2013 Fiscal Year Annual Research Report
協同的一妻多夫魚や血縁型共同繁殖魚の高度な社会の維持機構とその行動基盤の解明
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23570033
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
幸田 正典 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70192052)
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Keywords | 社会認知能力 / 親敵効果 / 相手個体の認識操作 / 意図的騙し / 記憶時間 / 顔認識 / 推移的推察 |
Research Abstract |
共同的一妻多夫魚であるJ. transcriptusを用いた実験からトリオ(2♂との)産卵の場合多く見られた擬似産卵の効果が確認された。すなわち、擬似産卵でも♂は産卵時と差異のない量の精子を放出していた。このことは、♂が産卵と擬似産卵の区別がつかないことを示しており、放精行動の多さと保護行動が強く相関することは、♂が放精行動に基づいて父性認識をしていることを示している。また、雌はこのため擬似産卵を多用することで、♂の父性認識を操作していることが考えられる。 さらに興味深いことに、産卵時に小型のβ♂と多く産卵と疑似産卵ができた雌は、産卵直後βを排除しないが、そうでないβ♂は激しく排除した。このことは、雌は♂がどのくらい放精したのかを把握していることを示している。区別をすることはできないが、雌は産卵後♂がどのように父性を認識しているのかを「理解」している可能性がある。これは、単なる刺激にたいする反応ではなく、様々な産卵のイベント全体を総合的に把握し、多くの情報を自発的に取り込んで総合判断していると考えられ、操作や騙しの問題を考える上で興味深い材料であることが明らかになってきた。 また、共同繁殖魚プルチャーの親敵効果が「tit for tat」仮説に基づくのかどうかその可能性を探った。隣人が本来の場所から出た場合、縄張り個体は激しく攻撃すること、しかしその際でも隣人と認識した上で攻撃しているとみなすことなどから、相手の「裏切り」に対し罰を与えていると捉えることができ、本種の親敵効果ではtit for tatが行動基盤として作用している可能性が示された。このような行動基盤の解明は魚類で始めてである。また、共同的一妻多夫魚のオルナータスで、社会的記憶時間についても実証研究を行い、社会的認識はほぼ一週間で消失することが示された。
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