2011 Fiscal Year Research-status Report
沈み込んだ地殻物質の高温高圧弾性特性と下部マントルの化学不均質の解明
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23540560
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 第一原理電子状態計算 / 沈み込んだ地殻物質 / 高圧相転移 / 地震波速度 / マントルの不均質性 / マントルの進化 |
Research Abstract |
既設の計算設備及び今年度導入した高性能ワークステーションと独自に開発してきた地球惑星物質の第一原理計算技術を用い、主要地殻物質であるNaMg2Al5SiO12及びKAlSi3O8の静的条件(T=0K)での高圧相平衡を決定した。その結果、NaMg2Al5SiO12では39.6GPaで六方晶NAL構造からカルシウムフェライト(CF)型構造への相転移が、KAlSi3O8では20GPaでKホーランダイト(K-Hol-I)型構造からKホーランダイトII(K-Hol-II)型構造への相転移がそれぞれ生じることがわかった。次に静的条件における弾性定数及びその圧力依存性を決定し、NaMg2Al5SiO12では相転移に伴う密度増加、地震波速度変化ともにわずかであることをはじめて見いだした。一方KAlSi3O8ではK-Hol-IからK-Hol-IIへの相転移が2次転移の挙動を示し、相転移に伴い強い弾性不安定化を伴うことを確認した。さらに我々のこれまでの研究から+20%程度に達する大きな地震波速度増加を伴うことが示されているNaAlSi2O6のヒスイ輝石からCF型NaAlSiO4+SiO2への相転移について、フォノン自由エネルギー計算に基づいて有限温度相境界の決定を行った。その結果、1800Kでは23.4GPaで相転移が生じ、その相境界は+2.8MPa/Kの勾配を持つことがわかった。これらの成果から主要地殻物質の多くがマントル遷移層下部から下部マントル上部の温度圧力条件において高圧相転移を生じること、そのいくつかは地震学的にも検知され得るような地震波速度の不連続変化を伴うことがわかってきた。今後NaMg2Al5SiO12及びKAlSi3O8においても温度効果等をより詳細に決定することにより、マントル深部に沈み込んだ地殻物質の行方とマントルの不均質構造の起源解明に迫る計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に平成23年度の研究計画として記載していた内容を、ほぼすべて計画通り実施することができた。それだけでなく平成24年度に計画していた研究についても前倒しして着手している。さらに本研究により得られた結果をまとめて国際的な雑誌に投稿し、すでに論文7編を出版することができた。その他本研究に関連するもので現在投稿中の論文が1編、図書が2編、執筆中の論文が2編ある。また学会発表に関する特筆事項として、アジアオセアニア地球科学会年会(AOGS 2011)をはじめとして、合計6回国際学会において招待講演を行った。これらの成果を踏まえると、今のところ本研究は当初の計画以上に進展していると判断して差し支えないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、平成23年度に得られた結果を基にして主要地殻構成物質の有限温度下における高圧相平衡及び弾性波速度の計算・解析を行う。愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターや他大学の実験グループとも活発に議論を行い、より現実的な化学組成、鉱物量比、元素分配についても検討を重ねて、数値モデルの妥当性・信頼性の向上・改善を目指す。またこれらの作業を通じて未知相転移の出現の可能性の検討、新奇高圧物質の探索を行う。さらに、本研究で得られた知見と我々のこれまでの主要下部マントル物質に対する研究成果とを総括して、下部マントルの新たな鉱物学モデルを構築し、地球深部の不均質構造と熱化学状態の詳細及びそれらの形成進化過程について新たな制約を与える。それに基づき、表層-マントルを包括した系における地殻物質の循環とダイナミクス、さらにその地球史的な意義について地球システムの立場から考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(設備備品)本研究課題で計画している大規模数値処理に対応するために、既設の並列計算機システム(GRC-PCS)に計算ノードを追加導入する。(消耗品)第一原理シミュレーションのような大規模数値計算は、必然的に膨大なデータの生成や部材の劣化等を伴う。これに対応するためにハードディスクやメモリなどを購入する。その他、論文投稿料や別刷り購入代として使用する。(旅費)関連研究機関との研究打ち合わせや国内外の会議・学会発表のための出張旅費(アジアオセアニア地球科学会、米国地球物理学連合及び日本高圧力学会の年会等)として使用する。
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Research Products
(34 results)
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[Presentation] 第2大陸2011
Author(s)
河合研志, 山本伸次, 土屋卓久, 丸山茂徳
Organizer
日本地球惑星科学連合
Place of Presentation
幕張
Year and Date
2011-05-23
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