2012 Fiscal Year Research-status Report
可逆的に分解―再構築が可能な分子ケージの創出とその機能に関する研究
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23550078
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
砂月 幸成 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助教 (80362987)
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Keywords | 分子ケージ / 分子包摂 / キラル認識 / 可逆的分解―再構築 |
Research Abstract |
pH調節により可逆的に分解・再構築出来る金属錯体をベースにしたキラルな分子ケージ錯体の創出を目指している。昨年度、交付申請書に記したNi(II) 14核錯体が、内部空間にヘキサメチレンテトラミン(hmt)を1分子取り込むことができるということを明らかにした。hmtとよく似た分子骨格と分子体積を持つアダマンタン(Ad)をhmtの代わりに用い、hmtを内包した分子ケージの合成法と同じ条件で、Adを内包したケージの合成を試みたところAdはケージに内包されず、空のケージのみが得られた。この結果から、我々の分子ケージは配位結合的相互作用が可能な分子をより取り込みやすいということが推測された。ケージが分子を取り込む理由の一端を明らかにすることができたので、この結果は現在投稿準備中である。 そこで、金属イオンに配位可能な原子を含むキラルなゲスト分子としてアラニンと3-pyrrolidinolを選択し、それらの分子ケージへの取り込み挙動を検討したところ、アラニンの場合にはケージが生成せず、3-pyrrolidinolはケージに取り込まれないことが明らかとなった。アラニンのケースから配位結合能が強いゲストはケージの形成を阻害し、3-pyrrolidinolのケースから配位結合相互作用が可能なだけではなくゲスト分子の体積や形状も内部空間への分子の取り込みに関して重要なファクターであることが推測された。 また、反磁性の分子ケージを合成する目的で、三脚型六座配位子1,1,1-tris[2-(((imidazol-4-yl)methylidene)amino)methyl]ethaneの単核Co(III)錯体をを合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子ケージを用いたキラル認識に取り組んだが、結果としてうまくいかなかった。また、研究成果を論文として学術雑誌に発表する作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に合成した、三脚型六座配位子のCo(III)錯体は先のNi(II)14核錯体と同様のケージ構造を形成し得る分子構造を有していることをX線結晶構造解析により、すでに確認している。今後はこのCo(III)錯体とNi(II)、Pd(II)イオン等とを組み合わせることにより反磁性の分子ケージを合成し、NMR法などを用いながら分子の取り込み挙動を検討していく。また、Co(III)錯体は置換不活性であるため、Co(III)錯体ユニットとNi(II)、Pd(II)等のイオンが、研究課題のタイトルにあるようにpHにより可逆的に分解―再構築ができる分子ケージを形成する期待が大いに持てるため、このケージの形成挙動についても詳細に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は合成実験に必要な試薬・器具を中心にした消耗品費60万円、学会旅費25万円、人件費・謝金で5万円とその他(印刷費等)で10万円の使用を計画している。
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