2011 Fiscal Year Research-status Report
電解液流動を用いた分極制御による銅電解精製の高電流密度化のための基礎研究
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23560894
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
高須 登実男 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20264129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 秀行 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90213074)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 銅電解 / 電解液流動 / 分極制御 / 高電流密度 / 電解精製 / モデル化 / 銅製錬 |
Research Abstract |
銅電解精製では生産性の向上のために高電流密度化が求められているが、実操業には適用されていない。その主因は、効果的な撹拌の方法と撹拌を利用した場合の最適な条件が明確でないことにあると考えられる。電解には多くの因子が相互に影響しており、またスケールアップに対応できることを考慮すると、物質移動が明確な条件で系統的なデーターを取得することが有効と考えられ、小型で制御が容易なRDE(回転ディスク電極)装置を用いて、流動が電解挙動に及ぼす影響を調査した。 電解液は硫酸銅と硫酸のみで、5mmφのCuを回転ディスク電極として用いた。電解液温度60℃で電気化学測定システムを用いて400,1200,2000A/m2の電流密度で、回転数を100~10000rpmと変化させて電解を行い電位を測定した。 400,1200,2000A/m2の電流密度で、電気量が一定となるよう電解時間を定め、回転数を0,100,500,1000rpmと変化させ、カソード電極電位の測定を行い、電解後のカソード表面状態を観察した。100,500rpmと回転数を上げていくと表面が平滑になっていき、500と1000rpmでは明確な差は見られなかった。電位は0rpmでは初期に濃度分極によって大きく低下し、その後に上昇してくることが分かった。回転数を上げると初期の電位の低下が抑制されていった。電流密度を上げると表面が粗くなること、回転数を上げると平滑になること、電流密度が高いほど平滑化に必要な回転数が増加することが確認された。 また、定電流で回転数をステップ的に変化させる実験と回転数毎のサイクリックボルタンメトリも実施し、物質移動が分極特性と粗さに及ぼす影響を定量的に把握した。これらの結果が流通型の小型実験の結果と対応することを確認した。各種因子の影響を評価していく上で有効な手法を確立したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
銅電解精製において物質移動現象および電解挙動に及ぼす流動の影響を定量的に明らかにし、特に分極特性を介して相互に関連する各種因子を実験と理論の両面から解明し体系化することで、高電流密度を可能とする操業条件を開発することを本研究の目的とした。 小型で制御が容易なRDE(回転ディスク電極)装置を用いて、不純物、添加剤を含まない電解液を用いた基本条件での高電流密度電解を行い、分極測定と表面観察を実施した。物質移動が電解挙動に及ぼす影響を定量的に明らかにし、流通系の小型実験結果と対応することを確認した。これらより、今年度の研究では、小型実験系として各種因子の影響を評価していく上で有効な手法を確立したと考えられる。しかしながら、交流インピーダンス解析や表面粗さの測定については不十分であった。また、強制対流下での初期電極粗さ、不純物、添加剤による、分極特性、析出形態、カソード不純物濃度に与える影響の調査についても不十分であると考えている。 実験と並行して、電解槽内の電解液の流れおよび電解挙動に及ぼす流動効果の解析として、電解槽内の物質移動と電気二重層での電荷移動を考慮に入れて、濃度分極と活性化分極の特性を表現できる数学的モデルを作成しているが、界面粗さの影響および進展の表現については組み込めていないのが現状である。 以上の状況より、研究の進行が遅れ気味であるものの着実に成果を上げつつあると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
RDE(回転ディスク電極)装置の小型実験系としての有効性が確認できたので、この手法を用いて予定通り、電極表面粗さ、不純物濃度、添加剤濃度、電解液流速、電流密度が、分極特性、カソードの不純物濃度、表面粗さに及ぼす影響を評価できるように実験を行う。現象の解析に必要な反応速度定数を交流インピーダンス法等によって求める。電解後の表面状態を観察し、電極の表面粗さとカソード分極との関係、またその電解液流速による影響を明らかにする。 電解槽内の液の流れおよび電解挙動に及ぼす流動効果の解析のための数学的モデルについては、界面粗さの影響および進展の表現を組み込む。電解実験で得られた分極の経時変化を計算結果と比較することで数学的モデルの妥当性を確認する。電極表面粗さ、不純物濃度、添加剤濃度、電解液流速、電流密度について、現状の実操業から大きく異なる条件まで含めて検討し各種の条件にて計算することを通して、最適な電解条件を明らかにする。 これらから得られる結果をもとに、スケールアップの影響を評価するための中型実験の条件を設定し、装置の設計と製作を行う。水モデル実験によって流動特性を把握する。絞り込んだ電解条件において、中型装置を用いた電解実験を実施する。小型実験と同様な手法によって分極特性、カソードの不純物濃度、表面粗さについて調査する。実験結果と数値計算結果を比較し、必要であれば数学的モデルを再構築する。実機規模の電解槽に強制対流を付与したときに流れを解析し、その電解挙動を予測する。最適条件を探索し提案する。 以上の計画により、銅電解精製における物質移動現象および電解挙動に及ぼす流動の影響を定量的に明らかにし、特に分極特性を介して相互に関連する各種因子を実験と理論の両面から解明し体系化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の予定より実験の実施が遅れたために必要な試薬等の消耗品が少なく未使用額が生じた。 物質移動現象および電解挙動に及ぼす流動の影響を定量的に明らかにし、特に分極特性を介して相互に関連する各種因子を実験と理論の両面から解明し体系化することで、高電流密度を可能とする操業条件を開発するためには、各種の条件での実験が必要である。 電気化学測定システムを購入することで、以上の実験が並行して行えるようになり、迅速に研究を推めることが可能となる。小型実験では、特に多くの条件での実施が必要であり、電解液の作成や試料の分析には試薬類やガス類、分析用器具、ガラス器具類、センサーチップといった消耗品および分析装置使用料が必要である。本年度に実施できなかった実験も実施するので、本年度の未使用額を合算して試薬等の消耗品を購入する。一方、中型実験では、小型実験と数値計算によって実験条件を絞り込むものの、一度に多量の消耗品が必要となる。また、中型実験装置の製作にあたっては、容器等の部材や配線、配管のための物品の購入および加工費が必要である。できるだけ調整が可能となるように設計し、試作数が多くならないに留意して研究を推める。また、中型装置の流動特性を把握するための水モデル実験では、センサープローブなどの消耗品が必要である。
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