2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリシラン金属触媒による還元反応を用いたキノン構造分子への水素貯蔵に関する研究
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23560346
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
大下 祥雄 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10329849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 英明 気相成長株式会社(CVD研究部及び合成研究部), その他部局等, その他 (30535670)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 触媒 / 水素 / エネルギー保存 |
Research Abstract |
太陽光発電は、クリーンなエネルギー源として高い注目を浴びている。しかし、雨天時や夜間時には発電できないなど、主力の電力源としては問題がある。本研究では、本問題を解決する一つの方法として、発電により得られたエネルギーを化学物質の形で保存することを目指している。太陽エネルギーを貯蔵する化学物質には、生体系や環境に無害であること、カーボンニューロトラルであること、などが求められる。そのような系として、ポリシラン金属触媒を用いた有機物(ケト(=O)基など)の水素還元を検討している。今年度は、量産の観点から従来のバッチ式ではなくフロー式の方法で本反応を効率よく生じさせることを目標とした。具体的には、1)還元フローシステムの設計と部品選定、2)装置組み立て、3)装置校正、4)キノン構造を有する分子の選定、5)還元反応実験、を行った。 システムとしては、ユビキノンを有機溶剤に溶解し原料サーバーに入れ、液送ポンプで還元剤を充填した反応カラに一定量を流す構造とした。配管はテフロンチューブを用いた。マスフローコントローラーを通した水素を反応カラムに導入した。反応カラムに、還元剤Pd/(Psi-Al2O3) Pd:87μmol/g を約8g充填し、水素流量を10ml/min以内で変化させた。還元前には橙色の溶液が反応カラムを通すと無色透明となった。化合物と溶媒を生成物サーバーに捕集し、濃縮後にH NMRにより調べた。その結果、カルボニル基がともに水添された化合物が主であり、側鎖の末端オレフィンも水添された化合物が含まれることが示された。すなわち、ユビキノンCoQ10が還元され無色のアルコール基と変化したこと、すなわち、キノン構造分子に水素が添加出来ることが示された。 太陽電池に関しては、化合物半導体を用いた多接合化、あるいは結晶シリコン太陽電池の直接接続により高電圧化が実現できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
太陽光発電により得られた電気を用いて水を分解し生成する水素分子をポリシラン金属触媒を用いて水素原子に分解できること、さらに得られた水素をユビキノンに添加できることを、フローシステムを用いた実験ならびにNMR評価により実証できた。また、ポリシランに坦持する金属としては反応性ならびに安定性の観点からPdを選定した。これらの結果は、当初の23年度における目標である。ただし、坦持した金属の粒径の影響は明らかに出来なかった。一方、太陽電池に関しては、複数の材料あるいは接合を使うことにより、水分解に十分な高い電圧が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
水素分子が触媒により分解し生成した水素が添加されたユビキノンであるが、水素添加終了時には反応液は無色だが、徐々に元の色が着色し、数時間~半日でほとんど元の濃さにまで色が戻った。すなわち、空気酸化により添加された水素が離脱しキノン構造に戻る反応が生じたと思われる。また、1晩放置後では、H NMR測定により、空気酸化された原料が10%程度認められた。すなわち、安定したエネルギー保存システムを構築するには、今後はこれらの問題を解決する必要がある。そこで、酸化を防止できるようにシステムの改造を行う。また、還元する物質に関しても、特に安全性の観点を基準に分子構造を検討する必要があり、実験ならびに理論計算の両方から検討を進める。加えて、反応効率などに関する評価が必要であり、反応効率に与える水素ガス流量、触媒金属の粒径、温度などの影響を調べる。 太陽電池に関しては、さらなる高効率化の検討を進める必要がある。 最終的には、それらの技術を統合し、効果的に太陽エネルギーを安全な分子の形で貯蔵し、必要な時にそれら分子から水素が付加していない状態に戻すことにより得られる水素分子を用いて発電が可能な、無駄のない太陽エネルギーサイクルの構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験システムにおける酸化の問題を解決する必要がある。そのため、現行の解放系のシステムを改良し、反応カラムより後ろのラインを不活性気流下にするなどの改造を行う。加えて、溶媒の濃縮、分析資料の作製も不活性雰囲気下で行なうように改良する。これらに費用の一部を充てる。 水素添加分子に関しては、ユビキノン(CoQ10)以外のキノン構造体の還元実験を行い本システムの拡張性を検証する。現在考えている候補物質としては1,4-benzoquinoneならびに2,3-Dimethoxy-5-methyl-1,4-benzoquinoneである。これらは水溶性ではないため、加えてPyrroloquinoline quinone (PQQ)の検討を行う。これらの物質の購入費用が発生する。また、NMRなどの評価に対しても費用が発生する。
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