2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23570042
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 亮一 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20311516)
|
Keywords | クロロフィル |
Research Abstract |
クロロフィル分解は植物の老化やストレス応答に必須な、重要なプロセスである。本研究では遺伝学的手法や分子生物学的手法を用いて、複数のクロロフィル分解経路が植物に存在する可能性を検討し、クロロフィル分解経路の全体像を明らかにすることを目的としている。本研究では、クロロフィル分解に関わると考えられる酵素のうち、特にchlorophyllase (CLH)に焦点をあてた。なぜなら、この酵素はin vitroで強いクロロフィル分解活性が見られるにも関わらず、in vivoでのクロロフィル分解への関与について、明快な証拠が提示されていないからである。本研究では、シロイヌナズナを研究材料として用いている。シロイヌナズナにはCLH1とCLH2の2種類のアイソフォームが存在する。 昨年度はクロロフィラーゼが小胞体や液胞の膜に存在し、植物細胞が破砕されたときにのみ、クロロフィルを分解することを示した。今年度は、これらの現象から、植物細胞が、昆虫等のよって破壊されたときにクロロフィラーゼが機能し、クロロフィラーゼの活性が何らかの形で、植物の防御応答に関わっているのではないかと仮説をたてて実験を進めた。その結果、クロロフィラーゼ活性が高いシロイヌナズナの葉は昆虫の幼虫に対して、毒性を示すことが明らかとなった。また、クロロフィラーゼの反応産物である、クロロフィリドを幼虫に与えたところ、やはり毒性を示した。これらの結果から、クロロフィラーゼは、昆虫等の食害に応答して、クロロフィル分解を促進し、防御に関与するということが明らかとなった。本研究は、クロロフィル分解と防御応答を結びつける画期的な研究であると考えている。
|