2013 Fiscal Year Annual Research Report
沈み込んだ地殻物質の高温高圧弾性特性と下部マントルの化学不均質の解明
Project/Area Number |
23540560
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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Keywords | 第一原理電子状態計算 / 沈み込んだ地殻物質 / 高圧相転移 / 地震波速度 / マントルの不均質性 / マントルの進化 |
Research Abstract |
主要地殻構成鉱物の地球深部圧力条件での密度及び弾性特性を第一原理計算法によりに決定し、マントル岩石の物性との比較を通して、地殻物質の沈み込みの可能性、沈み込んだ場合の地球内部での分布、マントルダイナミクスへの影響について考察した。 まず下部マントルの標準岩石モデルを特定するために、上部マントル物質と考えられているパイロライトの密度・弾性特性を計算し、地震学的観測モデル(PREM)と比較した。その結果、パイロライト組成がPREMを大変よく再現することを見出した。次に地殻岩石として海洋地殻(中央海嶺玄武岩)組成、大陸上部地殻(花崗岩)組成、太古代花崗岩(TTG)組成や月地殻の主成分である斜長岩組成を採用し、密度をパイロライトと比較することで、これらが沈み込んだ場合の重力的な安定性について調べた。 結果をまとめると、(1)玄武岩組成は下部マントル全域でパイロライトよりも高密度であるが、密度差は下部マントル上部から中部では約1%程度、深部では1%以下となった。(2)花崗岩及びTTGは、SiO2高圧相であるスティショバイトが安定化する約10万気圧程度まで沈み込めば、遷移層条件ではパイロライトよりも高密度、また下部マントル条件でもパイロライトとほぼ同密度となる。(3)斜長岩組成は、下部マントル条件でパイロライトとほぼ同程度の密度となる。いずれの場合も、下部マントル条件では周囲との密度差が核マントル境界に長時間停滞し蓄積されるのに必要とされる3%の密度差よりも小さい。 以上の結果は、典型的な地殻物質はいずれも力学的にはマントル最下部まで到達し、下部マントルの化学的不均質の成因になり得るが、核からの加熱や内部発熱の時間スケールを考慮すると、グローバルなマントル対流に巻き込まれ安定成層は形成しづらいことを示している。このことから、地殻形成がマントルの分化プロセスであるのに対し、その沈み込みは基本的には同化プロセスであると言える。
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Research Products
(25 results)
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[Book] 地球の物理学辞典2013
Author(s)
本田了, 歌田久司, 大久保修平, 栗田敬, 土屋卓久, 中井俊一, 平賀岳彦, 宮武隆, 吉澤和範
Total Pages
536
Publisher
朝倉書店