2011 Fiscal Year Research-status Report
ファン騒音の高精度数値予測による解明と複数音響モード制御実験
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23560955
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 伸彦 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70166635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪口 雄三 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准助教 (30274509)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 翼列 / 騒音制御 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
研究計画「複数音響モードの能動制御実験の予備実験としての制御の高速・大容量化」について:50W 16ch スピーカアレイの追加,制御用 FPGA ボードの増設,ハブ壁・ケーシング壁への埋込型マイクロフォンの設置,など計測制御ハードウェアの増強・置換をおこなった.またDDS アルゴリズム,Filterd-X LMS アルゴリズムなど制御アルゴリズムの見直しや追加をおこなった.こうしたハードウェア・ソフトウェアの改善により,現在は複数モードをほぼリアルタイムに測定・同定しつつ単一モードを自動制御できるようになった.研究計画「NSCBC による圧力境界条件定式化とコードへの実装による CAA 手法の高精度化」について:スペクトル解像度が高く低散逸である高次精度コンパクト差分とコンパクトフィルタを基本的な解法とて採用し,これに一般座標系 NSCBC (無反射境界条件) を実装したマルチブロック流体計算プログラムを用いて,円柱後流と翼 (rod-airfoil) の干渉騒音のラージエディシミュレーション (LES) をおこなった.この rod-airfoil 問題は,動静翼干渉騒音のベンチマーク問題となっているものである.研究計画「線形非定常音響解析 CFD コードの開発」について: 線形音響計算CFDプログラムのベースとなる線形フラッタ計算CFDプログラムを開発した.研究代表者らが開発したこのプログラムは,JAXA の UPACS (レイノルズ平均ナビエ・ストークス方程式を有限体積法で解くマルチブロック流体計算プログラム) を母体として,これに線形非定常問題を周波数空間で解くルーチンを追加したものである.平成23年度はコード開発をおこなったほか,基本的なベンチマーク問題を解くことで線形非定常計算の検証もおこない,十分な予測性能を確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画「複数音響モードのファン騒音の能動制御実験」について: 平成 24 年度に計画していた「複数音響モードに対応する制御プログラム」を平成 23 年度中にすでに完成させ,予備実験も終えている.また平成 25 年度に計画していた「自動化」も平成 23 年度中に完了している.加えて研究計画には挙げていなかったこと,たとえばダクト壁面にマイクロフォンアレイを新たに設置したことで,従来は後処理で求めていたモード解析を測定・制御中にほぼリアルタイムでおこなうことができるようになったことや,このような新開発のモード解析を利用することで,モード別音圧を目的関数として音響制御できるようになったことなどがある.したがって実験は「当初の計画以上に進行している」.研究計画「ファンダクトの断面積変化と複数段形状の影響解明」に関する数値計算について: 音響計算の土台となる線形非定常フラッタ計算CFDプログラムの開発が終わったところであり,音響問題への拡張については当初の研究計画からすると「やや遅れている」.しかし計算領域を複数のブロックに分割して並列計算可能な,マルチブロック線形非定常フラッタ計算CFDプログラムを完成させたことで,任意の複雑形状を計算できるようになっており,このことは将来の音響計算への発展の基礎として特筆すべきマイルストンと考えている.以上,かなり進んだ実験と少し遅れている計算を全体的にみると「おおむね順調に進展している」と自己評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
「ファンダクトの断面積変化と複数段形状の影響解明」に関する数値計算について: 計画より若干遅れ気味であるので,大学院生1名を新たに研究協力者に加えて研究をすすめる.平成23年度開発の線形フラッタ計算CFDプログラムを音響問題に拡張して線形音響計算CFDプログラムを作成し,ファンダクトに幾何形状変化がある場合のダクト内伝播や,自由放射音響場の数値予測をできるようにする.これまで用いていた理論解析解ベースの予測手法ではダクト軸方向の断面積変化を考慮できていなかったので、面積変化を考慮したことによる予測精度向上を確認する.断面積変化は音の伝播のカットオン・カットオフ (ダクト内を音が伝播できるかできないか) を支配する重要なパラメタであるので,伝播モードの変化を調べることによって断面積変化についての知見を得る計画である.「複数音響モードのファン騒音の能動制御実験」について: これまで制御に用いてきた12ch スピーカアレイと平成 23 年度に新規導入した 16ch スピーカアレイの 2 列のスピーカリングを連動させ複数モードの制御実験をおこなう.まずは (周方向モード,半径方向モード) のうち (0,0) と (1,0) が同時に現れる場合の同時制御を試みる.また従来は周方向二次モード (2,0) の制御が失敗に終わっており,失敗の原因はスピーカアレイによって周方向モードを生成するときの解像度不足,すなわちスピーカの個数不足と考察していた.こうした経緯で新規導入したスピーカアレイは 12ch ではなく 16ch としたので,16ch スピーカアレイを用いて (2,0) モードを制御する実験もおこなう.平成25年度以降には半径方向の高次モードも制御対象とする計画である.その準備として平成24年度は,既存の設備が半径方向高次モードを生成できるように装置を改造する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験上の成果を 9 月の国際会議 ISUAAAT (International Symposium on Unsteady Aerodynamics, Aeroacoustics and Aeroelasticity of Turbomachines)(東京) で発表予定なのでその旅費ならびに参加登録費として 20 万円程度を予定している.またスーパーコンピュータの使用料として平成 24 年度も平成23 年度と同程度の 50 万円を予定している (九州大学情報基盤研究開発センターでは今年度7月に新機種が導入される予定であるが,新しい利用料金はまだ決まっていない).平成24年度は,実験において,複数の半径方向モードを生成できるようにダクトを改造する予定であり,残りの 20 万円はこのための改造費にあてる予定である.
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Research Products
(6 results)