2012 Fiscal Year Research-status Report
油水急速混合機構を用いた高負荷燃焼による難燃性燃料バーナ燃焼のCO2低減
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23560234
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木戸口 善行 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (70294717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名田 譲 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (50383485)
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Keywords | 燃焼 / 燃料 / 燃焼生成物 / バーナ燃焼 |
Research Abstract |
本研究では,難燃性燃料のボイラ用バーナ燃焼において水エマルジョン燃料化せずに水を燃焼場で利用する.前年度はこのための内部急速混合噴射弁を開発した.本年度は大豆油を燃料とし,この噴射弁を用いたときの熱交換特性とNOx生成特性を調べた. まず熱交換特性の計測装置を製作した.バーナ燃焼実験炉は保炎器と火炎長より長い外筒を有しており,本研究では外筒内壁に厚さ20mmの断熱材を設置し,熱交換器として内径9mmの水管を20巻したものを外筒出口に設置した.熱交換特性は,この水管が燃焼ガスより回収する熱量を冷却管入口出口の水温,水量を測定して定量化することで求めた. この結果,(1)内部急速混合型油水噴射弁は,従来の外部混合型噴射弁と同程度,もしくはそれ以上の熱交換特性を有しており,また,(2)従来の外部混合型噴射弁によるエマルジョン燃料の場合と同等以上の熱交換特性も得られる.(3)バイオマス燃料の大豆油で,軽油と同程度の熱交換特性が得られた.(4)水導入割合が増加すると,凝縮による熱交換が促進されるが,これは,燃料種によらない.などの知見を得た. さらに,本燃焼におけるNOx排出特性を調べた.その結果,(1)内部急速混合型油水噴射弁で水を導入することにより,火炎温度を低下させてNOxを低減できる.(2)内部急速混合型油水噴射弁を用いたバーナ燃焼では,保炎器内部の温度と火炎の長さがNOx生成に関係する.(3)当量比の低下によって火炎長が短くなると,滞留時間が短くなって排気NOx濃度は低下する.(4)内部急速混合型油水噴射弁に導入する微粒化用空気流量を増加させた場合,保炎器内で温度が上昇してNOxは増加する.その一方で,火炎長が短くなるとNOxは低下する.これらが釣り合って,燃焼炉出口における排気NOx濃度は,従来の噴射弁で水エマルジョン燃料を燃焼させた場合と同等になる.ことなどを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の燃焼試験方法の確立に引き続いて,熱交換特性の評価方法を確立した. 熱交換特性の評価により,本研究で開発した内部急速混合型油水噴射弁による燃焼の熱交換特性は,従来の外部混合型噴射弁による燃焼あるいは,水エマルジョン燃料化による燃焼と同等の特性を有することを示した.少なくとも最適化した燃焼では,燃焼が難しい高負荷条件でも水利用により,排気は改善しつつ,熱エネルギーの利用効率は低下しない,すなわち燃料消費量は増加せず,CO2も増加しないことがわかった. 本燃焼炉における排気特性として,NOx排出特性を調べ,NOx生成の支配要因を火炎形態および燃焼過程と関連付けて明らかにできた. NOx排出特性の評価試験では,前年度に完成した噴霧可視化試験装置を適用した.これは外筒に観察窓を設けて実際の火炎長を計測できるようにしたもので,これにより,火炎形態とNOx排出特性を関連付けた考察が可能になった.またこの試験装置により,火炎温度やすす濃度の光学計測が可能となり,次年度に向けて研究内容の幅が広がった. 当初の検討項目のうち,内部急速混合型油水噴射弁による噴霧の微粒化機構の解明,燃焼場のラジカル成分による化学反応機構の検討はまだ行っていない.このうち噴霧の微粒化機構を解明することが,これまでの結果を根拠付けるうえでとくに必要となってきた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに内部急速混合型油水噴射弁の有用性を確認したことを受けて,今後の研究では,本噴射弁によって形成する三流体(燃料,水,微粒化用空気)混合噴霧における噴霧液滴の形成および挙動について詳細に調べて,微粒化特性を明らかにする. 当初は,燃焼場におけるラジカル成分の計測による化学反応機構の解明を検討していたが,燃焼・排気計測の結果,物理現象である噴霧の微粒化機構の解明が必要であることが明らかになった.したがって,内部急速混合型油水噴射弁による噴霧の可視化解析を優先して実施することにする. このために,新たに噴霧可視化観察を行う.可視化装置は燃焼炉とは別に新規製作し,高速度デジタルビデオカメラあるいはスチルカメラを用いたシャドーグラフ撮影による解析を試みる. さらに,本年度は排気特性としてNOx特性を調べたが,本年度使用した噴霧可視化装置では実際の火炎が観察できるので,この装置に二色法温度計測システムを取り入れて,燃焼炉内の火炎温度分布,すす濃度分布を計測する.この結果から,火炎形成や燃焼とNOx,すす生成特性の関係とを明らかにして,内部急速混合型油水噴射弁による難燃性燃料の燃焼促進効果を明らかにする. 研究費は当初計画通りに使用する.今後は実験データの採取を中心に進めるため,直接経費は消耗品購入に使用する予定で,一部は新たに製作する噴霧可視化装置の構成部品購入にも使用する.この他,学会での成果発表旅費による支出を計画している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後は,内部急速混合型油水噴射弁による難燃性燃料の燃焼特性の特徴をさらに調査する.まず実験変数については燃料水準を追加することとし,軽油と大豆油の中間の燃料性状を有するA重油についても燃焼データを蓄積して,解析を行う.これに,NOx,すす濃度の計測を行うことで排気特性の解析を加え,燃焼から排気までの過程において,内部急速混合型油水噴射弁による燃焼改善効果を明確にする. また,これまでに油水急速混合噴射弁による難燃性燃料のバーナ燃焼が確立できたので,今後は燃焼現象の解析にも重点をおく.これまでの結果から,解析ではとくに油水急速混合噴射弁による噴霧の微粒化機構を解明して,燃焼現象と関連付けることが必要と考える. このため,噴霧液滴の生成,混合を解析する手法として,シャドーグラフ撮影法による噴霧の可視化を行う.まず,計測装置を製作することが必要で,これには,当研究室がディーゼル噴霧の可視化解析で培った計測技術を応用して新光学系を構築する.次年度への繰越額22,182円はこのための費用の一部として使用する. 観察では,高粘性燃料の噴霧液滴の分裂過程まで可視化解析することを目指す.
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Research Products
(1 results)