2012 Fiscal Year Research-status Report
ポリシラン金属触媒による還元反応を用いたキノン構造分子への水素貯蔵に関する研究
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23560346
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
大下 祥雄 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10329849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 英明 気相成長株式会社(CVD研究部及び合成研究部), その他部局等, その他 (30535670)
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Keywords | 触媒 / 水素 / エネルギー保存 |
Research Abstract |
水を電気分解して得られた水素分子をポリシラン金属触媒を用いてさらに水素原子に分解した。それら水素原子を各種キノン分子に対して付加した際の効率は、分子の構造に依存して変化し、効率の高い分子に対しては約95%であった。分子に対する水素原子の付加の有無やその比率に関しては、1H-NMR測定により評価を行った。水素原子付加実験においては、使用カラムのサイズと送液ポンプの性能等を考慮して溶液流量は0.2 ml/minで固定し、触媒で分解させるH2流量は5.6 ml/min(= 0.25 mmol/min)とした。対象とする分子のベンゼン環以外の全ての二重結合に水素が付加すると仮定して必要なH2量を計算し、H2流量 5.6ml/minに見合った溶液濃度とした。 今回、触媒により分解生成させた水素の添加を試みた分子は、CoQ10、1,4-Benzoquinone、2-Methyl-1,4-benzoquinone、2-Methoxy-1,4-benzoquinone、2,6-Dimethyl-1,4-benzoquinone、2,6-Dimethoxy-1,4-benzoquinone、Tetramethyl-1,4-benzoquinone、2,3-Dimethoxy-5-methyl-1,4-benzoquinone、BQQ・2Naである。例えば、CoQ10においては、水素原子による還元前にはミカン色であったものが、実験後には無色に変化した。NMRの結果と合わせて考えると、これはカルボニル基が水添された化合物が生成したことを意味する。すなわち、ポリシラン金属触媒により水素分子が分解され生成した水素原子がキノン分子に付加された。また、直鎖の末端が還元した場合のメチル基も見られたことから、直鎖部分の還元も一部進行していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的に水素分子をポリシラン触媒により分解して水素原子を生成できた。また、目的の分子にそれら水素原子を付加させるための反応カラムなどの実験装置の改良により、昨年度問題であった酸化の問題を回避できた。その結果、不活性雰囲気の中で効率よく実験を進めることが可能となった。また、ガスクロマトグラフィによる分析も可能となり、実験が効率よく出来る実験体制が構築できた。 以上の結果、今年度の目標であった水素添加の効率化、添加後の水素添加分子の酸化の抑制、さらには水素添加量と分子構造との関係に関する系統的な検討、を行うことができた。キノン分子の構造と水素添加効率の関係に関して多くの知見が得られつつあり、提案しているエネルギーシステムで使用可能な分子の探索を系統的にかつ効率よく行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果ならびに検討結果をもとに、水素原子を添加する分子種の検討ならびに触媒制御に関する検討を引き続き行う。広域でのエネルギー生成を考えると、本分子には、毒性がないこと、自然分解性があること、環境に対する負荷がないこと、あるいは極めて低いことなどが強く求められる。そのような要求を満たすものとしては、グルコースなどの分子がその候補の一つである。これらの観点からさらに実験を進める。 一方、エネルギー蓄積システムの構築には、化学反応リサイクル、すなわち、水素添加した分子から水素を取り出すプロセスの確立が必要不可欠である。今年度は、金などを用いた触媒を用いて、OHとして分子に取り込まれた水素を再び水素として外部に取り出す方法に関し可能性を実証する。触媒による水素取り出しを確認した後、目標分子に対する水素添加と水素取り出しの繰り返し実験を行い、提案しているエネルギーシステム実現の可能性の検討ならびに課題の明確化を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験装置として、水素添加によりOHとして分子に取り込まれた水素を再び外部に取り出す触媒を検討するためのシステムを構築する。その上で、これまでの水素添加に加えて、水素の取り出しの観点から種々のキノン構造体を有する分子を用いた実験を進める。そのため、継続して各種分子を購入する。加えて、効率よく水素の付加と取り出しを繰り返し実験が行えるように設備の改造を行う。評価としては、NMRなどにより水素添加・水素取り出しに関する情報を得るために研究費用を使用する。
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