2011 Fiscal Year Research-status Report
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23560907
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
二井 晋 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90262865)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 超音波 |
Research Abstract |
本研究は混合粒子懸濁液からの標的粒子の分離手法として、懸濁液への高周波超音波による微細液滴の生成と液中での粒子凝集の2つの作用を組み合わせた手法の開発を目的としている。平成23年度は単成分多分散懸濁液の分離特性について調査を行い、異なる粒径を持つシリカ粒子混合分散液を試料として、1.6 MHz, 2.4 MHzの超音波照射による分離を行った。購入した広帯域パワーアンプを用いて試料に2つの異なる周波数の高周波超音波を照射できる実験装置を作成した。100~1000 nmの間のシリカ単分散粒子試料を複数混合し、水に分散させた懸濁液を試料として用いた。種々の操作条件のもとで試料の超音波霧化を行い、粒子を霧に取り込ませて回収し、回収液に含まれる粒子径を動的光散乱装置により測定して分離特性を評価した。 周波数について1.6 MHzと2.4 MHzを用いた場合での粒子の分離挙動に明確な周波数依存性は見られなかった。投入電力の増大とともに、霧に取り込まれる粒子径が大きくなり分離は低下した。比較的投入電力の低い条件が粒子分離に適することがわかった。2.4 MHzの超音波照射で分離できる粒子径の閾値が240 nmであることを明らかにした。試料溶液への界面活性剤の添加により、分離できる粒子径をより小さく制御することができるとともに、粒子の回収速度を大きくできることを見出した。これらの成果を論文としてK. Suzuki, J. Hisaeda, S. Nii, J. Chem. Eng. Japan, 45(2),114-118(2012)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の主な検討項目である、単成分多分散懸濁液の分離特性に関して、装置作成を完了するとともに分離の評価方法を確立し、分離に及ぼす操作条件の影響について実験的な検討を行った。H23で得られた成果を、予備検討の結果と合わせて論文として発表することができた。操作条件として、超音波の照射条件について500 kHzの周波数での検討が残されているため、目標の達成度を95%と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、シリカ微粒子混合物を試料として、異なる超音波周波数での分離特性を調査し、周波数が分離に及ぼす影響を明らかにする。さらに、異種粒子混合物の分離特性と分離メカニズムの解明の2項目について検討を進める。前者の項目では、試料として金属酸化物、単体金属、粘土などを選択し、同じ粒径もしくは異なる粒径の2成分を混合して調製して分離特性を調べる。さらに、分離向上の可能性を追究するため、H23年度に明らかにした界面活性剤の添加以外に、pHや極性などの溶液環境を変化させて分離に及ぼす影響を調べる。後者の項目では、H23年度に得られた単成分多分散混合物の分離特性に関する知見と、異種粒子混合物の分離特性に基づき分離メカニズムの仮説を立てる。分離に対して、霧化による液滴生成の寄与と、液中での粒子凝集の影響を制御することが課題であり、粒子の形状と大きさ、粒子の荷電や親疎水性などの溶液や固体の表面特性、分散媒物性が分離に与える影響が注目される。これらの条件を精密に制御した分離実験を行い、仮説の妥当性を立証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に使用を予定していた粒子径測定装置が使えなくなり、測定用に計上していた消耗品を使うことができなかった。対応措置として別の機種を用いて測定を行ったため、研究の遂行に支障はなかったが、H24年度には当初予定していた測定装置を用いることから、H24年度ではH23年度から繰り越した金額を合算して使用する予定である。 H24年度の検討では多様な試料を用いた実験的な検討を行うため、消耗品として試薬類、ガラス器具類、超音波振動子などを購入する費用として約100万円を充てる。旅費として、東北大学で行われる学会発表に加えて、東京の企業と九州大学での研究打ち合わせのため、旅費として30万円の支出を見込んでいる。さらに、論文の英文校正と別刷り費用として10万円の支出が見込まれる。
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