2013 Fiscal Year Research-status Report
ナメクジウオの性ステロイドの構造と機能に関する研究
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23570070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
窪川 かおる 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任教授 (30240740)
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Keywords | 性ステロイド / ナメクジウオ / 進化 / 糖タンパク質ホルモン / 神経内分泌 |
Research Abstract |
脊椎動物は、ホヤなどの尾索動物とナメクジウオ類の頭索動物の2グループとともに脊椎動物門を構成し、脊索を持つ共通祖先からそれぞれの系統に進化した。ナメクジウオは、脊索動物門の中で、最も分岐が早かったが、ゲノムの比較では、脊椎動物との共通遺伝子が多く見つかっている。そのうち、性ステロイド代謝酵素は、脊椎動物に特有と考えられていた酵素であり、ナメクジウオでの存在意義は大きい。 本研究は平成24年度までに、ナメクジウオの性ステロイド代謝経路が5α還元性ステロイド系であることを明らかにし、性ステロイド代謝酵素の局在を遺伝子発現から調べるため、その方法を確立するところまで進めた。平成25年度は、5α還元性ステロイド代謝酵素の遺伝子発現細胞の存在を確定し、非繁殖期と繁殖期での性ステロイド産生遺伝子発現を比較した。その結果、ナメクジウオの神経索では、5α還元ステロイド酵素の遺伝子発現細胞がヘッセ器官の周囲にある小型神経細胞であることがわかった。ヘッセ器官は脳胞より後方に出現する光受容器官である。脳胞には、アロマテース(CYP19)およびエストロゲン受容体の遺伝子発現細胞が集中していた。また、ハチェック小孔にも性ステロイド産生細胞が初めて確認され、ハチェック小孔の方向に伸長する神経索の先端にもCYP19の遺伝子発現細胞が存在した。一方、生殖腺では性ステロイド産生細胞が体細胞ではなく生殖細胞であることがわかった。実験した性ステロイド代謝酵素のすべてで、繁殖期に産生細胞の数の増加がみられた。 これらの結果から、性ステロイドは生殖を制御し、その産生は神経索で分業されハチェック小孔も関与することが示唆された。生殖腺では性ステロイド産生が生殖細胞であり、脊椎動物との違いが明らかとなった。本研究から、性ステロイド産生が神経細胞および生殖細胞から分泌細胞へと特化したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性ステロイド代謝を主要なものに絞ることができ、遺伝子による性ステロイド産生細胞の同定、繁殖への関与まで明らかにしたため、研究目的のもとでおおむね順調に進んでいると判断した。平成25年度は抗体作成に予想以上に時間がかかり、年度末までずれ込んだため、タンパク質レベルでの確定は平成26年度に残ってしまったが、平成25年度にわかった新しい性ステロイドの同定も合せて進めることができる。免疫染色法の準備は出来ている。繁殖期は1年に1回なので有効に計画を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、繰り越しによる実施になる。新規の性ステロイドの存在の可能性が示唆される結果が得られたこと、1年に1回の繁殖期でのサンプリングによる性ステロイド産生細胞の局在の検証が必要であること、また、抗体作成による性ステロイド代謝系に関わる酵素や受容体の存在と局在を明らかにすることを、平成26年度には実施する。性ステロイド代謝酵素の遺伝子発現細胞の同定と局在は、in situ ハイブリダイゼーション法で進めてきているので、抗体による酵素局在の検証もスムーズに実施できると考えている。抗体作成に時間を要したが、特異性チェック等の準備後に、免疫染色法による実験を開始する。さらに、性ステロイド以外のホルモンとその受容体、すなわち神経葉ホルモン、糖タンパク質ホルモン、甲状腺ホルモンなどの脊椎動物と共通する内分泌物質に関しても、神経索と生殖腺での遺伝子発現解析を進めており、これらと性ステロイドとの関係まで考察できるようにしたいと考えている。最終年度になるため、平成25年度に考察されたナメクジウオでの神経内分泌系の分業と脊椎動物での内分泌器官との関係、ナメクジウオでの生殖細胞での内分泌機能と脊椎動物での体細胞の内分泌機能との関係をさらに進め、脊椎動物への内分泌系の進化まで最終的に考察したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の9月に学会大会で成果を発表したが、その際にナメクジウオに新規の性ステロイドが存在する可能性が示唆され、その証明のための実験を進めることにした。また、抗体作成に予想以上の時間がかかった。そのために夏の繁殖期における機能解析と産生細胞の局在の検証を行う必要があり、計画を変更して、次年度の繁殖期での実験を遂行し、生殖機能の解析および非繁殖期との比較解析を行うこととしたため未使用額が生じた。 抗体の特異性チェックなどの準備を完了し夏の繁殖期にはそれらの抗体を使った実験を行う。非繁殖期のサンプルは今年度中に用意できる。未使用額はこれらの実験の経費および複数の学会大会でのさらなる成果の発表に充てる。
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[Journal Article] Shallow submarine hydrothermal activity with significant contribution of magmatic water producing talc chimneys in the Wakamiko Crater of Kagoshima Bay, southern Kyushu, Japan2013
Author(s)
Yamanaka, T., Maeto, K., Akashi, H. Ishibashi, J--I, Miyoshi, Y, Okamura, K., Noguchi, T., Kuwahara, Y., Toki, T., Tsunogai, U., Ura, T., Nakatani, T., Maki, T., Kubokawa, K., Chiba, H.
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Journal Title
Journal of Volcanology and Geothermal research
Volume: 258
Pages: 72-84
DOI
Peer Reviewed
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