2013 Fiscal Year Research-status Report
相関電子の結晶化により強誘電分極する有機伝導体の複合体薄膜創成による新機能探索
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23550170
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
山本 薫 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (90321603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 隆祐 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60302824)
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Keywords | 有機伝導体 / 分子性固体 / 強相関電子系 / 強誘電体 / 電子強誘電体 / フラストレーション / 非線形光学 / ドメイン |
Research Abstract |
我々は有機伝導体の一部に反転非対称な電荷秩序を形成する物質を見いだし,その機能物性の理解に向けた研究を行っている。本研究では,これらの物質の誘電率,特に強電場下での応答を理解するために,強誘電性有機伝導体からなる薄膜作製の試行を計画した。 研究対象に長距離の強誘電秩序形成を確認しているα'-(BEDT-TTF)2IBr2塩を選択し,物性評価の基礎データとして用いるため単結晶試料による純粋な誘電率測定の確認を行った。強誘電転移点では分極ゆらぎの発散に伴う大きな誘電率が観測されるが,実験の結果,上記物質の場合,試料ー電極間の電荷蓄積効果が分極揺らぎによる真の誘電率信号を凌駕してしまうことが理解された。 このことは,誘電測定では強誘電性の電荷秩序の評価が困難であることを示唆しており, これに代わる検出法の検討が必要となった。そこで,代替手段として焦電電流の適用を計画し高感度の温度変調電流測定系を構築した。 この装置では,検出感度を高めるために,試料温度をチョッパーでオンオフさせた光照射により変調させ,位相検波法により温度に比例する電流成分のみを検出することで信号-雑音比を向上させている。 現在,微小試料への適用のため,顕微光学系およびそれに適合させた電気系統の最適化作業を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,新しい強誘電性物質群として認識されつつある有機伝導体物の物性評価を目的としているが,外部電場効果の評価手段として計画していた誘電率測定が,同物質群に対して効果的で無いことが基礎データの予備測定により明らかになり,実験計画の修正が必要となった。さらに,研究代表者の所属先異動に伴い,研究室の撤収作業および新規設立に大きな時間が要されたため,研究計画の遂行が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の予備実験で観測された試料ー電極誘電による誘電応答は試料の残留伝導電子によるMaxwell-Wagner効果と考えられる。界面の状態制御によりこの効果が回避可能であるかどうかの検討を継続しつつ,新たに作製を開始した焦電流測定装置を完成し顕微鏡下での微小試料測定を実現させ,薄膜試料の作成とその物性測定を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度より旧所属機関から現在の所属機関に異動した。旧機関における所属グループは私の転出をもって閉鎖となったため,実験設備の撤去,建物設備の原状回復等の作業に多くの時間を費やさざるを得なかった。また,現在の所属機関では独立研究室を新設することとなり,設備構築等にやはり時間を要した。これらにより実験計画が未達となり,予定していた研究成果の発表も実施できなかった。 平成25年度,繰越金として残した助成金の約8割は旅費であったが,新規所属機関での研究設備設営に多くの消耗品が不足しているので,この助成金の多くはこれらの物品購入に充当する。
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Research Products
(8 results)