2012 Fiscal Year Research-status Report
ファン騒音の高精度数値予測による解明と複数音響モード制御実験
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23560955
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 伸彦 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70166635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪口 雄三 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (30274509)
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Keywords | ファン騒音 / 能動制御 / 線形非定常 / 翼列 |
Research Abstract |
研究計画【複数音響モードのファン騒音の能動制御実験】について: 本研究の最終目標であった,複数モードの同時自動制御に成功し,従来よりも大幅な騒音低減(翼通過周波数に置いて最大20dB)を達成した.従来よりも周方向空間解像度の高い16chスピーカアレイの導入,周波数空間での Filtered-X LMS アルゴリズムの導入,ハブとケーシングに埋め込んだマイクロフォンによるリアルタイムモード分解,などを効果的に連携させた結果である.またダクトの外で放射音場の測定をおこない,ダクト内だけでなく放射場でもファン騒音を大きく低減できていることを確認した.さらに,騒音スペクトルに現れるファン騒音以外の騒音源・吸音源を特定するため,ホーンの吸音効果の理論予測と測定,ならびに装置の振動測定をおこなった.前者は,制御音源として用いているホーン型スピーカのホーン部分が共鳴吸音器として働いているのではないかとの推察にもとづくもので,実際に理論的にも実験的にも 900Hz 近傍での大きな吸音効果を確認できた.後者は装置の振動がファン騒音以外の騒音源になっているのではないかとの推察にもとづくもので,加速度センサを用いた測定の結果,200 Hz 前後の騒音スペクトルピークは装置架台の振動によるものであることが分かった.制御実験の適用範囲を広げるため,ハブを取ることにより半径方向モードを意図的に発生させようと考え,先行してハブが無い場合のモード解析方法について理論研究をおこなった.しかしハブがない状態でケーシングに埋め込んだマイクロフォンのみでモード分解をおこなうためには,非現実的な数のマイクロフォンを必要とすることが分かった. 研究計画【計算モデルの高精度化によるファンダクト断面積変化と複数段形状の影響解明】について:線形非定常コードがロバスト性にかけることなどから大きな進展が得られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的「①近距離流れ場計算での下流境界条件改善による高精度数値予測手法の確立」について:様々な計算対象に対してバッファ領域や無反射境界条件についてのノウハウを蓄積し続け,ジェット騒音など自由空間を対象とする計算については予測精度向上の効果を得ているが,本研究の対象であるダクト内の内部流れについては有意な結果を得ておらず,「やや遅れている」状況である. 研究目的「②音響場を空間的に解く線形非定常音響計算コードの開発・手法の確立」「③ファンダクト断面形状変化のファン騒音への効果を数値的に解明」「④複数段ファンがファン騒音に及ぼす効果を数値的に解明」について:研究代表者らが固有に開発したフラッタ計算コードをベースに音響問題へ拡張適用する予定(②)であったが,コードのロバスト性に問題が残っており求解途中に破綻するケースのあること,また線形問題の定式化において境界条件の物理的な非整合性を解決できていないこと等から,上記目的③④への展開を見合わせており,「遅れている」状況である. 研究目的「⑤複数モードに対するファン騒音能動制御手法についての実験により制御法の探査・解明と最適制御法の確立」について:昨年度につづき「当初の計画以上に進展している」.すでに当初の最終目的は達成し,先に「研究実績の概要」の項で述べたように,20dBという大きな騒音低減を実現できている.現在は本技術の適用範囲を広げて実証するために,新たに半径方向モードの制御実験を行うための理論的検証と装置改造に取りかかりつつあるところである.
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Strategy for Future Research Activity |
先に「現在までの達成度」の項で述べたように,音響予測のための線形アプローチには技術的な問題が残っており,これらの問題を解決できる見通しが立っていない.そこで平成25年度は線形アプローチだけでなく非線形アプローチも採用し,2つのアプローチを並行する.非線形アプローチとは問題を線形化することなく非線形のまま解くことを意味し,一般には線形アプローチに比べて多大な計算負荷となり現実的ではない.しかし平成24年度半ばに九州大学情報基盤研究開発センターのスパコンが更新され,高速で豊富な計算資源を安価に利用できるようになったため,非線形アプローチが現実的なものとなってきたと考えている.具体的にはRANSベースのCFDコードを用いてダクト断面積を変化させた場合の単段翼列計算をおこない,断面積変化がカットオン(カットオフ)モードに与える影響を考察する.また多段翼列を通過する流れ場を計算し,そこからファンダクト内に伝播する音を直接計算して,翼列の騒音遮蔽効果を考察する. 実験についてはすでに当初の研究目標を達成しているが,発展形として平成25年度には次の2つのことをおこなう.まず16chスピーカアレイを1列から2列に増設し,2列の制御音源を同時に使うことで,これまで以上の騒音低減を狙う.次に制御実験の適用範囲を広げるため,半径方向モードの制御実験ができる環境を整える.半径方向モードを生成させるためにハブを撤去することになるが,先に「研究実績の概要」の項で述べたように,モード分解用のマイクをダクト外周面のみに設置すると100個以上のマイクロフォンが必要になってしまい,現実的には測定が不可能になるため,ダクトを回転させるか,またはインレットからダクト内部にマイクロフォンアレイを挿入するか,等の方策を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算上の成果を9月の国際会議 ISABE (International Conference on Airbreathing Engines) (釜山,韓国) で発表予定なのでその旅費ならびに参加登録費として20万円程度を支出予定である.またスーパーコンピュータの使用料として50万円弱を支出する.残りの40万円程度を実験装置の改造などにあてる.前項「今後の研究の推進方策」で述べた16chスピーカアレイの増設についてはすでに平成24年度で装置製作を完了しており,平成25年度はソフトウェアアルゴリズム的な努力のみが必要で,費用はかからない.半径方向モードを生成するための装置改造,ならびに半径方向モードを測定するための装置改造については,ダクト回転装置の新規設計製作,または,挿入型マイクロフォンアレイの新規設計製作などに40万円の予算を使い切ることになる予定である.
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Research Products
(1 results)