2011 Fiscal Year Research-status Report
ナメクジウオの性ステロイドの構造と機能に関する研究
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23570070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
窪川 かおる 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (30240740)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナメクジウオ / 神経内分泌 / ステロイド / 進化 / ステロイド受容体 / 神経索 / ホルモン / 脊索動物 |
Research Abstract |
脊椎動物は,ホヤなどの尾索動物,ナメクジウオ類の頭索動物とともに脊索動物門を構成し,脊索を持つ共通祖先からそれぞれ進化した.このうちホヤは遺伝子を失う方向に進化したため,脊椎動物特有の遺伝子の多くは持っていない.一方,ナメクジウオは,脊索動物門でもっとも分岐が早かったにもかかわらず,脊椎動物との共通祖先から多くの共通遺伝子を受け継いでいる.そこで,本研究では,ナメクジウオの新しい性ステロイドの同定,代謝経路の完成,受容体分子の局在とリガンド結合様式、成熟・性分化への性ステロイドの機能の解明を行ない,性ステロイドを通して,脊椎動物の内分泌機構の起源を考えることを目的とする. 平成23年度は,5α還元ステロイドに着目して実験を進めた.まず,すでに得られている性ステロイド代謝実験のデータを整理,解析し,5α還元ステロイド代謝経路が実際に存在し,しかも主要なステロイド代謝物であるとの確証を得た.次に非繁殖期から繁殖期までの酵素遺伝子の発現変動を調べるため,適当な期間毎に成体のサンプリングを行った.産卵は順調で,当研究室では初めて変態まで飼育することができ,変態前後のサンプリングも行うことができた.これらのサンプルを用いた性ステロイドと代謝酵素の変動実験は,平成24年度に持ち越された.最後に5α還元ステロイドの遺伝子発現部位を調べ,卵巣だけでなく,神経索にも発現する可能性が得られた.そこで,成体の連続切片を作成し,神経細胞の分布を既報に照らし合わせて検証した.神経細胞の機能推定は来年度に行う予定にしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的にあげた他の項目,代謝経路の同定,性ステロイド投与実験,未分化の生殖腺から配偶子放出後の生殖腺まで、さまざまな生殖現象のイベントの観察は,順調に実施できた.また,遺伝子発現解析の実験法の確立は当初の目的よりも多様な方法で実験が可能となった.しかし,性ステロイド代謝酵素の遺伝子発現を調べるため,生殖腺の発達段階に沿ったサンプリングをする計画であったが,回数の確保が難しく,その結果,遺伝子変動を解析するまでには至らず,次年度に持ち越された.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,まず,リアルタイムPCRによる性ステロイド代謝酵素の遺伝子変動を繁殖期の前後,産卵前後で明らかにする.サンプルは生殖腺の発達段階に応じて採取した個体を用いるとともに,昨年サンプリングした変態前後の幼生で調べる.これらの遺伝子変動とin situ hybridization法による局在の同定から,神経索と生殖腺における性ステロイド代謝酵素と性ステロイドそのものの機能の推定を行う.他に,LC/MS/MSを利用し,性ステロイドのプロファイルから未知の性ステロイドの探索,ステロイド代謝経路の最終決定を行う.新たに性ステロイド受容体に関する実験を始める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子発現の開発はほぼルーチンに出来るようになったため,実験の補助のための謝金を使用する.飼育や産卵も東京大学三崎臨海実験所で問題なく出来るようになったため,これらの補助のための謝金も必要である.消耗品は従来と同様に必要な実験試薬・器具に使用する.旅費はナメクジウオの採集と学会発表が主であるが,ナメクジウオを利用する研究者がまだ少数であることから,研究の発展のために共同研究を広げていくための旅費に使用する計画である.高額備品を購入する予定はない.
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