2011 Fiscal Year Research-status Report
医療用固定具に使用される生分解性ポリ乳酸のクラックレス微細加工技術の構築
Project/Area Number |
23560140
|
Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
加藤 秀治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (90278101)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ポリ乳酸 / 微細加工 / クラックレス / ダイヤモンド工具 |
Research Abstract |
脳神経外科手術における最先端技術を支える医療部品の一つとして用いられている骨切り後の患部を固定する部品には、生体適合性や診断画像の改善の観点から脱アーチファクト材料であるポリ乳酸を使用することが有効とされているが、部品加工時に生じるマイクロクラックの残存など仕上げ面品位が問題となる。本研究では、ポリ乳酸部品の加工における信頼性向上を図るため、回転工具を用いて切り取り厚さを薄く制御することによる微細加工技術の構築を試みる。 本年度は、ポリ乳酸単体を供試材料とした二次元切削加工を用いた基礎的加工特性の把握と、クラックレス加工に向けた加工条件の最適化を試みた。まず、加工実験を実施する前段階として本実験で取り扱うポリ乳酸材料の微視的構造調査し、熱可塑性プラスチック材料における特徴的な特性である動的粘弾性特性を三転曲げ共振法により明らかとした。また、熱変形温度が55℃程度であることも明らかとした。当初、これらの材料特性を把握するのと並行して、微細加工を実現するため、グラファイトを超高圧・高温環境下で直接変化させたバインダレスナノ多結晶ダイヤモンド焼結体材料を用いた工具形状設計と製作を行う予定であったが、刃先の鋭利化がかなり難しく、回転工具の工具形状完成にまでは至らなかった。二次元切削用の工具形状については完成している。このため、これまで研究室でプラスチックの高精度加工に使用してきたダイヤモンド焼結体工具を用いて微細加工特性評価を実施した。二次元切削加工においてはプラスチックス材料と同様の切りくず生成が確認された。また、微細加工特性評価においては切削速度12.0m/sまでの領域において、むしれ痕のない良好な加工表面が得られ、切削温度が熱変形温度を超えていない領域であることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績でも述べたが当初、微細加工用の回転工具の形状設計と製作を行う予定としていたが、研磨方法が十分でなく予定していた形状加工ができなかった。このため、本来ならば加工条件の最適化までを実施する計画に遅れを生じてしまった。 しかしながら、二次元切削加工用の工具についてはグラファイトを超高圧・高温環境下で直接変化させたバインダレスナノ多結晶ダイヤモンド焼結体材料を用いた工具形状設計と製作は完了しており、加工特性の大まかな把握はできている。また、バインダレスナノ多結晶ダイヤモンド焼結体材料ではないものの、研究室では難加工材料である超耐熱性プラスチック材料の高精度加工を実現する際に使用していた工具材料を有している。これを、代用工具材料として微細加工実験の6割程度を実施している。微細な切れ刃の凹凸があるものの方向性を明らかとするには十分なデータを得られたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はまず前年度に積み残した予定分を実施する。これに加え、クラックレスを実現するための微細加工条件の最適化の内容を踏まえて、最適条件下における微細切削メカニズムの検証を行うため、微細加工後の加工表面の構造解析を行う。さらに、極低加速電圧走査電子顕微鏡を用いた超硬合金研磨面における極表面層の観察を行い、表面状態を把握する。構造解析と極低加速電圧走査電子顕微鏡については外部の専門機関を利用する。微細切削挙動を詳細に観察するため二次元切削加工を行い、高速度ビデオカメラによる切りくず生成状態を観察する。また、合わせて加工面の観察を行い、加工条件の有効性を検証する。実際には(1)クラックレスを実現するための微細加工条件の最適化(一部積み残し分):(1)小形高速ミーリング加工機を用いた加工特性の評価、(2)切削温度の測定(現有設備)(2)ポリ乳酸の微細切削機構の解明:(3)FT-IR-ATR法を用いた構造解析によるポリ乳酸の加工表面の検証と非接触3次元表面形状・粗さ測定機による表面残存クラック形態の微視的観察の実施(外部設備)、(4)ピエゾを用いた極微小動移動が可能な移動ステージを用いた二次元モデルによる切削挙動の詳細観察(現有設備)
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は前年度の繰り越し分と本年度分の経費を合わせて申請している。 本年度も対象とするポリ乳酸原料粉を購入する。これらは必要不可欠な素材であるとともに、医療用材料であるためかなり高額である。このため、当初の計画に従い3年間に分けて購入予定としている。また、前年度の積み残し分である切れ刃の研磨加工が難しかったバインダレスナノ多結晶ダイヤモンド焼結体材料の刃付については研究室での研磨は継続するが、これとは別にメーカに一部依頼する形を取ることとした。このため、予定よりも工具費に関する費用が発生するものと思われるが、繰り越し分で対応可能である。また、極表面の状態観察が可能な極低加速電圧走査電子顕微鏡装置を用いた加工表面の観察は外部分析機関を利用するものとしている。これについても当初の計画通りである。
|
Research Products
(1 results)