2012 Fiscal Year Research-status Report
濃度界面を有する微粒子分散系の集団的挙動と個別的挙動
Project/Area Number |
23560178
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原田 周作 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80315168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 恭史 関西大学, 工学部, 准教授 (90330175)
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Keywords | 微粒子懸濁液 |
Research Abstract |
液体中に不均一に分散した固体粒子の集団的沈降を調べるために,さまざまな粒子,流体,流路条件での微粒子懸濁液層の沈降実験を行った.また,懸濁部の濃度界面で生じる界面不安定に関する線形安定性解析を行い,界面不安定の支配波長と時間成長率を求めた.実験および理論解析結果の比較から,微粒子の集団的挙動と個別的挙動の遷移過程が濃度界面の解像度を表す無次元数によって定量的に表し得ることを確認した.また粒子の集団的な沈降速度に関しても実験を行い,単純な形状の流路中において,本研究課題の目標の1つであった微粒子の集団的沈降速度に関する統一的モデルの構築を行った. さらに自然界で観察されるものに近い空間分布特性を有するフラクタル状の複雑流路を作成して実験を行った結果,分岐流路での粒子の分配特性のような複雑流路中の占有率にも粒子の集団性が大きく関与することが明らかとなった.現在は,得られた実験結果から任意の形状を有する複雑流路での重力分散挙動に適用し得るような流動予測モデルを構築中である, さらに濃度界面近傍での粒子運動のメカニズムについて調べるために,電解質(硫酸銅)溶液と純粋な液体間の界面(混和界面)における不安定現象に関する実験を行った.混和界面における銅イオンの挙動に対して,物質の吸光度の差を利用した濃度場の非接触測定装置を構築し,拡散の影響の大きい混和界面においても同様の空間スケールの界面不安定が生じることを確認した.また研究分担者の協力によって混和および不混和界面挙動に関する数値解析を行った.これらの数値解析結果,実験結果および線形安定性解析結果との比較から,懸濁液の濃度界面における粒子運動の詳細が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度までに,研究計画において目標の1つ目であった「微粒子運動の集団性/個別性を決定するパラメータの導出」については達成された.また平成24年度までに,2つ目の目標である「微粒子懸濁液の沈降速度に関する統一的モデルの構築」が単純な流路中において達成された.それぞれの課題に関して得られた結果をまとめて海外のJournalに論文を投稿し,平成25年4月現在で両方の論文が採択済みである. 現在は2つ目の目標を拡張して,自然界で見られるような空間分布特性を有する複雑流路を用いた実験を行っており,集団的沈降モデルを構築中である.また目標の3つ目である「不均一な分散系での粒子の自己拡散係数のモデル化」に関連して,Stokesian dymnamics法を用いた局所的に不均一な粒子分散系の中でのmobilityの分布を求め,懸濁液中の流体力学的拡散(hydrodynamic diffusion)の程度を明らかにしようとしている.今後は研究分担者が行っている混和界面および不混和界面の挙動に関する数値解析および実験結果との比較を通して研究を行っていく予定である.当初の研究計画では,平成23年度および平成24年度ともに実験および数値解析を平行して行っていく予定であったが,実験に関しては計画よりも進展が速く,上記3つの目標の内2つが達成されるなど,順調に研究が遂行されたと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度および平成24年度の研究において,研究計画時の3つの目標の内,「微粒子運動の集団性/個別性を決定するパラメータの導出」および「微粒子懸濁液の沈降速度に関する統一的モデルの構築」について達成されたため,今後は,残り1つの目標である「不均一な分散系での粒子の自己拡散係数のモデル化」と,2つ目の目標である「微粒子懸濁液の沈降速度に関する統一的モデルの構築」に関連して.複雑な分岐を有するような流路へのモデルの拡張を行っていく.「不均一な分散系での粒子の自己拡散係数のモデル化」に関しては,現在行っているfront-tracking法による不混和界面の計算,Stokes流中における粒子運動の2つの数値計算を実験と対応する条件で行う.また電解質溶液を用いた混和界面の挙動に関する実験,不均一な粒子分散系の計算結果との比較を通して,懸濁液の濃度界面近傍における粒子拡散のメカニズムの解明を試みる. 平成25年度も,これらの研究の達成度に応じて国内外の講演会での発表や投稿論文による発信を積極的に行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に使用予定であった「これまでに得られた成果の発表に要する費用」の一部は別予算により支出したことから,予算の一部が繰越しとなった.繰り越し分は,フラクタル流路中における懸濁液の濃度界面の挙動に関する実験のための,単分散粒子および流体(シリコーンオイル)の購入費用として使用する.また研究分担者との打ち合わせ(1回)を行うために,大阪-札幌間の往復旅費に使用する予定である. さらに,研究に当初の予定以上の進展が見られたことから「これまでに得られた成果の発表に要する費用」の用途で使用する予定である.具体的には研究代表者および研究協力者の学会参加費として,のべ海外2回,国内3回の成果発表の費用として使用する予定である.
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Research Products
(8 results)