2011 Fiscal Year Research-status Report
ゴシック建築成立期におけるイール・ド・フランス地方支柱形態の革新性の立証
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23560779
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
佐藤 達生 大同大学, 工学部, 教授 (40131148)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゴシック建築 / イール・ド・フランス / アングロ・ノルマン / ノルマンディー / 支柱 |
Research Abstract |
2011年9月18日から同年10月3日までの16日間、イギリス中部と南部およびフランスのノルマンディー地方に分布するアングロ・ノルマン時代のロマネスク教会堂(11世紀後半から12世紀)および関連するフランス北部の若干の教会堂(計20遺構)について、現地調査を実施した。調査では、教会堂内部の大アーケード支柱の形状を、目視によって観察記録するとともに、測定器具を用いて実測をおこない(各教会堂につき2~8本程度)、さらに写真撮影をおこなった。また教会堂関係者との面会により、調査教会堂に関する若干の文献資料等の入手をおこなった。 「研究実施計画」に挙げた調査対象にのうち、アングロ・ノルマン時代のイギリスの教会堂(8遺構)については、本調査によりすべて調査を完了した。またノルマンディーの教会堂についてはJumiegsとCaenのSt.-Nicolasを除く10遺構について調査を完了した。この現地調査で得られたデータをもとに教会堂の支柱断面の図化(イギリスの教会堂3棟、ノルマンディーの教会堂9遺構)をおこなった。図化の未実施はイギリス5遺構、ノルマンディー3遺構である。 図化未実施の教会堂(目視観察データによる)も含め、アングロ・ノルマン(イギリスとノルマンディー)の教会堂の支柱断面形状とイール・ド・フランスの教会堂支柱断面形状を比較して、以下の点に関して著しい相違があることを明らかにした。1)支柱の核を構成するルソの入隅に挿入されるシャフトについて、アングロ・ノルマンのものは入隅に没入する傾向が顕著であるが、イール・ド・フランスのシャフトにはこのような傾向は全く見られない。2)イール・ド・フランスではリブヴォールトを受けるシャフトの発達が顕著であるのに、アングロ・ノルマンではこのような傾向は認められない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査そのものは、研究計画で挙げた対象20棟のうちの18遺構について、実施することができた。現地調査によって得られた実測データと目視観察記録をもとに、12遺構について支柱断面の図化を完了した。図化未実施が8遺構あるが、これら未実施のものについても目視観察記録と生データにより、上記「研究実績の概要」に示した結論、すなわち予想通りの結論が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画の中心は、平成24年度のロンバルディア地方(イタリア)の教会堂13遺構と25年度のノルマンディーの教会堂10遺構について、現地調査を実施し、大アーケードの支柱断面形状を観察・実測することにある。そしてそれら現地調査で得られた実測データに基づいて支柱断面形状を図化し、これら2地方とイール・ド・フランスの支柱断面形状との相違を明らかにすることにある。23年度の現地調査未実施教会堂2遺構については25年度の現地調査(フランスのノルマンディー)に含めて実施し、図化未実施分については24年度と25年度において、実施することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においてはロンバルディア地方の13遺構について10日間程度の現地調査を実施する。本年度の研究費(80万円)のうちの55万円程度をそのための旅費に使用する。平成23年12月にパリ大学ダニー・サンドロン教授(ゴシック建築の専門家)が来日した際、同教授と本研究のこれまでの成果と今後の研究計画について概要を説明したところ、24年度の8月にパリ大学にて、本研究の内容についてセミナーを開催し、関連分野の研究者と意見交換を行う運びとなった。そのための名古屋‐パリ往復旅費を本研究費から支払うこととする。この旅費については、当初計画では計上していなかったが、23年度の繰り越し分(28万円程度)を使用することにより、確保できる見込みである(50万円程度)。 本年度の研究費の大半は上記旅費に充てられるため、物品費・人件費(当初計画では合わせて15万円程度)が大幅に不足する見込みであるが、これらについては学内競争研究資金により補うものとする。
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Research Products
(4 results)