東部の下部更新統の同属群集中に,特異な殻形態をもつN. koizumiiとN. seminaeの中間型「特異型」を報告していた.この「特異型」はカムチャッカ半島東方沖と三陸沖において,ある時期(約250万年前)に短期間に比較的高頻度で産出するばかりでなく,Neodenticula3種全ての定義に該当しない.また,この「特異型」は,同時期の亜寒帯太平洋東部アラスカ湾では殆ど出現しなかった. 最終年では,Akiba and Yanagisawa (1986)で使用された懸濁液試料を提供して頂いたほか,国立科学博物館微化石リファレンスセンターが収蔵する北西太平洋の永久スライド標本をお借りし,この層準の「特異型」の著しい多産を確認したうえ個体を数多く撮影し,記録することができた. 北西太平洋を中心としたこの珪藻の形態事変は,増殖速度と栄養塩環境のバランスが短期的に崩壊した可能性を示唆する.この時期の北西太平洋の化学環境を復元すべく,有孔虫化石の酸素同位体比層序を構築する予定だが,有孔虫化石の拾い出しが遅れている.現在も引き続き,形態解析と「特異型」形態出現の解釈を行うとともに,論文執筆を鋭意進めている.
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