2014 Fiscal Year Annual Research Report
衛生思想の展開ならびに設備技術等の関係から見た明治・大正初期における上流の邸宅
Project/Area Number |
23560775
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
安野 彰 文化学園大学, 造形学部, 准教授 (30339494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 青蔵 神奈川大学, 工学部, 教授 (30277686)
勝木 祐仁 日本工業大学, 工学部, 准教授 (00508989)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 衛生 / 住宅 / 明治 / 大正 / 暖房 / 換気 / 障子 / 設備 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、幕末から明治初期に発行された養生書の記述内容を整理した。また、昨年度に引き続き、明治から大正初期に建設された邸宅の遺構調査を行い、文献による分析を補完した。養生書の住宅に関する記述は、これまで、一部が参照される程度であったが、記述内容から浮かび上がる当時の住宅像を導いた。また、遺構調査を踏まえた検討からは、空気環境や設備の変化の過程などについて推察が出来、衛生面の近代化における各遺構の価値を見い出した。 期間全体を通しては、上記の養生書、衛生書、家政書や家事教科書、各種雑誌、新聞等の記述、並びに遺構の分析を通して、以下の事柄ほかを見いだした。 1. 幕末から明治中期までは、空気環境の観点から、高燥の地、採光と通風、床下の乾燥、寝台、暖炉による換気等が重視され、日本家屋や紙障子の換気性能が高く評価された。2. 明治20年前後より、住環境に関する記述が、病原菌や水・空気に含まれる物質名や数量を踏まえるようになる。3. 洋式暖房器具の和室での利用については、遅くとも明治20年頃迄に暖炉の造作が確認され、明治30年代を中心に、燃焼性能を考慮した和室向けストーブの開発・販売で、上流家庭の和室でも普及する。4. この間、滋賀重列や土屋元作は、米国での生活経験を踏まえ、暖房性能やプライバシーの向上等を目指すなど、それまでとは異なる住宅論を展開した。5. 和館主要居室に硝子障子が目立つようになるのは、明治30年代半ば頃で、浴室、天窓、風が強い側等に先行して硝子が入る傾向にあった。6. 色彩は、明治初頭に明るさが、後に庭との調和等が重視され、明治末以降は居住者の心理的な影響を踏まえるようになった。 以上、明治から大正初期の上中流の住宅を衛生といった観点から、暖房等の設備や建具を踏まえて読み解く筋道を立てられたことは、日本の住宅近代化の重要な一側面を提示するものと考えられる。
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