2012 Fiscal Year Research-status Report
電解液流動を用いた分極制御による銅電解精製の高電流密度化のための基礎研究
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23560894
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
高須 登実男 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20264129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 秀行 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90213074)
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Keywords | 銅電解 / 電解液流動 / 分極制御 / 高電流密度 / 電解精製 / モデル化 / 銅製錬 / 不純物 |
Research Abstract |
銅電解精製では生産性の向上のために高電流密度化が求められているが、実操業には適用されていない。その主因は、効果的な撹拌の方法と撹拌を利用した場合の最適な条件が明確でないことにあると考えられる。電解には多くの因子が相互に影響しており、またスケールアップに対応できることを考慮すると、物質移動が明確な条件で系統的なデーターを取得することが有効と考えられる。 今年度は、RDE(回転ディスク電極)装置を用いて、強制対流下での初期電極粗さ、不純物、添加剤が、分極特性および析出形態に与える影響を調査した。初期電極粗さは2000A/m2, 0rpm で10sまたは60s の事前電解により調整した。不純物としては、As濃度 3g/L、Bi濃度 0.2g/L、Sb濃度 0.5g/L、添加剤としてはニカワ濃度 0.06g/L とした。400,1200,2000A/m2の電流密度で、電気量が 2.0 MC/m2 となるよう電解時間を定め(400A/m2 では 5000s)、回転数を0,100,500rpm とした。 初期電極粗さが大きいと、今回の条件では初期の影響が残るものの、回転させることで平滑になっていく傾向を確認した。不純物を添加すると、0rpmのときには、400A/m2 では粗さへの影響は小さいが、1200A/m2では穴が観察されるようになり、2000A/m2では不純物無しと同様に析出物が剥離した。100rpm とするといずれの不純物と電流密度でも平滑性が向上し、2000A/m2については500rpmとするとさらに平滑になることが分かった。カソード電位の経時変化に及ぼす不純物の影響としては、As が顕著であり、回転数に依らず電位を低下(分極を増大)させることが分かった。ニカワ添加は、いずれの電流密度と回転数でも電位を低下させ、物質移動の促進と重畳的に平滑化させることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
銅電解精製において物質移動現象および電解挙動に及ぼす流動の影響を定量的に明らかにし、特に分極特性を介して相互に関連する各種因子を実験と理論の両面から解明し体系化することで、高電流密度を可能とする操業条件を開発することを本研究の目的とした。 小型で制御が容易なRDE(回転ディスク電極)装置を用いて、初期電極粗さ、不純物、添加剤、電解液流速、電流密度が、分極特性や表面粗さに及ぼす影響を調査し、系統的な実験結果を取得してきている。しかしながら、交流インピーダンス解析や表面粗さの測定については必ずしも十分に整理できていない。また、流動下における電解液中の不純物濃度がカソード不純物濃度に及ぼす影響の調査についても不十分であると考えている。 実験と並行して、電解槽内の電解液の流れおよび電解挙動に及ぼす流動効果の解析として、電解槽内の物質移動と電気二重層での電荷移動を考慮に入れて、濃度分極と活性化分極の特性を表現できる数学的モデルを作成し、さらにスケールアップに対応できるように乱流についても考慮できるように発展させているが、界面粗さの影響および進展の表現については組み込めていないのが現状である。 スケールアップの影響を評価するための中型実験装置の作成については、チャンネル型の暫定的な装置を作成しているが、温度制御の精度を上げるための工夫が必要と認識している。 以上の状況より、研究の進行が遅れ気味であるものの着実に成果を上げつつあると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
回転ディスク電極を用いて、予定通り、初期電極表面粗さ、不純物濃度、添加剤濃度、電解液流速、電流密度が、分極特性およびカソードの不純物濃度、表面粗さに及ぼす影響をさらに詳細に評価できるように実験を行う。現象の解析に必要な反応速度定数を交流インピーダンス法等によって求める。電解後の表面状態を観察し、電極の表面粗さとカソード分極との関係、またその電解液流速による影響を明らかにする。 電解槽内の液の流れおよび電解挙動に及ぼす流動効果の解析のための数学的モデルについては、界面粗さの影響および進展の表現を組み込む。電解実験で得られた分極の経時変化を計算結果と比較することで数学的モデルの妥当性を確認する。電極表面粗さ、不純物濃度、添加剤濃度、電解液流速、電流密度について、現状の実操業から大きく異なる条件まで含めて検討し各種の条件にて計算することを通して、最適な電解条件を明らかにする。 上記の回転ディスク電極を用いた小型実験によるデータの蓄積および数学的モデルの構築と並列して、スケールアップの影響を評価するための中型実験装置を改良し、水モデル実験によって流動特性を把握する。 これらから得られる結果をもとに、絞り込んだ電解条件において、中型装置を用いた電解実験を実施する。小型実験と同様な手法によって分極特性、カソードの不純物濃度、表面粗さについて調査する。実験結果と数値計算結果を比較し、必要であれば数学的モデルを再構築する。実機規模の電解槽に強制対流を付与したときに流れを解析し、その電解挙動を予測する。最適条件を探索し提案する。 以上の計画により、銅電解精製における物質移動現象および電解挙動に及ぼす流動の影響を定量的に明らかにし、特に分極特性を介して相互に関連する各種因子を実験と理論の両面から解明し体系化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)