2011 Fiscal Year Research-status Report
クラックの疲労進展も包含した回転軸系の振動解析モデルと振動診断・進展予測法の開発
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23560257
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 剛志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70273258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 恵輔 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50242821)
石田 幸男 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10092991)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ロータクラック / 有限要素解析 / クラックのモデル化 / 実験的検証 / クラックの位置と深さの影響 / 固有値解析 / 振動診断法 |
Research Abstract |
これまでに開発してきたオープンクラックモデルを拡張し,回転とともに開閉するブリージングクラックのモデリングを行った.そしてブリージングクラックを有する回転軸系の振動について解析するための数値シミュレーション解析コードを開発した.また,実際の回転機械では軸受部の支持剛性に方向差が現れる場合が多いので,オープンクラックに起因して発生する振動の解析をその軸受剛性の方向差も考慮して行うことができる振動解析手法を構築した. (1)軸の回転に伴うクラックの開閉により軸の剛性が変化する特徴を考慮し,ブリージングクラックのモデルをオープンクラックのモデルを拡張して構築した. この剛性の時間変化を伴う有限要素回転軸モデルも構築し,その回転速度を変化させ,クラックに起因する振動が発生する副共振点付近における振動を高速に数値解析できるコードを開発した.(2)疲労試験によりわずかなスリットを入れた軸に疲労亀裂を発生させ進展させるための実験治具を作成し,疲労クラックを生じさせる実験を開始した.(3)回転軸系の軸受剛性に方向差があると,系の振れまわりは楕円軌道となりその解析に必要な系の自由度が大きくなる.オープンクラック軸が支持剛性に方向差がある軸受で支持されているときの,オープンクラックに起因する扁平性の特性と軸受剛性の方向差の特性の双方を考慮した理論解析手法をオーダー評価の手法を導入して検討・構築し,その理論解析結果を実験結果と比較して妥当性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・ブリージングクラックの振動解析に用いるためのモデリングについては,オープンクラックのモデルの実験的検証に若干時間を取られたがそれを拡張させる形でおおむね良好に達成できたと考える.・ブリージングクラックを有する回転軸系の物理座標有限要素モデルの数値解析コード構築は当初の目的にはなかったが2年目以降の低次元化モデル構築やそれを用いた振動解析の検証に必要なため実施した.そして,良好な結果を与えるコードの構築を達成できたと考える.・疲労クラック軸を作成するための実験治具は製作を終えたが,それを用いて実際に多数の拾うクラック軸を作成するところまでは至らなかった.この点については若干計画からの遅れがある.・模擬クラック軸については,疲労クラック軸を計画よりも多数作成し,実験を行い完了する度にクラック面で切断することとしたため,現状では計画を変更し,模擬クラック軸の作成は取りやめている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度 高精度・高効率な大規模非線形系の振動解析手法の開発(1) 数値解析手法の検討: クラック部以外は線形系として扱い,モード解析と部分構造合成法を応用した低次元化処理を行う.ブリージングクラックは非線形係数励振項,軸受部は非線形ばねとダンパとして扱い,これらで部分構造を接続してブリージングクラックを有する低次元化された回転軸系を構築する.そしてその高効率な数値解析手法を開発する.(2) 理論解析手法の検討:ブリージングクラックに起因して各種非線形共振の発生が予想される.たとえば加振を加え加振周波数を変えるときに結合調波型の非線形共振が複数発生する.これらの共振の定性的特性を陽に説明でき,かつ大規模系の定量的解析が可能な理論解析法を開発する.平成25年度 クラックロータの振動解析と疲労進展の連成理論モデルおよび解析法の構築(1) クラックの位置と深さの推定法の開発: 1,2年目の成果(クラックモデルと解析手法)を用いて,クラックによる共振の共振周波数のクラック位置と深さに対する変化を求め予想マップを作成する.疲労クラック軸を用いた実験の応答曲線を記録し,共振周波数の実測値と予想マップを用いてクラック位置と深さを推定する方法を開発する.(2) クラックの疲労進展モデル構築と振動との連成解析モデルの開発:1年目と2年目の成果を用いた振動解析によりクラック部の応力を評価する.そしてその繰り返し応力に対するクラックの疲労進展を評価する理論モデルを構築し,振動解析と疲労進展を連成させて同時に解析する理論モデルを開発する.その連成解析モデルの妥当性を調べるために,初期ノッチを入れた実疲労クラック軸を支持した実験装置を製作する.長時間回転させつつ定期的に共振曲線と固有振動数を計測・記録し,これらの実測データと理論モデルにより予測される振動変化と疲労進展を比較・検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,ブリージングクラックを持つ回転機械の解析手法の開発を目指す.・前年度から繰り越した直接経費を用い,前年度に作成できなかった疲労クラック軸を多数作成する予定である.・解析対象は実機相当の複雑な形状を有する回転軸系であり,大規模計算が必要となるため,平成24年度の研究費を用い,十分な計算能力を有する高速な計算ワークステーションを導入する予定である.
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Research Products
(3 results)