2011 Fiscal Year Research-status Report
可逆的に分解―再構築が可能な分子ケージの創出とその機能に関する研究
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23550078
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
砂月 幸成 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助教 (80362987)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 分子ケージ / キラル認識 / 分子センサー |
Research Abstract |
pH調節により可逆的に分解・再構築出来る金属錯体をベースにしたキラルな分子ケージ錯体の創出を目指している。交付申請書に記したNi(II) 14核錯体の溶液の電子スペクトルのpH変化を測定したところ、酸性条件下で分子ケージはNi(II)イオンと配位子とにばらばらに分解してしまいpHを元に戻してもケージの再構築は出来ないことが推測された。そこで以前に水素結合自己組織化に伴う自然分晶の研究で用いたH3L = tris[2-(((imidazol-4-yl)methylidene)amino)ethyl]amineのCo(III)錯体を用いて同様のケージ錯体Co(III) 8個とNi(II) 6個を含む14核錯体を合成した。しかし、残念ながらこの錯体は溶解度が低く、さらにはCo(III)部分がディスオーダーしてキラルではなくなっていた。反磁性で置換不活性なCo(III)錯体を用いた分子ケージの合成は、ケージ内の分子をNMRで確認できるため、本研究課題の達成に寄与すると考えており、さらに合成の検討を重ねているところである。 元のNi(II) 14核錯体に分子を取り込む能力があるかどうかを検討するために、ヘキサメチレンテトラミン(hmt)存在下でケージの合成を行ったところ、ケージ内に1分子のhmtを取り込んだ錯体を合成出来た。X線結晶解析の精度があまり良くないため、高精度のデータを得るとともにマススペクトルなどを用いたさらなる確認に取り組んでいるところである。 スピンクロスオーバー挙動を利用した小分子センサーの開発を目指した、鉄錯体の合成は、アルコキソ架橋のクラスターが生成するため、うまくいかないことが明らかになったが、この系に関しては新たな分子設計を行い、実験に取り掛かろうとしているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験的には必ずしも当初の予定通りに進んでいるわけではないが、これは織り込み済みであり、新たな方策も立てながら進めているので問題ない。しかし、研究成果の学術雑誌への投稿がやや遅れている。現在、研究の推進とともに、投稿論文の作成作業にも取り掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ni(II) 14核錯体が小分子を取り込むことができることが明らかになってきたので、次に比較的分子量の小さなキラル分子の取り込み挙動の検討を行う。この研究を通じてキラルな分子ケージを用いたキラル認識能の発現を目指す。 また、反磁性で置換不活性なCo(III)を用いたケージ錯体の合成は、分子ケージの可逆的に分解・再構築が可能な性質を実現するという点だけでなく、取り込んだ分子をNMRで確認できるという点でも研究課題の進展に寄与すると予想している。これを実現するためには配位子の三つのイミダゾール基がフェイシャル型に配置されたCo(III)単核錯体の合成が不可欠である。この点に関して、鉄(II)錯体ではイミダゾール環の2位にメチル基を導入して立体的制約を加えるとフェイシャル型が得られることが分かっているので、このことを利用するということと、三脚型配位子を用いることという二つの方法でアプローチしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は合成実験に必要な試薬・器具を中心にした消耗品費60万円、海外での学会へ参加するため旅費30万円、人件費・謝金とその他でそれぞれ5万円の使用を計画している。
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Research Products
(2 results)