2011 Fiscal Year Research-status Report
超微細組織材によるマイクロ部品製造のための被切削特性評価に基づく切削技術開発
Project/Area Number |
23560135
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
青木 孝史朗 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70262409)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 極限ひずみ加工 / マイクロ加工 / 切削加工 / 超微細組織材料 |
Research Abstract |
平成23年度においては,計画に従って研究を遂行した.まず,供試材の作製である.申請者が共同開発した半連続型せん断変形加工機を用いて,超微細組織を有する供試材を作製した.素材としてはすでに実績のあるA6063材を用いた.せん断変形加工は,材料表面に化成被膜処理,金型表面にはグリースを塗布して室温で行った.供試材の寸法は,加工装置の制約から7×7×70mm程度の物を使用した.せん断変形加工は試験片の向きを変えずに最大で3回まで行い,供試材中に超微細粒組織を導入した.光学顕微鏡での組織観察では,結晶粒の判別が難しい状態となっていることを確認した. 次に,せん断加工を施した供試材をNC旋盤に装着するための治具を設計・作製した.供試材形状は前述のように直方体であり,それぞれの面において,せん断変形の入り方が異なるため,それぞれの面を切削面として装着可能となる必要があった.現有の治具の中に比較的小さな小片を装着して切削抵抗を測定する治具があるので,これを参考にして新たな治具を設計を進めた.しかしながら特に長手方向の面を固定する方法が難しく,設計を繰り返すケースが多々生じた.結果的には楔形状の止め金具を用い,面で固定する方法に落ち着いた.せん断加工された供試材より作製した試験片を新たに製造した治具に装着しNC旋盤に固定し,三分力計に取り付けられたバイトを用いて切削を行い,加工時の切削抵抗の測定,また切りくずの生成状態を観察した.当初は菱形チップを用いた準二次元切削を行ってみたが,加工条件としてのすくい角の取り得る範囲が少ないので,突っ切りバイトによる二次元切削へと実験方法を変更した.結果として,いくつかの条件において,切削時のせん断角と,せん断変形加工により導入された変形組織のなす角度との相関が得られた.具体的には,この二つの角度が一致する際,切削抵抗が著しく低下することが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マクロ切削を可能する治具の設計・製作は完了し,いくつかの条件下で測定結果を得ているが,非常にデータ点数が少ない状況となっている.これは治具の設計(特に供試材の長手方向面を表にして固定する方法)に予想より時間を要したこと,また切削方法の見直し(準二次元切削から突っ切りによる二次元切削)等にも時間を費やしたことが理由である.しかしながら,少ない条件下であっても,せん断変形加工によって高強度化された材料において,切削面や切削方向によって切削抵抗値が大きく変化(減少)するといった特異な現象が確認できた.このことは,本課題の目的において掲げた,超微細組織材の被削性が マイクロ部品用材料として充分な適用性があるのか,という点を検討する際の有効な判断材料の一つになると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,上記にも述べた様に,供試材と切削条件の組み合わせを増やすとともに,各条件下において実験回数を増やしてデータの信頼性を向上させたい.切削条件をどれぐらい変化させられるのかが,一つ問題なろうかと考えられるが,切削工具側で対応でき範囲で行うことを想定している.また,この工具側の準備は多少時間を要することが判明しているが,準備が整い次第,実験を行いたい.それ以外の点においては,供試材・実験装置の準備等に関して実験遂行上,大きな問題はないと考えている.精力的に実験を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は切削のFEMシミュレーションソフトウエアを導入する予定にしている.いくつか公表されているソフトウエアの中で,本課題に最もマッチしたものの選定を行い,導入し,来年度の解析の準備を行いたいと考えている.特殊なソフトウエアであるため,習熟にもある程度の時間を要すると思われる.同時に,マイクロ切削の準備にもかかる予定である.具体的には,マクロ切削で使用した工具による切削条件を再現できるマイクロ切削用工具の調達である.元々マイクロ切削は二次元切削を行うものであり,マクロ切削とのデータの突き合わせをどの様に行うか,検討すべき点の一つであった.幸い,マクロ切削方法も突っ切りによる二次元切削へと変更したため,すくい角をいくつか変化させた平削り型のバイトを準備する予定である.これは比較的小さな特殊バイトになるが,製作依頼を行う業者の選定はほぼ終了している状況である.
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