2011 Fiscal Year Research-status Report
歴史的建造物と周辺地域におけるユニバーサルツーリズムの研究
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23560755
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
村井 裕樹 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (30455563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森保 洋之 広島工業大学, 環境学部, 教授 (80016542)
吉村 英祐 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50167011)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高齢者 / 障害者 / ユニバーサルツーリズム / 歴史的建造物 |
Research Abstract |
当該年度の研究実施計画は、概ね計画通り実行できた。以下、具体的に記載する。1.観光客へのヒアリング調査:宮島(広島県廿日市市)へ観光に訪れた高齢者や障害者を対象として、観光した際の不便な点や改善を希望する点などについてヒアリング調査を実施した。調査内容は、島内を観光する経路に沿ったものとし、宮島港、島内移動、神社仏閣境内、レストラン、トイレなど場所ごとに回答を得た。その結果、様々な箇所の路面の濡れによる滑りや飛び石など路面状況の問題、狭い道路における自動車通行時の歩行者への危険性、手すりの無い階段、記載内容の消えかけている案内版、公衆トイレの少なさなどについて指摘が得られた。また、宮島へのアクセスに関係したものとして、鉄道を利用する際の課題についてもヒアリング調査を実施した。2.宮島における物理的障壁の調査:観光客へのヒアリング結果を参考に、特に課題として挙げられた場所の物理的障壁の状況について基礎調査を行った。その結果、未舗装路における車いすの走行、店舗内の通路、すれ違いが非常に困難な道路箇所など課題を確認した。3.宮島の街区形成の調査:宮島は観光地であると同時に住民の生活の場でもあり、その街区形成を検討することにより地域の成り立ちを検討した。その結果、住宅の建築的特徴と道・水路など街区を形成する要因とのかかわり、集落全体が海に向かって傾斜している実態などを確認した。4.車いすの事故に関する検討:車いす使用者と立位歩行者の視点高さの違いによる、車いす走行時の危険性について検討(実験)を行った。その結果、建築物等は立位の視点を基準に設計されており、車いす使用者にとって段差等危険を認知できなくなることなどを確認した。また車いすからの段差の見え方を分析し、危険性の実態把握等について行った。その結果、車いすの転落事故が発生しやすい場所(形態)の把握を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、歴史的観光地におけるユニバーサルツーリズムを検討するための基礎的資料を得ること、主に現状の課題を明確にすることを中心に研究を進めてきた。その中で、本研究でユニバーサルツーリズムを実現する柱としている、「人」(人的支援の内容や量)、「建築」(建築物やその周辺地域のハード面でのバリアフリー対応)、「地域構成」(地域の特性)、「移動・安全」(人間工学にもとづく安全性)を考えており、平成23年度は、それぞれにおいて、研究の目的に対しておおむね達成できている。 具体的には、観光客へのヒアリング調査から、高齢であったり障害のある観光客がどのような不便さを感じ、その現状に対してどのような支援・改善を求めているかを知ることができ、平成24年度実施予定の観光地側の支援に関する研究を行う上での資料が得られた。また、地域特性の分析により、観光客に対して住民が出来る支援を研究する上での資料(地域性、地域の成り立ちなど)が得られた。さらに、車いす移動時の危険要素についての研究から、例えば視点高さと見やすい掲示高さや階段等の見え方の関係など、安全性を提案して行くうえでの基礎知見を得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、高齢者や障害者の観光客からの宮島の課題・改善要望を得ることができたため、今後はユニバーサルツーリズムを実現するために受け側である宮島が観光客にどのような支援ができるのかという視点で研究を進めていく。そのために、以下のとおり推進方策を行う。1.宮島住民へのアンケート調査等を行う必要があり、平成23年度に実施した宮島での観光客へのヒアリング調査時にも支援を得られた行政機関と綿密な連絡を行い、連携を強めていく。また、平成23年度研究成果を還元していく。2.宮島にある建造物やその周辺地域・移動経路上のバリアフリー状況について詳細な調査・分析を実施するため、行政との連携を強めると同時に、十分な人数の調査員を確保する。3.他地域での、高齢者や障害者への観光支援としてどのようなことを実施しているのか、どのようなことが課題として挙げられているのかなど調査を行い、宮島での支援方法の具体化に向けての資料としていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の主な使用計画は以下のとおりである。1.宮島住民に対するアンケート調査を計画しており、印刷費(封筒・アンケート用紙)、郵送費(発送・回収)、礼状費(印刷、郵送)、回収データ入力者への謝金として使用する予定である。2.宮島の建造物やその他周辺地域・移動経路に対するバリアフリー調査を計画しており、多数の調査員の参加による幅広い実施を計画している。この調査員への謝金として使用する予定である。3.他地域(宮島以外)での高齢者や障害者への観光支援についてのアンケート調査を計画しており、印刷費、郵送費、礼状費として使用する予定である。 なお、上記のうち、宮島住民へのアンケート調査と、宮島でのバリアフリー調査は、平成23年度の研究を進める中で当初の計画よりも幅広く実施する必要があると考えられたため、平成23年度研究費の一部に次年度に使用する予定の研究費を生じさせた。そのため、より有効な調査・研究が可能と考えられる。
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