2011 Fiscal Year Research-status Report
有機分子性結晶を用いたクリーンエネルギー気体の高密度貯蔵に関する研究
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23550052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津江 広人 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (30271711)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 有機結晶 / 結晶構造 / 気体吸蔵 |
Research Abstract |
本研究では,基幹エネルギーとしてだけでなく,次世代のエネルギー源として注目されるメタンを「軽い」有機分子性結晶で効率的に捕捉・貯蔵することを目的として,これを実現するための材料設計指針を探求する.交付初年度である平成23年度においては,芳香環を窒素原子で連結したアザカリックス[4]アレーンを合成し,その気体吸蔵特性について実験と理論の両面から評価を行った. (1) 合成と結晶構造解析: 合成は,Buchwald-Hartwig芳香族アミノ化反応を鍵反応として行った.次いで,単結晶を調製し,X線結晶構造解析を行った結果,同分子の立体配座は1,3-alternateコンホメーションであり,その結晶構造は分子間CH/πおよびNH/π相互作用によって密に充填されたものであることを明らかにした. (2) 気体吸蔵特性: (1)で調製した単結晶を用いて,五種類のガス(窒素,酸素,アルゴン,二酸化炭素,およびメタン)に対する気体吸蔵挙動の評価を行った.その結果,この単結晶は,密に充填された結晶構造であるにもかかわらず,二酸化炭素を高選択的に吸蔵することが分かった.また,二酸化炭素が吸蔵された状態を,X線結晶構造解析により原子レベルで明らかにした. (3) 理論計算: 北浦-諸熊エネルギー分割法,非経験的分子軌道法,および密度汎関数法を用いて,二酸化炭素の吸蔵状態を解析した結果,(2)で観測された二酸化炭素の高選択的な吸蔵には,分子間CH/O相互作用と分子ふるい効果が重要な役割を担っていることが明らかとなった. なお,以上の成果をまとめた論文(CrystEngComm, 2012, 14, 1041-1026)は,同学術誌においてHot Articleに選定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において評価した分子系ではメタンの吸蔵は見られなかったが,その理由が,単結晶X線結晶構造解析と理論計算から,分子ふるい効果にあることを明らかにした.現在,環サイズを拡張した類縁体の気体吸蔵特性を解明するため,これらの合成を進めているところであり,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
ケンブリッジ結晶構造データベースを活用して,気体分子を捕捉しうる有機分子性結晶を探索し,その気体吸蔵特性の評価を通して,メタンを効率的に捕捉・貯蔵するための材料設計指針を探求する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行に必要な薬品のほか,気体吸蔵特性を効率的に評価できるようにするため,マニホールドを物品費で購入する.また,研究成果の発表のため,学会旅費および論文別刷費を使用する.
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