2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物における対被食防衛の集団内多様性の進化機構に関する理論的研究
Project/Area Number |
23570023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山内 淳 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40270904)
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Keywords | 進化 / 植物防衛 / 協力ゲーム / 多型 |
Research Abstract |
植物の対被食者防衛に見られる遺伝的多型現象を出発点とし、研究対象を生物の相互作用の下で見られる多型現象全般に広げながら、それらの進化ダイナミクスを協力ゲームの観点から理論的に研究した。協力ゲームにおいては、個体が協力のために提供した投資に基づいて利益が決まる。本研究の結果、投資に対する利益やコストの関数の形によって、戦略の多型の発生条件が大きく変わることが明らかになった。特に、「投資の総和が利益を決める場合」と「個々の投資が結果をもたらし、その総和が利益となる場合」を比較すると、前者では進化的分岐に伴う多型が生じうるのに対して、後者ではそれが決して起きないことなどが示された。これらの取り組みの成果は、いくつもの学会で発表される一方で論文としてみ取りまとめられつつあり、近日中に学術誌に投稿される予定である。 また、上記の研究の到達点をさらに発展させる研究を、イギリスのブリストル大学のグループと進めつつある。以前の取り組みでは協力への投資量そのものを進化形質として扱っていた。それに対し進行中の共同研究では、自分の投資量は相手が示した投資量を参照した上での「折衝」によって決定されるとし、相手の投資から自分の投資を算出する関数が進化すると考えている。まだ解析は予備的なものであるが、そのようなシステムでは投資を進化形質として扱う場合とは異なる進化が引き起こされることが明らかになりつつある。 また、当研究課題の周辺的な研究として、生物間の相互作用の下での進化動態や個体数動態に関する理論的な研究も展開してきた。樹木が周期的に同調して種子を生産する成り年の研究(Theoretical Ecology, 2013)、捕食-被食関係の進化と個体群動態による食物網構造の創出・維持過程の研究(Journal of Theoretical Biology, 2013)、分割可能な被食者をめぐる捕食-被食の個体群動態の研究(Oikos, 2014)などの成果を挙げてきた。
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Research Products
(8 results)