2012 Fiscal Year Research-status Report
不均一構造導入による圧電体膜の圧電特性向上に関する研究
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23560804
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岡村 総一郎 東京理科大学, 理学部, 教授 (60224060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯島 高志 独立行政法人産業技術総合研究所, 水素材料先端科学研究センター, チーム長 (90356402)
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Keywords | 圧電 / 薄膜 / 空孔率 / 密度 / PZT |
Research Abstract |
本研究の目的は、圧電体膜の微構造を不均一化し、それにより圧電特性がどのように変化するかを明らかにすることにある。平成23年度は、膜厚約300 nmで空孔率の異なるPb(Zr,Ti)O3 (PZT)薄膜を複数種類作製し、その圧電特性を評価した。その結果、空孔率が2~8% (膜密度0.98~0.92)の範囲では、空孔率が高いほど圧電定数は高くなる傾向が見られた。しかし、試行数がまだ十分でなく、また膜厚の異なる試料の評価も課題として残った。 そこで、平成24年度は、膜厚500 nmのPZT薄膜を作製し、その圧電特性と誘電率、屈折率、膜密度との関係を評価した。薄膜は化学溶液堆積法により作製し、仮焼温度を250~400℃と変化させることで膜密度の制御を行った。結果として、周波数1 kHzにおける比誘電率は688~782で、この組成のPZT膜としては妥当な値を示した。収束イオンビームにより加工した断面のSEM像から見積もった膜密度は、0.926~0.954であった。また、反射スペクトルと誘電分散関数(ローレンツモデル)を用いたフィッティングにより推定した波長1000 nmにおける屈折率は、2.11~2.32と見積もられた。ただし、比誘電率と屈折率の間には相関があまり見られず、屈折率を用いた膜密度評価は更なる検討を要す結果となった。 圧電応答顕微鏡(PFM)により測定された、変位-印加電場特性の原点付近の傾きから見積もった圧電定数d33,effは、33.9~49.5 pm/Vであった。この圧電定数と、上記の比誘電率と膜密度の相関について検討したところ、比誘電率が小さいほど、また膜密度が低いほど圧電特性は上昇する傾向が見られた。これは、空孔量が多いほど圧電定数が大きくなることを意味し、平成23年度に得られた「適度な量の空孔が圧電特性を向上させる」という結論の再現性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、空孔率と圧電特性の関係について再現性・普遍性を確認することを目的としており、膜厚の異なる試料においても平成23年度と同様な結果が得られたことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。ただし、空孔サイズの制御については、今のところ成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたり、試行回数を増やすとともに、膜厚の異なる試料についても検討し、圧電特性と空孔率の関係についての普遍性を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、研究はほぼ計画通り進行し、平成23年度からの繰越しを含め、配分された研究費はほぼ使い切った。9,390円の繰越し金については、次年度の研究費と合わせて消耗品購入に充てる。
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Research Products
(1 results)