2012 Fiscal Year Research-status Report
低栄養生育酵母による木質系廃棄バイオマスの分解と高効率な有用資源化への応用
Project/Area Number |
23560653
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
志水 美文(下村美文) 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (30396759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎木 博 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (30371503)
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Keywords | 廃棄物再資源化 / 微生物 / 木質系バイオマス / 難分解性有機物質 / 酵母菌 |
Research Abstract |
本研究の目的は「低栄養で生育する酵母を用いてこれまで未利用な木質系バイオマスを分解して高効率に有用資源へと転換すること」である。本研究では保有酵母の馴致を行い、木質系バイオマスの分解能の向上を目指し、分解能力を最大限に発揮できる至適増殖条件の決定を行う。そして酵母が木質系バイオマスの分解に現実に利用可能か判断するために、試薬を用いたモデル実験だけでなく、実際の木質系バイオマスを用いた長期分解試験も行い、電子顕微鏡で分解前後の木質系バイオマスの状態変化を観察することで、形状による分解能への影響を明らかにしていく。 平成24年度はこれまで単離している酵母の基本的な増殖能力、難分解性有機物質に対する分解能力の再現性について検討を行った。具体的には、①菌株の増殖特性(温度、pH、培地に加える無機塩の種類の影響等)の再現性を確認した。②単離菌株の各難分解性有機物質に対する分解能の確認を行った。それぞれ単一の難分解性有機物質に対する分解能を測定した。③単離菌株を難分解性有機物質が唯一の炭素源として含まれる培地で繰り返し植え継ぎを行い、分解能向上のための馴致を行った。試薬成分では早く資化できても実際の木質系バイオマスの分解では時間がかかる。そこで④木質系バイオマスの分解能を向上させるため、アルカリ処理、水蒸気蒸留法による前処理を行い、その効果の確認を行った。 平成24年度に行った研究により、超低栄養条件下で生育する木質系バイオマス由来の難分解性有機物質分解酵母を活用し、木質系バイオマスを中心とする未利用バイオマスから効率良くタンパク質、ビタミン、ミネラル等の有用資源を微生物菌体のかたちで生産する技術の実用化に向けた大変意義のある成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はこれまで単離している酵母の基本的な増殖能力、難分解性有機物質に対する分解能力の再現性について検討を行った。具体的には、①菌株の増殖特性(温度、pH、培地に加える無機塩の種類の影響等)の再現性を確認した。②単離菌株の各難分解性有機物質に対する分解能の確認を行った。それぞれ単一の難分解性有機物質に対する分解能を測定した。③単離菌株を難分解性有機物質が唯一の炭素源として含まれる培地で繰り返し植え継ぎを行い、分解能向上のための馴致を行った。試薬成分では早く資化できても実際の木質系バイオマスの分解では時間がかかる。そこで④木質系バイオマスの分解能を向上させるため、アルカリ処理、水蒸気蒸留法による前処理を行い、その効果の確認を行った。 平成23年度の結果の再現性を行い、菌株の増殖特性の確認が行え、また、木質系バイオマスの分解能を向上させるため、前処理の検討に着手できた。 また、平成23年度、平成24年度で得られた成果を取りまとめ、学会発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基に菌株の実用化への基礎検討を行う。具体的には①菌株増殖時における炭素源以外の窒素やリン、金属、ビタミン等の栄養要求性の確認を行う。最終的には難分解性有機物質の分解能力を最大限に発揮できる至適分解条件の決定を行う。②最終候補菌株を用いた木質系バイオマスからのタンパク質、ビタミン、ミネラル等の有用物質の安定生産の検討と効率の算出を行う。また並行して③最終候補菌株の植え継ぎ時に分解能力が低下しないか安定性の確認、菌株の長期凍結保存による難分解性有機物質分解能の安定性の確認を行う予定である。 木質系バイオマスの前処理もさらに検討を行う。現時点で得られている菌株も試薬成分では早く資化できても実際の木質系バイオマスの分解では時間がかかる。そのため、平成24年度では、アルカリ処理、水蒸気蒸留法による前処理を行い、その効果の確認を行った。今後は物理的(UV分解、オゾン分解、亜臨界水処理)あるいは化学的(酸)前処理も併用する。前処理法と組み合わせて効率の良い分解法の確立を目指す。 平成23~25年度に得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費としてはほとんどは酵母を培養するために必要な消耗試薬(微生物培養試薬類、エタノール)、器具類(微生物用器具類、微生物観察用器具類、ガラス器具、使い捨てプラスチック器具等)を使用予定である。本研究を遂行するには必要不可欠なものである。酵母用真菌同定キット、分析用試薬は本研究で使用する酵母の資化能力、木質バイオマス分解能力を確認するために必要な経費である。 旅費、謝金等、その他の経費として本研究課題の成果を積極的に学会、研究会、学会誌等に発表・掲載することを予定している。本研究の成果を広く社会へ発信・公表するために必要な経費である。 木質系バイオマスの分解能を向上させるため、前処理法の検討のため、エバポレータ、HPLCのデモ機を借りて予備実験を行っている。必要に応じたスペックのものを平成25年度に購入予定である。 平成24年度にクリーンベンチの購入を予定していたが、建物の都合で新しくガスを配管することができないため、ガスの配管の必要のないクリーンベンチを再検討中である。また簡易のクリーンベンチで行った滅菌操作で実験に支障がないかどうか確認中である。そのため今年度の未使用額が生じた。
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Research Products
(26 results)