2011 Fiscal Year Research-status Report
リチウムイオン二次電池における酸化反応に伴うリチウム同位体効果
Project/Area Number |
23561015
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大井 隆夫 上智大学, 理工学部, 教授 (90168849)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | リチウム同位体効果 / リチウムイオン二次電池 / コバルト酸リチウム / 量子化学計算 / リチウム同位体分離 |
Research Abstract |
リチウムイオン二次電池の充放電を利用するリチウム同位体分離システムの構築に向け,電極反応におけるリチウム同位体効果についての基礎研究を行っている。まず,本申請研究に先行する研究結果の確認を行った。コバルト酸リチウム電極(カソード)からリチウムイオンを含む電解液(エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶液に過塩素酸リチウム(LiClO4)を溶解させたもの)にリチウムを酸化させながら放出させる実験を行ったところ,重い同位体が選択的に電解液に放出されることを確認した。その際の,コバルト酸電極のリチウム同位体比変化を実測したところ,同位体変動係数として1.018-1.033が得られ,先行研究の結果と同程度の同位体効果が確認された。ついで,電解液に含まれる塩を過塩素酸ナトリウム(NaClO4)に変えて,同様の実験を行った。なお,NaClO4/EC-MEC電解液の調整は,独自に試みたが,水分を限度以下に抑えることが難しく,結局,民間の化学会社に調整を依頼した。本系でのリチウム同位体効果については,LiClO4の場合とは異なり,ほぼ同位体効果が存在しないという結果になった。これは全く予想しないことであった。電解液中にリチウムイオンが存在するか否かにより,コバルト酸リチウムと電解液の間で種類の異なる同位体効果が起こっていることが示唆される。 理論面からの研究として,カソード/電解液における同位体効果の根本原因を解明すべく,主な反応に関与する電子状態計算を行っているが,こちらの研究は満足いく程度に進展しているとは言い難い。系にコバルトが含まれるため,計算に予想外の時間がかかることが最大の問題のように思われる。計算レベルを多少犠牲にして,まず全体像を把握することを考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で観測されたリチウム同位体効果をどう説明するかという点に関してはともかく,コバルト酸リチウム/電解液系においてリチウム同位体効果を実測するという当初の最大の目標はほぼ達成することができた。また,平成24年度に向けての準備もある程度整えることができた。コバルト酸リチウム電極に変わるニッケル酸リチウム電極やマンガン酸リチウム電極に関しては,電極そのものを外部から入手することは非常に困難であることがわかった。しかし,マンガン酸リチウムに関しては,試薬としてのマンガン酸リチウムは入手できたので,自身で電極化したところ,十分使用可能であることがわかった。また,LiClO4/EC-MECに変わる電解液として,イオン液体を電解質溶媒とする系を考えていたが,イオン液体電解液/グラファイト(アノード)側のリチウムイオンの還元反応に対しての結果ではあるが,これも電解液として使用可能であることがわかった。カソード側の反応にも十分対応できるものと期待している。 観測された同位体効果を説明するための量子化学計算に関しては,当初の期待した成果が出ていない。また,NaClO4/EC-MEC系で予想外の結果が出たため,それをどう説明するかについても,検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には,研究計画調書記載の計画に沿って,研究を進める。計画調書からの大きな変更は,今のところ想定していない。カソード材料に関しては,コバルト酸リチウム以外の材料が電極として完成したものが入手困難であることがわかったので,材料そのものの合成も含め,自前で調整する必要がある。 一部,研究方針の変更として,本研究で最も重要なリチウム同位体比の精密測定に関し,従来の熱イオン化方式に加え,ICPをイオン源とする二重収束型の質量分析計の使用を検討する。精密測定の条件を決定し,将来的には,リチウム同位体比測定を,全面的にICP質量分析装置に切り替えることを計画している。 研究費の大部分は,消耗品費である。当初予定していた設備備品の恒温水槽は交付が認められた予算では,購入が困難なため,断念することとした。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1,100,000円の経費が認められている。その使用内訳は以下の通りである。機器備品費:0円。消耗品費:900,000円。国内旅費:100,000円。謝金:100,000円。消耗品費が予想以上にかかることがわかったため,他の経費をできるだけ切り詰め,消耗品費にできるだけ多くの予算を充てることとした。特に,ICP用のArガス代の負担が大きい。
|
Research Products
(3 results)