2012 Fiscal Year Research-status Report
宇宙機の姿勢制御性能に影響を与える衛星内部状態量の高精度推定と軌道上推定の研究
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23560965
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
齋藤 宏文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (80150051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 真一郎 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (10342619)
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Keywords | 人工衛星 / 姿勢決定 / カルマンフィルタ / 地磁気センサ / バイアス誤差 |
Research Abstract |
平成23年度には、小型でかつ安価であることから、小型衛星の姿勢決定にしばしば用いられる地磁気センサについて、そのバイアス誤差を衛星姿勢と同時に推定する手法について検討を行った。そこでは、バイアス誤差は時間的にほぼ不変であると仮定して、その値を推定するという問題設定であった。 平成24年度には、引き続き、宇宙機、特に小型衛星の姿勢決定に係わる衛星内部状態量の推定に関する研究を行った。平成23年度より現実的な仮定として、バイアス誤差は基本的には時不変だが、時折急激な変動が生じる、という仮定を設定した。このようなバイアス誤差の急激な変動は、例えば衛星搭載姿勢センサの電源オン・オフ状態の変化により、実際の衛星上で現実に生じている問題である。本研究グループが開発して2005年に打ち上げられた小型衛星れいめいにおいても、姿勢決定センサとして用いた光ファーバージャイロは、温度その他の条件を一定にしても、電源のオンオフによって、レートバイアス値が異なる現象が見出されている。この現象は、day-to-day bias として知られている。 平成24年度に新たに提案した手法は、平成23年度までに提案していた推定フィルタに適応アルゴリズムである、Unscented Kalman filterと呼ばれるカルマンフィルターの拡張である手法を適用して,地磁気センサの静的なバイアス誤差を,同時に推定することで高精度に姿勢決定を行う手法を新たに提案した.バイアス誤差変動の急峻さを検出して推定フィルタのパラメータを適切に調整する手法である。その手法を用いると、提案する手法によって、バイアス誤差が時折大きく変動する場合でも、精度の良い推定を継続できることが確認できた。2件の国際会議での発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
宇宙機の姿勢センサの内部状態の推定と並行して姿勢を決定していくフィルタリングについては、既に平成23年度に、地磁気センサの静的なバイアス誤差を姿勢と同時に推定する手法の提案に至っている。 平成24年度はさらにこの検討を進め、宇宙機の姿勢センサの内部状態が電源のオンオフ等で急激に変化する現象を対象にして、カルマンフィルタのパラメータを適応的に最適化する研究にまで進み、これを応用して急激に変動するバイアス誤差をも推定できる手法の提案に至った。これは、実用の姿勢センサを使用しているとよく経験する問題であり、これに対処できる姿勢決定アルゴリズムは実用上も意義が深いと考えている。よって、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度が研究の最終年度であることを考慮して、以下のような研究方策を予定する。 宇宙機の姿勢決定に関して、カルマンフィルタの適応化についてさらに検討を進める。 従来のカルマンフィルタでは、事前にフィルタに含まれるパラメータ調整が必要であり、フィルタの性能もこの調整に依存するという問題があった。このようなパラメータの調整を不要にできるようなロバストで実用性の高い姿勢決定則の検討を行う。加えて、姿勢制御則との連携など、応用的な課題について検討を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の結果得られた成果を広く発表するための旅費として主に使用する予定である。 また、研究の伸展に応じて要すれば、計算機シミュレーションを行うための計算機等購入の可能性も検討している。
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